第36話:ルルは自分の役目を意識する
「コーイチ様は このお店で、色々な 魔導具を 貸し出しつつ、その上 食事を提供されているのですね! 」
ルルが『分かりました!』と言わんばかりに目をキラキラさせて訊いた。かわいい上にこの表情。大概の男は惚れてしまいそうだ。だから、これを否定できる男がどれだけいるというのか……。
「まあ、そんな感じ……かな。多分。きっと」
ただ、俺が貸し出したのは『魔導具』 と言うか、『工業製品』 なんだけど。
食事も 食事と言っていいのか……。冷食なんだけど……。
「もしかして、 大きく 干渉しない形でこの町を支援しておられるとか!?」
いや、なんとかして生きていこうとしてるだけなんだけど……。
「うちの村の場合、それでは間に合わなかったからあんなに直接的に……なるほど。さすが、コーイチ様……じゃあ、私はそのお手伝いを……(ぶつぶつ)」
ルルはどうも俺を盲信している。神様じゃないって理解してくれたと思うんだけど、その盲信ぶりは改善されていないような……。
なにか目をそらさないと……。
「俺も料理はできないけど、店で料理は出せるようになるよ。そのうち、ルルにも教えるから」
「ホントですか!? 嬉しいです!」
美少女に料理を教えるというのに、それがレトルトと冷食とは……。いつかルルの彼氏に怒られないだろうか。罪悪感しかなかった。
「じゃあ、とりあえず、この店で今出せるメニューを確認しょうか。ついでに作ってみせるから、一緒に食べよう」
「は、はいっっ!」
今日イチ良い返事が聞けた。
考えてみたら、ろくなメニューがない。
まずは、ある程度ちゃんとしたメニューで『コーヒー』。これは1回淹れて見せたら、ルルはマスターしてしまったので、これ以上なにも言うことはない。
普通なら、1回淹れただけで免許皆伝にはならないだろうけど、俺自身たいしたことないので十分なのだ。
次のメニューは『カレーライス』。ジャーで炊いたご飯とレトルトカレーのコラボレーション。最初は気取ってサラダも付けてたけど、あんまり評判よくないし、洗い物が増えるから、最近ではカレーだけしか出してない。
『豚の生姜焼き(?)』もある。世にも珍しい、メニュー名に『(?)』が入っているメニュー。本物の生姜焼きを知らない俺がそれっぽく作ったメニュー。主にライオンマスクが食べにくるから、やめるにやめられなくなったやつ。
以上!
いや、ホントに『喫茶店』だろうか!? 『異世界珈琲店』に格下げでは!?
一応、仕入れに行ったときに、ハンバーグは買ってきた。既に焼いてあって、ソースもかかってる状態で真空パックの上、瞬間冷凍されたやつ。湯煎にかけて温めたら、皿に盛るだけ。
味はプロ監修だから安心。ご飯を皿に盛ってだせばちゃんとした1食になる。念の為(?)、コーンスープのパックも買ってきた。牛乳で伸ばして温めるだけでスープになる!
女子向けにスイーツも仕入れてきたのだ。厚焼きパンケーキ! こいつも焼いた状態で瞬間冷凍されている。5個セットで500円だった。バターとホットケーキシロップ、生クリームも買ってきたから完璧だ。
あと、ケーキってすごい。冷凍ケーキもあったから、ついでに買ってきた。チーズケーキとショートケーキ、チョコレートケーキの3種類。冷蔵庫に数時間入れとけば、食べられるようになる。
これだけあれば、完璧『に』喫茶店だ。完璧『な』ではないが……。
とりあえず、ルルにもカレーを振る舞った。幸い店には客はいない。基本温めるだけだから、ノウハウもなにもない。ケーキに至っては、解凍だけ。
思う存分、1番人気のカレーを作ってる様子を見せた。
「この銀色の袋にお料理のスープ部分が入ってるんですね!」
「そうそう」
パウチとかっていうんだ。この袋。
「温めるだけで良いんですね!」
「そうそう」
ようやく俺のダメさを理解してきたかな。すごいのは食品メーカーであり、包装メーカーなのだ。
「こんな薄い袋だと何日くらい日持ちしますか?」
「うーん、1年位? すごいのは3年とか5年とか……」
「ええ!?」
いや、レトルトってそれくらい持つから。食品メーカーさんの努力の成果なのか、包装メーカーの努力の成果なのかは知らないけど。
「これが神の国の食べ物……時間を止めてずっと食べられるように……。これがあれば村が飢饉のときもみんなひもじい思いをしなくてすむ……」
「ルル?」
「あ、いえ! なんでもありません!」
ルルはつい先日、村が全滅しかけたばかりだ。食べ物とか、備蓄にナーバスに違いない。
「今度、村に大量に持っていこうな」
「……はい」
ルルは少し恥ずかしそうにしながら微笑んだのだった。
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