第31話:彼女は美少女
「ただいま……」
「あ、おかえりなさい。神様」
(バタン!)俺は慌てて玄関のドアを閉めた。そして、ルルとは違う方向に視線を向けた。
「神様? なにかありますか?」
ルルは俺の視線の先に目を向けながら聞いた。
「えーと、なにから言ったらいいか……」
その方向を見ても何もあるはずはない。俺は単にルルから視線を反らせただけなのだから。
風呂から上がったルルは、事前に渡していたトレーナーの上は着ていた。しかし、下はなにもつけてきなかったのだ。
考えてみれば、俺がパンツを買って帰るのが遅くなったのが一番の理由だろう。無いものは着れないし。玄関前で咲と話し込んだのも遅くなったの理由の一つだ。まあ、それよりもコンビニで中々レジに行けずにもじもじしていた時間の方が長いのだが……。
「村では風呂上がりにズボンははかない感じ?」
「あ、すいません。暑かったので」
暑かったから着ていないのなら、あの村は夏に行けば全員全裸なのか、と!
「と、とにかく。こっちでは、下にこんなのを履くから」
俺は視線はズラしたままルルに下着の袋を渡した。
「?」
見てないけど、『?』の表情で袋を受け取るルル。この辺り、なんとなく空気で分かるもんだ。
「不思議な中身が見える袋ですね」
袋の方に食いついた! 違う違う。そうじゃない。鈴木雅之もそんなことを言ったはず。
俺は一旦袋ごと下着を返してもらって、袋を開けた。そして、下着を広げてみせた。
女子の前でそいつが履くパンツを広げて見せている光景……。前後の情景が分かってなければ、ただの変態である。
「ごっちが前で……」
「あ、はい……。分かりました」
ルルは下着を受け取ると、脱衣所に引っ込んだ。着る時は見られたくないというのは、割とプリミティブな感情なのか……。見たかったわけじゃないので、残念じゃないから!
とりあえず、俺はリビングに移動した。リビングと言っても、広めのキッチンと言う感じてゆっくりくつろげる空間などではない。
(ガラッ)「神様、これでどうでしょう?」
「あ、履いた……」(すてーん!)
俺は狭いキッチンで思いっきりコケた。それはもう、コントの様にコケた!
「ルルさん、あの……ズボンは……」
そう、パンツは履いたけど、ズボンはまだだった……。
「あ、すいません。ズボンもでしたね」
お約束とも言うべき一連のやり取りをして、今度こそルルがリビングに戻ってきた。
「……どうですか?」
「……」
俺は言葉を失っていた。そうなのだ。ノーパン、ノーズボンなどを見たので慌てていたのが先立った。
忘れていたけど、彼女は美少女だった!
俺のスエット上下なのだが、それでも十分かわいい! すごく可愛いのだ! そう、息をのむほどに。
「……かわいいです」
「……ありがとうございます」
ルルは少し恥ずかしそうに答えた。
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