第41話:倉庫に行こう!

 町でカイの話を聞いたあと、俺とルルは店まで戻ってきた。


 うち(現世界側)に帰って家の倉庫から使ってないチェーンソーを引っ張りだすためだ。他にも使えそうなものを持ち出そうと思う。


 異世界喫茶店(異世界側)に戻り、例の扉をくぐった。当然呼び寄せたのでルルもこっち側にきた。


「……」

「どうした? ルル」


 扉をくぐったときにルルが自分の手を見たり、周囲をきょろきょろ見たりしている。


「痛くありません」

「どういうこと?」

「前回、この扉をくぐったときは、一気に色々な情報が頭に流れ込んできて、頭が痛くなったんですが、今回は全く痛くなかったです」


 そういえば、前回初めて扉を通ったときにはそんなことを言っていた。痛くないならなによりだ。


「神様の領域に私なんかが入ったから天罰か、警告かと思っていました」


 そこまで痛かったんかーい!


「悪かったね。そんなことになってるとは……」

「いえ、私も受け入れられたみたいで嬉しいです」


 俺は庭に行く気分で異世界に行ってたけど、死なないと行けなかったり、一方通行で二度と戻れなかったり、普通はそれ相応の対価が必要なもんだ。


 改めてその価値を実感した。


 改めて……と言うと、ルルだ。なんとなく断れなくて連れてきてしまったけど、ここに住むんだ。俺と一緒に!


 あのときはルルが気を失ったから、有耶無耶になったけど、改めて考えたらえらいことだ!


 勘違いがあるにしても、俺のことを慕ってくれる美少女が同じ家に! ちょっと想像が追いつかない。


 幼馴染の咲がうちに来たことはあったけど、小さいときの話だし、じいちゃんもいた。それが今は……ヤバい。ドキドキしてきた。


 ルルは俺と歳もそう変わらない。じいちゃんの部屋を使ってもらったけど、それもどうだ。ルルのために片付けてあげたい気持ちもあるけど、まだ亡くなってそんなに経ってない。


 変わらずにそのままにしておきたい気持ちもある。


「コーイチ様? どうかしましたか?」

「あ、いや。ごめん。なんでもない。庭に行こうか」

「はい」


 ***


 うちの物置は庭に置かれたもので、引戸があって色々収納できるようになってる。原付きを入れてたくらいなので、結構大きいものなんだけど、草刈機に続いてチェーンソーが出てきた。


 しかも、チェーンソーはきちんと手入れしてあった。サビもないし、チェーン部分には油も塗布してあって、すぐにでも使える状態だった。もしかしたら、近所の木とかも切ってあげていたのだろうか。


 あ、一輪車も出てきた。じいちゃんが『ネコ』って呼んでた、タイヤが一個で土とかドロとかを載せて運ぶ道具だ。取っ手が2本ついてて持ち上げて運ぶんだけど、タイヤの位置とかが絶妙で実際の重さよりかなり軽く運べるんだ。


 シャベルも出てきた! でっかいスコップね。確か、じいちゃんが関西と関東でシャベルとスコップの名称で、真逆を指すって言ってたから気をつけないと。


 金髪ブルーアイズやカイはどうだろう?


 ……電動スコップも出てきた。流石にサクガン機って岩を砕く機械、道路工事でドドドドドってやってるやつはなかったけど、石とかたくさん埋まってるところを掘るのに使えるってじいちゃんが言ってた。


 しかも、なぜか別にオーガも出てきた。電動ドリルの先端にドリルの刃ではなく、オーガと呼ばれる螺旋状のキリが付いてる。普通に穴を掘るならかなり力強く掘れるはずだ。昔、じいちゃんが庭に池を掘るって言って買ったやつだ。


 こいつもピカピカだ。じいちゃんの仕事ってなに!?


 それぞれの電動工具は充電式なので、異世界でも電源を気にせず使える。バッテリーも予備がちゃんとあった。


 ……これを貸し出しても充電はうちしかできないから、毎回うちに来てくれるなぁ。そしたら、ご飯くらい食べていってくれるだろう。また常連さんゲットできそうな予感。


 俺はそれらも倉庫から引っ張りだした。


「すごいですね! なんだかたくさん出てきました」


 ルルからしたら見たこともない道具がいっぱい出てきたんだ。なんてコメントしたらいいのか分からないだろう。それは分かる。俺だって使ったことない道具がいっぱいなのだから。


 これだけいっぱいあると、どうやって運ぼうかと考えていると、倉庫の奥の方にとんでもない物を見つけてしまった。


「あ! それは分かります! 神様の乗り物です!」


 俺が倉庫から引っ張りだしたのは、四輪の自走式バギータイプの草刈機だった。


「な、なんでこんなものまでうちに……」


 キャンプ道具を運ぶような四輪のカートは元々あるので、草刈機バギーに引っ張らせれば楽に持ち運びができる。


 俺は必要そうなものを全部引っ張り出して、あの森の森を伐採しているところに持っていく事にした。あの町に何かあったら俺の移住先がなくなってしまうのだから。


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