異常な魂

 いや、間違ってはいないのだ。決して、この答え方が不正解であるわけではない。


 だが、ある意味全く会話が成り立たなくなるのもまた事実。


 ここは、正直に真実のみを伝えよう。


「前提として話をすると、私はこの世の者ではない」


「ああ、そうだな」


「そうだ。つま・・・、え?」


 私は、今度はしっかりと目を見張った。


 今・・・、『ああ、そうだな』って言ったか?


(それは、どういう・・・)


「驚いているようだな」


「あ、ああ・・・」


「理由は、2つだ」


 ヴァイオレットは、人差し指と中指を立てた。


「1つ目は、お前の行動」


「こ・・・っ?」


「そうだ。私を見て、何とも思っていない」


「・・・手練れだということは、しっかり分かっている」


 ヴァイオレットは、強い。


 世界が変わっても、勘は鈍っていない。


 ヴァイオレットは、強敵だ。私よりも、遥かに強い。


 国の4つや5つ、瞬きする間に破壊出来るだろう。


「ほぉ・・・、なるほどな」


 ヴァイオレットは、目を細めた。


「お前、何人だ?」


「は?」


「何人殺した??」


「っ・・・!!!」


 そこまで分かるのか・・・。化物だな。会って間もないはずなのに。


「・・・さぁな。とりあえず、数えられるほどではないと言っておこう」


「なるほど。"同類"だな」


「何・・・?」


 私は、眉を顰めた。


 なーにが、同類だ。


 私とこいつヴァイオレットは、欠片も似ていない。


 理由は、至って単純。血の匂いがしない・・・・・・・・。人殺し独特の、あの腐った匂いが。


「あと、2つ目。お前の魔力」


「ま・・・?」


「感じてるはずだ」


 感じる・・・?


 神経を研ぎ澄ませ、気配を探る感覚で"魔力"を手繰ってみる。


"ビリッ"


「なっ!?」


「ほー、お前天才だな」


「は?」


「本当に、感じてたのか」


「はぁ???」


 さっき、自分で自信満々に『感じてるはずだ』なんて言ってたじゃないか?


 あれは、単なる当てずっぽうなのか??


 こいつ・・・、ホントに一発殴るか???


「・・・おい、今何か物騒な発想浮かんでいるだろう?」


「ああ。一発殴ろうかと」


「おおっと、かなり物騒だな。すまんすまん、まぁ許せ。お前が天才なのはわかった」


 頭を掻いて、素直に謝罪をして来る。


 ・・・なんとなく、やりにくい相手だ。


「まー、その魔力。量的にも、質的にも尋常じゃない。生身の人間じゃ、普通は魂の器が耐えきれなくて、破裂・・・つまり意思のない人形みたいな状態になるわけだ」


「・・・つまり、私の魂が異常だと?」


「そうだな。その肉体の持ち主との魂の年齢を合わせても、50いくかどうかだが・・・。人間でも、十分あり得る年数だ。異世界人というだけで、これだけの魔力は耐えられる理由にはならない。・・・そこで、特例がある」


「とく・・・、は?」


 でも、私は異世界人。それが、特例というわけではないのか・・・?


 ヴァイオレットは、ニコッと微笑んだ。


人殺しの場合だ・・・・・・・

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