ミィナ

「ん?」


「ね、年齢詐欺じゃないかぁぁ!?」


「あ゛?」


"バシン"


 思いっきり、頭を何かで叩かれた。


「ったぁ!?」


「次年齢詐欺とか言ったら、頭かち割るぞ??」


 手が拳の形になっているが、ヴァイオレットは私に触れていない。


 ・・・魔法か?でも、原理の分からないまま突っ込んだら・・・。


 (脳内シミュレーション中)ーーー、うん、死ぬな。


「ゴホン」


 咳払いをしてから、質問に戻した。


「で、さっきの質問に答えて」


「・・・1.気まぐれ。2.知らん。3.多分。で、4.は?」


「いやいや、ちょいちょい」


 抽象的過ぎだろ、もっと詳しく言えないのか???


「1.は、気まぐれなわけないだろ」


「これ以上に答える気はないぞぉ~」


 ホントに、2発殴るか・・・?(←なんか増えてないか?byヴァイオレット)


「・・・4.」


「ああ、これで最後だったか」


 私は、ヴァイオレットから目を離さずに淡々と言った。


私はどうなる・・・・・・?」


「・・・ん?」


 ヴァイオレットは、ニッコリと微笑んだまま首を傾げた。


「私・・・、というよりこの体の元持ち主は奴隷だろう?」


 "私"の世界でも、奴隷は存在していた。その者達は、全員金属製の首輪をつけられていた。


 私についているこの首輪も、私が奴隷である事を示しているんだろう。


「・・・そうだな」


 ヴァイオレットは、頬杖に使っていた手を私の首元へ伸ばした。


アンロック解除魔法


"バリン"


 金属の首輪はヴァイオレットの一言で破裂し、粉々になった。


「・・・は」


「4.」


 ヴァイオレットは、私の顎をガシッと掴んだ。


「お前は、私の同僚・・にする」


「・・・っ同僚??」


「ああ、そうだ」


 ヴァイオレットは椅子の背もたれに体重を預け、腕を組んだ。


「お前の魔力もそうだが、才能もある。まさに、天才。そんな人材を、私が逃すはずないだろう?」


「・・・いや、お前の事はほぼ知らんが。つまり、私を助けたのは才能があったからか?」


「まぁ、それもあるな」


 ヴァイオレットは、イカれている。そう確信した。


 決して、悪い意味で言ってるんじゃない。才能がおかしいんだ。


 生身の人間が、初対面の私を見て能力を見分けられる?あり得るのか??


「では、これからよろしくな。・・・ええと?」


「高性能戦闘用人造人間第37号」


「何だ、それは?」


「"私"の名だ」


 前世の名前だが、これ以外に私の名前はない。さて、どう呼ばれるか。


 37号とか、ロボットとか・・・。怪物、化物、爆弾、死体・・・。


「ミィナ」


「・・・え」


「37で、ミィナだ。悪くないだろう?」


 呆気に取られている私を他所に、ヴァイオレットはニンマリと満足気に笑っている。


「ミィナ・・・」


「そうだ。これから、お前はミィナ。よろしくな」


 ヴァイオレットが、私に片手を差し出してきた。


(・・・この手を、取るべきだろうか)


 私は、チラッとヴァイオレットを見た。


 根は悪そうでもないし、部屋の構造的にも人間との関係が多いわけでもなさそうだ。


 それに、何より私にはこの世界の知識が必要・・・。


「はぁ・・・」


 腹を括るしかなさそうだ。


「・・・ああ、よろしく。ヴァイオレット」


 私は、ヴァイオレットの手を握った。




 これが、ヴァイオレットとミィナの師弟関係(?)の始まりだ。

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