第13話:夢も希望もない異世界

 色々話を聞いてみた限りでは ここはやっぱり 異世界 らしい。

 まあ、 それは店の周囲の景色を見れば間違いないとわかる。そして、 この街は『チュウカン』と言うらしい。


 この世界は、いわゆる 剣と魔法の世界で 冒険者は魔物を狩ったりして 町や 村を守っているらしい。

 そして、狩ってきた魔物は解体して売られるのだ。ただそれだけでは人間の生活というのは 成り立たない。 農作物が必要だ。 穀類を 育てる 畑が少し離れた場所にあるらしい。


 このチュウカンって町は森が近くて 魔物が出やすい。もう少し離れたところには村がいくつかあるけれどそっちは農作物を育てるのが自体で、魔物はあまり出てこないらしい。


 なるほど、 ゲームなんかだと魔物はどこにでも出てくるような気がしたけど、やっぱり人間 普通に住むとしたら魔物が出ないところに住むよね。


 そんな中、金髪ブルーアイズと、この男1人 女2人の 両手に花の パーティーである、リク、カイ、クウ は 冒険者らしい。

 冒険者 と言っても、しばらく……と言っても何年かは、この町に滞在して、 出てくる 魔物を倒すのが仕事らしい。


 魔物はそんなに 24時間 たて続けに出てくるようなもんじゃないらしく、 時々 街に 迷い込んでくるみたいな形で出現するので 普段の仕事は森の入り口付近の見張り らしい。

 それだけでは 冒険者が食べていけないので、冒険者たちは森の入り口から少しだけ入って 弱い 魔物を倒して 素材稼ぎをして生計を立てているらしい。


 この世界は割と理屈が合ってて、 ゲームみたいに ご都合主義じゃないみたいだ。

 現実がここにもあるなんて、異世界に逃げ込みたい俺にとっては鬱展開だった。


 そしてこの町にはあのライオン マスクみたいな 獣人もいるらしい。 彼は 言うならばこの町の 警察トップみたいな存在 らしい。なんでも貴族らしいけど、 この世界の住人でない 俺にとっては貴族でも平民でも どうでも良かった。


 普通はこのチュウカンぐらいの小さな町に貴族がいることはほとんどなくて、 いるとしたら 避暑地的な使い方で、バカンスで 来ることぐらいらしい。


 ついでに、この町が今抱えてる問題として、 今年の 干ばつがある。 穀倉地帯からの作物がほとんど入ってきていないので、食べ物が少ないらしい。

 それが関係してるのかわからないけれど、 魔物が森から よく出てくるらしい。もう、田舎で山の食べ物がなくなってきたから獣が村に降りてくるのと変わらない。もっと『非現実感』出してほしいところだ。


「あの、 その森って俺も行けるのかな?」


 雑談なので、少しため口寄りで金髪ブルーアイズに聞いてみた。


「 あー、やめとけ やめとけ。 森の奥の方は 『深部』 って言って、すげえ 魔物が出てくんだよ。 俺たちも 森に入るんだって 5分か10分か ぐらいまでで、すぐに出てくるんだから。 それより奥に行くと絶対倒せないような、おっかないやつがいっぱいいるんだよ!  素人が入ったらぜってー 死ぬぞ!  絶対やばい!」


 俺は森に入らないことを決意した。普通の異世界物の主人公はナンヤカンヤ言って、その『深部』とやらに入って行くんだ。そしてあり得ない強さの魔物を倒すんだよ。


 でも、俺はなんのスキルもないし、特別な力もない。そんな危ないところに入って行ったら、秒で死ぬ。瞬間やられる未来しか思い浮かばない。


「じゃあ、 村っていうのは?」

「そうだな、 一番近い村 だと…… ちょうどこの森の真反対なんだよ。 こっからだと森を抜けないとたどり着けないって」

「なかなか行けないとこなんだよ?」


 カイも会話に入ってきた。みんなカレーを食べ終わって落ち着いてきたらしい。


「じゃあ、 どうやって 穀物はこの町に届いてるんですか?」

「森を大きく 迂回する形で 馬車で持ってくんだよ。 歩きは遅いからな。 だいたい2日かかるかな」


 めちゃくちゃ遠いな。 でもその村ってどうなってんのかちょっと気になるな。 俺はその村にすごく興味を持っていた。 日本で暮らすとどうやったって税金とかあるし、 働かないと生きていけない。


 だけど、 世界の田舎の方だったら 自給自足で何とか生きていけないかなと考えていたのもある。 だいぶ 遠いみたいだから、 原付に乗って 食べ物いっぱい積んで行ってみようかな。たしか、じいちゃんが昔乗ってた原付があったはず。


「この肉は素晴らしい!」


 さっきのライオン マスクが全部 肉を食べたらしい。


「もうないのか!?」

「この肉は あと何日かもらえればまた 仕入れてくることはできますけど……」


 勢いがすごいから後先考えずに答えてしまった。また買いに行くのはめんどくさいし、何より仕入れ値が高い!


