第14話:金髪ブルーアイズのスキルとは
「俺のスキルはこれだ!」
金髪ブルーアイズがカウンターのテーブルの上に金貨を1枚出した。
もしかして、金貨を無限に増やすスキルだろうか。それなら、一人で生きていきたい俺にとって羨ましいスキルなのだが……。
「とうっ!」
金髪ブルーアイズの掛け声で目の前の金貨がなくなった。このかけ声は必要なのだろうか。これが必須だとしたら、かっこ悪いなと思いながら、次に何が起こるのか見守った。
「ぬーっ……とうっ!」
再度かっこ悪いかけ声と共に、先程の金貨と思われる1枚がテーブルの上に現れた。
「……?」
俺が首を傾げ、説明を頼むとばかりに金髪ブルーアイズの顔を見た。リク、カイ、クウは驚いた顔をしているようなので、俺だけ意味を理解していないようだ。
「すげえな、田中!」
「すごい! 商人やったら良いんじゃない!?」
「どれくらい収納できるの!?」
リク、カイ、クウが褒めたり、質問したり、とにかく興味があるみたいだ。収納のスキルなのか、魔法なのか、それはすごいらしい。
「そうなんだよ! ある程度のものを自由に出し入れできるんだよ! 多分、ごぶし2個分かもうちょっとくらいは収納できるぜ。まあ、戦闘に使えるスキルじゃないけどな」
自慢気な金髪ブルーアイズ。
「その剣を収納できるんですか?」
「うーん、先端くらいなら」
「取り出すとき、どこくらいまで遠くに出せますか?」
「それはすごくて、2〜3メートル先までいけるぜ!」
「じゃあ、こんなのできますか?」
俺はイメージを身振り手振りも含めて説明してみた。
***
「すっげー! これヤバい!」
金髪ブルーアイズはめちゃくちゃ喜んでいた。
どんなことができるか聞きながら、色々挑戦してもらっていたら、持っている剣の先端のみ収納して、5メートル先くらいの空間から出すことができることが分かった。
今は、5メートル先のテーブルの上に置いた野菜を離れた場所からつついて遊んでいる。
「それって最大何メートルくらいまで話せるんですか?」
「そうだな、今は5メートルくらいが限界だけど、これは伸ばせるな! そんな気がする!」
なんとなく分かるのだろうか。俺は全くスキルがないので、その辺りの感覚的なものは全く分からない。
「それって、ある程度の離れたところまでいけれは、遠くから剣で攻撃できないですか?」
「!!」
金髪ブルーアイズが今気づいたみたいで目を見開いた。
「しかも、離れてるから反撃される可能性もないし、かなり有利に戦えるんじゃないですか?」
「ホントだ!」
金髪ブルーアイズが空間に差し込んだ剣を活きよいよく出し入れしている。先端と柄の部分しか見えないので、間が透明のなっがーーーい剣みたいになってる。
「ちょっと俺、もう一回狩ってくるーーー!」
金髪ブルーアイズがまた金貨を1枚置いていってくれた。本格的にカレー1杯1万円みたいになってる……。
「ありゃー夜まで帰ってこんぞ」
両手に花のカイが言った。カウンターにリク、カイ、クウの三人が仲良く座ってる。
カイのスキルについて聞こうと思ったが、両脇に可愛い子が常にいることから、そのスキルについてある程度察した。
カイからしたら、顔面偏差値が高めの二人がいつも一緒なのだ。全然羨ましくなんてなかった。ホントだから!ぜんっぜん、これっぽっちも羨ましくないから!
「なあ、俺の相談にも乗ってくれよ」
逆にカイから話しかけられた。
「どうしたんですか?」
「最近、魔物が多いんだよ! だから、ほとんどの冒険者が魔物狩りに駆り出されるんだよ」
「はい」
「だから、町から出てすぐのところの草がぼうぼうなんだよ!」
なんか今、風しか吹いてないのに桶屋が儲かった的な話がでたぞ?
「なぜ草が?」
「そりゃあ、普通は駆け出し冒険者とかが草刈りしてるからだよ。今はそいつらも駆り出されてるんだよ」
意外にその間は短かった。聞いてみたら何でもない話。
「そんで、あんまり草がひどいから俺が刈ることになったんだけど、別にレベルが上がっても草刈りは草刈りなんだよ! 手間かかるんだよ!」
カイはカウンターに額をぶつけ、うなだれた。
「……じゃあ、ちょっと待ってください」
俺は扉を通って現世界に帰ってきた。そして、庭の物置に行き、最近使ってなかった草刈り機を引っ張り出してきた。
草刈り機は全長2メートルほどの棒状で、先端に円形のブレードがついている。反対側はエンジンを積んでいて、ベルトをかけて首から草刈り機を吊るすようにして持てるようになっている。
ホームセンターで約2万円弱くらいで売られているものだ。エンジン式なので、難しそうに思われがちだけど、実際には1回使えば簡単に使えるものだ。
これは、じいちゃんが庭の草刈り用に買ったものだ。見様見真似でエンジンをスタートさせた。
よくわからないけど、「チョーク」のレバーを半分ひねってスイッチをオン! エンジンがかかって軽快なエンジン音がする。じいちゃんがやっていたのを見ていてよかった。
調節レバーを少し回すと回転刃が回り始めた。目の前の地面に見える小さな雑草に回転刃を当てると簡単に切断できた。
ヤバい。ちょっと気持ちいい。俺は周囲の雑草をもう少し刈って楽しんだことで、「運転テスト」とした。そして、エンジンを止め、軽く拭いて店に持ち込んだ。
「これどうぞ」
「おわっ! 草刈り機!?」
店に持ち込むと、カイ驚いていた。リクとクウは初めて見たみたいで、これが何か分からない様子だった。
「まだ燃料も十分残ってるので、貸しましょうか?」
「マジか! ぜひ!」
別にもうじいちゃんも草刈りをしないし、こんなことがなければ俺は草刈り機の事なんか思い出さなかっただろう。
たとえ、壊してしまってもいいし、レンタル的に使って見て、使い終わったら返してもらえばいい程度に思っていた。
返却時に妙なことを聞くまでは、異変はまったく感じなかったんだ。
■
ギリ更新間に合いました。
まさか、公開2時間前に書いたとは思わないでしょう(^_^;)
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