質問者交代

「人殺しか」


「ああ、そうだ」


 ヴァイオレットは、しばらく私を見つめた後口を開いた。


「・・・驚いた」


「何がだ?」


「いや、動揺すらもしないんだな」


「さっき、お前が私に殺した人間の数を聞いた時点で、なんとなく勘づいてはいた」


 サラッと言うと、ヴァイオレットは不思議そうに尋ねた。


「・・・お前、いくつで死んだ?」


「創られてから壊れるまでの年数は、約25年だ」


「そこは、単純に25で良いんじゃないか?」


「あのなぁ・・・、私が人間だったと思うか?」


「は・・・?」


 ヴァイオレットは、驚愕して声も出ていない。


 淡々と話してはいるが、私自身今とても興奮している。


 何せ、念願の"人間"になれたのだから。


「まぁ、その質問はどーでもいい。次は、私の質問だ」


「・・・そうだな」


 ヴァイオレットは、私が『人間ではない』という話を追究はしてこないようだ。


 内心、ホッとした。


「最初に、ここはどこだ?」


「私の家」


 ・・・いや、そういう事ではないんだが。


「私は、お前の質問に出来る限り答える。それ以上は、追究するな」


 『さっき追究しなかったんだから』と言わんばかりの言い草に、私は思わず舌打ちをした。


 ヴァイオレットは、『おお、怖い怖い』と言うばかりで何と言うか楽しんでいる。


 ・・・何か、頭に来るな。


「ほら、次は?」


「・・・お前は、誰だ?」


「ヴァイオレット。これは、さっきも言ったな」


「あー、もういい」


 役職とか、言う事はいくらでもあるだろうに。


 少しイラつきながらも、質問をする。


「家族は?」


「いない」


「歳は?」


「ノーコメント」


「役職は?」


「魔女」


「そうか。・・・????????」


 え、今何と言った?


 私は、あまりの非科学的な言葉に呆気に取られた。


 いや、さっきから魔力やら何やら言っていたから、まぁ、当然か。


 うん・・・、ん?魔女??


 魔力やら魔女やらというファンタジーが過ぎる非科学的な現実に、(元)ロボットの脳内処理が色々と追いつかない。


「まっ、この世界の知識は後で教えてやる。他に質問は?」


「・・・では、あと4つだけ」


「おお、多いな」


「増やすか?」


「聞いてたか??」


 最後の言葉は、聞かなかった事にした。


 思いっきり息を吸い、言葉と一緒に一気に吐す。


「1.なぜ私を救った?

 2.この体の持ち主を知っているか?

 3.私に魔力があるのは分かったが、魔法は使えるのか?

 4.」


「おおーい、多い多い。1つずつにしてくれ。と言うか、よく息続いたな」


「速く答えろ」


「年上に向かって、その口はないだろう?」


「お前、私より年上なのか?」


 私の魂の年齢が、肉体年齢とは違うと初対面ですぐに見抜いたんだ。


 魔女などは、魂の年齢を重要視すると考えてよいはず。


 つまり、魂のトータル年齢50の私より年上・・・??


(有り得んだろう・・・)


 私は、目の前の魔女ヴァイオレットを観察した。


 赤い長髪の艶やアルトボイスの声質もそうだが、とても50を超えた人間とは思えない。


「そうだな、魂の年齢でいくと・・・。あー、大体400くらいか?」


「ブフッ!?」


 思わず、(まだ飲んでいた)ポタージュを喉に詰まらせてしまった。


 何ともないように指を折って年数を数えているが、400!?


 さすがに、ないだろうっ!!??


「か、完全に・・・」

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