第9話:お店のアドバンテージとは

 金髪ブルーアイズとカイがコーヒーを飲みに来て、カレーを食べて行ってくれた。


 客として来てくれた四人はみんな喜んでくれて、金髪ブルーアイズとカイがそれぞれ金貨を1枚ずつ置いていってくれた。


 その価値を聞いたら、普通の街の人の2〜3日分の給料って言ってたから、相当な破格値でお金を払ってくれたんだと思う。


 俺は金貨を初めて見た。500円玉くらいの大きさで重さ的にはちょっと重い!これは質量的に重いのか、初めてもらったお金って事で心理的に重いのかは分からなかった。


 コーヒー豆用の秤で重さを計ると約7gだった。それを金の買取り価格で調べると、11300円前後。金の含有率が高いことが前提だけど、かなり良い金額になる。


 手の中で金貨はチャラチャラと心地よい音をさせた。


 金髪ブルーアイズとカイは実にいい事を教えてくれた。店外には『猫柳珈琲店』と看板が出ていたのだけど、それは日本語で書かれていた。


 看板もボロボロになっていたので、それを下ろして『異世界珈琲店』と異世界語で書いてもらったのだ。


 これで地元の人も来てくれるかもしれない。これまでは、見たこともない建物で、謎の看板を出した謎の建物……って状態だったのだ。俺が逆の立場なら絶対にそんな建物には入らない。


 その点、日本語が分かる異世界転生人、異世界転移人は入ってくる。まあ、看板があまりにもボロボロだったから、店をやってるかどうか不安だったみたいだけれど。


 次は、この世界の文化レベルだ。日本ほどじゃないけど文明はある。よく異世界ものであるような、水車とかは既にあるらしい。異世界転移の先人が伝えたのか、それとも普通に生活してたら当然到達する進化なのか。


 弓とか剣とかは普通にあって、剣と魔法もあるらしい。それはとても魅力的だったけれど、俺にはなんの加護とかもない。そもそも、神や女神にすら会っていないし。


 王都ってのもあるらしい。そこでは、スコーピオンとかバリスタとかの兵器は既にあり、現世界の知識でウェーイできるようなことはないらしい。これも、既に先人が伝えたか、既に自力で到達したか、俺の出る幕はなさそうだ。


 まあ、俺としては店ができて生活費が稼げればいいから、その辺はあんまり気にしない。


 異世界ものの主人公がうろ覚えのくせに、ものすごく詳しく武器や魔物の弱点について知っていたことを考えたら、うちみたいな店は他にもあるのかもしれない。


 幸か不幸か、この街にはそんな店はないらしく、レトルトのカレーを出しても涙を流して食べてくれる人がいる。


 俺にとってここは異世界ではあるのだけど、うちと繋がっている土地だ。レトルトカレーだろうが、冷凍食品だろうが楽に持ち込める。その辺の地の利を活かせば商売としてなんとかやっていけるのではないかと思っている。


 しかも、今年は日照りと水害が両方起きたらしく、この周囲では食料や物資が少ないらしい。現世界から食材を持ち込めば助かる人もいるだろうし、俺も儲かる。地域に根付くことができれば、物が潤っても商売をしていけるようになるかもしれない。


 異世界ものの話が多いからなのか、逆に異世界転生・転移が多いから物語が多いのかは知らないが、かなりの数の日本人がいるのではないだろうか。


 この町に既に最低二人はいるわけだから。転移者は姿が日本人だから違和感はないけど、転生者は姿形が異世界人だ。ぱっと見、西洋人に見えるのに流暢な日本語を喋るのはものすごく違和感だ。いや、これからは国際的な社会が来る。これはこっちが慣れるべきだろう。


 とりあえずは、カレーとコーヒーがあれば店っぽいことを続けられそうだ。明日もやってみるか。

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