第5話:異世界の人影

「ここ店?」


 異世界(?)の店のカウンターに隠れた俺だったけど、あろう事か異世界の住人が店に入ってきた。


 いやいやいやいや、あり得ない!


 異世界ものの主人公たちってすごいな! 異世界人との接触はものすごく怖い! 


 ついでに言うと、ドラクエの主人公は夜中でも勝手に部屋に入ってきて瓶とか破壊したり、勝手に引き出しを開けていって、良さげな物を奪っていく。あいつら悪魔だ! 今の俺ならそれがよくわかる!


 音が止んだから俺はカウンターからそっと顔を出してみた。


「あっ! そっちか!」


 しまった! バッチリ第一異世界人と目が合ってしまった!


 西洋人っぽい男だ。髪は金髪。瞳はブルー。明らかに日本人じゃない! 西洋人っぽいから歳は分からないけど、20代かな、多分年上だ。ついでに言うと、近所にこんな見た目の人はいない。


 やっぱり、こいつは異世界人に違いない。


「なにかごようですか!?」


 俺はカウンターに隠れたまま叫ぶ様にして聞いた。


「なっ! 日本語!? 日本語かっ!?」

「すっ、すいません!」

「日本人か!? お前、日本人か!?」


 ヤバい!? 怒ってる!? 降参だ! ここは敵意がない事を伝えるしかない!


「あの……、日本人です! すいません!」


 俺は両手を挙げて、降参のポーズで立ち上がった。高1の晃市が降参のポーズ……。いや、これは要らない情報。


「いや、すいませんって事はないけど……」

「え?」

「久々に日本語聞いたよ。異世界転生特典で異世界の言葉でも解るのに、日本語は日本語って分かるから不思議だよな」


 同意を求められても……。


「俺は田中! 田中だ!」

「た、田中……?」


 明らかに田中顔をしてないんだけど……。その男は皮っぽい服の上に鎧のような物を身につけていた。明らかに一般人じゃない。戦うための出で立ちだ。


「あ、すまん。これじゃ分かんないよな。この世界での俺は、ファティオン・グレバール・ザッタムン。日本からの転生者で、中身は田中栄次だ」

「転生…」

「そういうお前は、その見た目なら転移者か?」

「転移……?」


 こいつは何を言ってる!?


「その様子じゃ、こっちに来てまだ間もないな?」

「え? あ、はい……」


 田中はしようがねぇなあってジェスチャーで俺に説明してくれた。


「ここは、チュウカン村」

「チュウカン村……」

「そうだ」


 俺ってだいぶリビートアフターヒイが続いてないだろうか。


「旅の途中で物資の補給とかができる貴重な村なんだけど、最近物資が滞りがちかな」

「はあ……」


「俺は異世界 転生したんだよ、 異世界転生」

「ここは異世界 なんですか?」

「ああ、 ここは異世界なんだ。 俺たちがいた 地球とは全く違う」

「ここは地球ではないんですか?」

「それは分からない。 そういうのがわかるほどの文化 レベルは ないみたいだ」

「ああ そういうことですか」

「『地球』と 『対義語』で異世界ってなんかちょっと違和感がないですか?」

「ちょっと変な感じがするな」

「『異』世界の対義語だから、『正』世界か、『現』世界かでは?」

「なるほどな。なんとなく『現世界』の方がしっくりくるな。まあ、俺にとっては その現世界が異世界なんだけどな」


 異世界が現世界。 現世界が 異世界。 もう訳がわからなくなってきた。


 その金髪ブルーアイズが流ちょうな日本語で説明していくのですごく違和感があった。


「あ、すいません。こちらどうぞ」

「お、おう」


 どっちにしても、この男は悪いヤツではないらしい。お茶でも出して話を聞くか。


「ちょっと待ってください。コーヒー出します」

「こっ、コーヒーだと!?」

「ひっ!」


 急に金髪ブルーアイズが大声を出した。


「紅茶の方がよかったですか? 紅茶はまだ茶葉が無くて……」

「いや、コーヒーが飲めるならコーヒー飲みたいに決まってるだろ!」

「え? そうですか? じゃあ、コーヒー淹れます。ちょっと待っててくださいね。やっと今日、初めて淹れたんで味は保証できませんが……」

「ばかやろう、この世界でコーヒーにありつけるって言うなら俺は金貨1枚出してもいい!」


 異世界ジョークだろうか。コーヒーくらいで……。


 俺は、あの扉を通って今日買ってきたコーヒー豆を使ってコーヒーを淹れた。ちなみに、お湯が湧く間に例のコーヒーサーバーは掃除した。


 ***


「お待たせしました」


 自分の分と金髪ブルーアイズと二人分のコーヒーを持ってきた。


「おお! 本格的だな! ちゃんとコーヒーのにおいがするぞ!」


 そりゃあ、コーヒーだからな。


「おはーっ! コーヒーだよ! 完璧にコーヒーだ!」

「ありがとうございます」


 金髪ブルーアイズは俺が適当に淹れたコーヒーを喜んてくれた。なんにせよ、喜んでもらえるってのは嬉しいもんだな。


「ここ店か?」


 男は少し寛いだ様子で店を見渡す。俺も初めて見たはずなのに、左右対称なだけでうちの店そのままなので、掃除してあってよかった、みたいな変な事を考えていた。


「一応店みたいですね」

「あー そっか、 まだわからない感じかー」

「あ、いえ……」

「俺も見た目はこんなだけど、中身は日本人だから米が食いたいんだよ、 米が! あとカレー! そして、 ハンバーグ!」


 小学生の給食かな?


「日本から 転移してきたやつと、転生してきたやつといるから ここのコーヒー 紹介しとくぜ」

「あ、ありがとうございます……」


「コーヒーありがとうな。久々に現世界の味に触れた気分だったぜ」

「それは良かったです」

「えっと、 代金はいくらだ?」

「まだ試作品なんで代金は結構です」

「本当か!?  サンキューな!  その代わり 今度仲間 連れてくるわ!」

「 ありがとうございます。 じゃあカレーとハンバーグ 出せるようにしときます」

「 本当かよ!? この世界で可能なのかよ!」

「はい、 大丈夫と思います」


 男は喜んで去っていった。 俺はまだ目の前で起きている 事象にまだ心が追いつかないでいた。


本日5回目の更新、お読みくださりありがとうございます。

やっと物語に入ってきた感じでしょうか。

続きが気になったらぜひ「いいね」で教えてください。


コメントでも大歓迎です♪


明日は、朝6時に更新予定です。

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