「 本当か!? 頼む! ぜひ! とりあえず、1ヶ月後に また戻ってくる。その時にはこの店に寄るんで準備しといてもらえるか!?」

「分かりました。 1ヶ月あれば大丈夫です」


 まあ、 ファティに買いに行くだけだから、 最速で言えば『翌日』でもなんとかなるけど……。


「これは感謝の気持ちだ! 取っといてくれ!」


 ライオン マスクがテーブルの上に金貨をたくさん置いた。 5~6枚あるかも。


「こんなに!?」

「いや、いいんだ。 助かった。 また頼む」


 手渡しなら断れるけど、テーブルの上に置かれたら突き返すのはかえって失礼か……。


「 いいじゃねえか。 貰っとけよ」


 金髪 ブルーアイズが言った。


「それじゃあ、いただきます。 ありがとうございます」

「 いやいや 見事だった」


 結局、6枚の金貨を置いて、ライオンマスクは帰っていった。1枚ざっくり1万円として、6枚で6万円……。原価が1万円弱なので、十分儲かった。いや、ぼろ儲けだった。


「なに出したんだ?」


 金髪ブルーアイズが訊いてきた。


「えっと…… トンテキ?」

「なんだそれは、 料理名に『?』付いてんの 俺 初めて聞いたぞ」


 金髪ブルーアイズが手をひらひらさせながら言った。


「いや、 なんか 肉買ってきて、切って、 炒め ただけっていうか……」

「そういうこと。 まあ、 魔物って肉は あんま 食べないんだよ」

「そうなんだ」

「だって、現世界の日本でも ライオンとか ピューマとか、肉食獣って食べなかったでしょ?」

「言われてみれば食べるのは 草食の家畜だけだろう? 豚とか鶏とか牛とか……」

「確かに」


 言われてみれは当たり前だけど、家畜って全部草食動物だな。頭いいのか!? この金髪!?


「魔物って基本 雑食 だから、 肉も食べる。だから、その肉もあんま 食べないんだよ」

「食べたら まずいのかな?」

「さー」


 分からないというジェスチャー。言語変換は分かるとして、こういったジェスチャーって異世界と現世界で違うと思うんだけど……。この辺もなんらかの方法で俺に馴染みがあるジェスチャーに見える様になっているのか……!?


「ただずっと 誰も食べないってことは、 そんだけ理由があるって事だろうし 食べられないもん 食べると、 ノウハウ みたいなもんがないから 体こわしたりとかあるんじゃねえか?」


 うーん、俺だってお腹が空いたからってその辺のキノコを食べたりしないしなぁ……。たとえ、食べられるキノコだったとしても、正しい調理法をしないとお腹こわしたりするかもしれないし。


「この世界で 体こわす っていうのは、割と命に関わってくるからな」


 なんだと!?


「日本みたいに 医者が多すぎるとかいうこともないし、 薬があるとかいうのもないし、風邪 こじらして普通に死ぬからね?」

「 マジか。 風邪引いたら風邪薬にあるんで言ってください」

「そっちこそ マジかよ!  お前何で風邪薬 持ってんだよ!?」

「えっと…… そのスキルで!」


 なんでもアリだなこの言い訳。


「お前のスキルって何なんだよ!?」

「俺だけ……私だけ言うのは不公平じゃないですか。金ぱ……ファ、ファティ……山田さん? 鈴木さん?」

「まだ名前覚えてないのかよ!? ファティオン・グレバール・ザッタムン! 現世界では覚えにくいよな。まあ、 田中でいいよ。中身 田中だから」

「田中さんのスキルって何ですか!?」

「これだよ!」


 この後、金髪ブルーアイズの長い自慢話を聞く羽目になるので、次回に渡そうかな。


ヤバい……ストック切らしました。プライベートでトラブル発生していたもので……。

明日、更新できるかこうご期待!

更新できてなかったらごめんなさい(涙)

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