第17話:ようやく異世界っぽい事象発生
コーイチはキャノピーにたんまり食料を積み、冒険の旅に出た。ドラクエでは基本主人公は徒歩だった。物語の多くの冒険者が徒歩や、馬車を使う中、キャンピングカーやサイドカーなどの変わり種は過去にあっただろう。
でも、ピザ屋が使う様なフード付きの原付『キャノピー』での冒険は過去に聞いたことがない。最初の内はコーイチも前例がないことは良いことだと考えていた。そのうち、前例がない理由が分かってきた。
異世界のように荒れた道は、オフロードバイクならば問題ないが、キャノピーのように日本の舗装道路を走ることを想定した原付には全然向かないのだ。
異世界の道はアスファルトなどで舗装されていないので、全然フラットではない。ハンドルはしっかり持っていないとすぐに右に左に取られてしまう。その上、石や木の根が所々に飛び出していて、山道のような状態だったのだ。
「歯を食いしばれ! 舌噛むぞ!」
コーイチは気分を紛らわすために、一度は言ってみたいフレーズを言ってみた。当然一人なので、答えがないのは当たり前で、誰も聞いてすらいなかった。
さらに、残念なことに途中に魔物が出てくるなどのイベントがあればまだよかったのだが、延々荒れた道をただ進むだけの状態となっていた。異世界のお約束として、脱輪した馬車があったり、それをゴブリンの群れが襲っていたり、その中には姫が身分を隠して入っていたり……そのようなイベントは一切なく、コーイチはただ荒れた道をひたすら走っていた。
そして、とっぷりと日が暮れたころ、コーイチは気づいた。野宿が怖い、と。日本で普通に暮らしていたら、野宿をする高校生はほとんどいないだろう。家ででもしない限り公園などで朝を迎えることはないのだ。
一部の陽キャはカラオケボックスや、ネカフェ、ファミレスなどで朝を待つことはあるかもしれないが、それは本当に少数派。コーイチも夜になって気づいた。ここで選択肢は2つだった。
一つはそのまま進んでまだ行ったこともない村で夜を過ごす。ただ、ホテルや旅館がある可能性は低いので、野宿になる可能性もあった。
もう一つは引き返す方法だ。ここまでに約6時間走っているので、同じ道を6時間帰れば家に着く。ただ、この場合、明るい時間で6時間なので、暗くなってからだとどの程度遅くなるのか……。
コーイチはそんなことを考えていると、長距離自転車に乗って祖母の家に一人で言った時のことを思い出した。中学生の時、片道80キロある祖母の家に一人で自転車に乗って行った。距離は長い上に、途中に山を一つ越える必要があったので、1日がかりの旅行になった。しかも、行ったからには帰らなければならず、かなりの苦労があったのだ。
その時にコーイチは思った。途中で止まるのは嫌だ。一度止まると勢いがなくなる。休憩したら、ずっと休憩していたくなる。
その考えは、この異世界でも引き継がれていた。考えているうちも進み続けている。つまり、決断が遅くなれば遅くなるほど、帰り道は長くなっている。そう考えているうちにまた進んだ。そして、また家は遠くなった。
この外から見たら何も変化のない思考のループによってひたすらまっすぐ進むという、結果傍から見たらなにも考えていない行動をコーイチにさせていた。
迷い始めてからどれくらいたっただろう。コーイチはハンドルを持ったまま、うとうとし始めているの気付いた。これはさすがにまずいと思い、キャノピーを止めた。そとは真っ暗。日本の道路のように街灯はないので、真の暗黒だ。
キャノピーの弱いヘッドライトで見つけた、道のわきの比較的フラットな場所で寝ようと思い、キャノピーを押した。ハンドル付近のレバーを引くと、車体は固定して倒れなくなる。
コーイチは身体が重くなり、気分的にはスローモーションで地面に崩れる様に座っていった。そして、固い土の地面に仰向けに寝転がったところで、横に人が倒れていることに気づいた。
「ぎゃあっ!」
人間、危機を感じたら疲れも何もあったものじゃないらしい。飛び起きて離れた。しかし、その人は全く動かない。コーイチはバッグのポケットからLEDライトを取り出し、その倒れた人を照らしてみた。
それは人間の少女らしかった。
■
父は母の年金を泥棒した件は、夫婦の資産は共有財産と言うことで、「妻から頼まれていた」と言われると警察は介入できないそう。
調べてみたら、「同居している」が条件らしく、「別居している」間は含まれない模様。現在DVからの避難で別居中なので、ケアマネージャーに証言してもらうとして、DVを市に申請することにしました!
まだまだ終わらないみたいですね。
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