第35話:ポーションの実験
ここでカイが右肩にケガをしてるのに気づいた。
「右肩はケガですか?」
「あー、ちょっとヘマしちゃってな。 やっぱり限界はあるんだよ。 でも、この世界には ポーションがあるからな」
カイ曰く、ポーションである程度の傷は治るらしい。
「その分、ポーション めちゃくちゃまずいけど、傷が治るのはこの世界でありがたい。医者なんかいないからな」
「そうなんですか、ポーション 見たいんですけど」
カイが懐をごそごそして1本のガラス小瓶みたいなのを取り出した。
「こんな小瓶に入ってんだよ」
アンプルみたいなやつか。現世界でも医療関係者が使ってるやつに似てて、頭の部分をポキンと折って使うはずだ。
「このガラス瓶みたいなのの生成って難しそうですね」
「あ、これはガラス瓶じゃない。魔法で作るんだよ」
「 魔法!」
「 そうそう、 じゃないとガラス瓶はこんな簡単には割れないよ」
そういえば、 薬なんかが入っている アンプルっていうのも、瓶に 傷が入ってるって聞いたことがあるな。だから、決まったところを折ることができるんだ。折れなかった場合は、もう人の手で折れないみたいな……。
「これ魔法だったんですね。 じゃあ、中身の 成分をちょっと変えてもこの小瓶に入れる事ってできますか?」
「まあな、 それはできるよ」
できるんだ! 面白い!
「じゃあ、その まずい ポーションと 砂糖水とかを混ぜたらどうでしょうね? 混ぜちゃって 成分が変わって、効き目がなくなったら困りますけど 」
「いや、 その発想はなかった。こっちではポーションはポーションでそれに手を加えようなんて考えのやつはいない。 是非やってみたい!」
カイが目からウロコって顔をしてる。現世界の人間からしたら、まずいのは嫌だ。どうしても飲まないといけないなら、なんとか工夫するのは普通だろう。
「 砂糖水じゃあんまりなんで、とりあえず オレンジジュースで割ってみますか」
「オレンジあんのかよ!?」
オレンジだけじゃない。色々仕入れてきたのだ。ストックはあらかたルルの村に吐き出してきたから。
「はい、あとこれを」
「ジューサーあるのかよ!」
俺は棚からジューサーを持ってきた。オレンジを2つに切ったら、断面を下にして入れるタイプ。自動絞り器みたいに電動で搾り出してくれるんだ。
ちょっといいやつで、ゆっくりだけど美味しいジュースが搾れる。
俺はオレンジを冷蔵庫から取り出して半分に切った。そして、このジューサーにセットして、スイッチオン!
すると、注ぎ口からフレッシュオレンジジュースが出てくる。
「わあ! きれいです!」
ルルはのぞき込んできて見てる。珍しいんだろうな。そりゃ、日本の縄文時代とか弥生時代的な文化レベルのときに、フレッシュジューサー出てきたらびっくりするよなぁ。
ジュースを受けた器にもらったポーションを注ぐ。ポキンって感触いいな。初めてやったけど。
折れた頭の方は、折れた直後に小さな光の粒に覆われて、次の瞬間消える。これが魔法か……。
オレンジジュース+ポーションをマドラーでかき混ぜる。特に沈殿物も出ないし、簡単に混ざった。これなら成分は変わらないんじゃないかな。
「だいたい ポーションとオレンジジュースを1対1 で混ぜました。 試してみてください」
コトンと混ぜたポーションをグラスに入れてカウンターの上に出した。
ついでだから氷も3個ほど入れた。
「冬でもないのに、この時期に氷……」
またルルがそこに食いついてる。よっぽと不思議らしい。
「ちょうど、このケガ治そうと思ったから、飲んでみるよ」
カイがオレンジ+ポーションを一気に飲む。
「うまい! ポーションの苦味が全く無い!」
タンとカウンターにグラスを置きながらカイが元気よく言った。
1拍おいて、カイの肩の傷がほのかな 赤い光に包まれたかと思ったら、みるみる消えていった。
「すごい! ホントにポーションなんだ!」
つい口からこぼれた。
「ポーションが苦くないんだ!」
カイが嬉しそうだ。
その後、金髪ブルーアイズとカイはカレーをすごい勢いで食べ、その後充電が終わったスマホで何かを検索してから元気よく帰って行った。
何を検索してるのかなぁってちょっとのぞいたら、金髪ブルーアイズは「長い剣の効果的な使い方」だったし、カイは「効果的な草の刈り方」だった。
どうも二人ともまた魔物討伐に行くらしい。
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