第2話:商品探し

 じいちゃんが持ってたものの中で比較的新しいのが、唯一スマホだった。なんかちょっとでかいし、ちょっと重たい。


 今スマホってでっかくなって、重たくなっていく傾向だから普通かな。最新のiPhone15が……


 俺はスマホを取り出して調べてみた。


……170gか。


 170g くらいなので、まあ、ちょっと重たいくらい? 性格的に気になったら調べる派だから。


 胸ポケットに入れるにはちょっと重たいかなって思う。じいちゃんなんて電話してんのも見たことないし、ゲームとかやってんのも見たことない。なんでこんな最新のスマホ持ってたんだろう?


『持ち主 変更を行いますか ?』


 急にスマホが喋った! 最近のスマホはしゃべるんだな。 じいちゃんくらいになるとキーボード入力とか苦手そうだから、し音声入力使ってたのかな。


 Alexa とか siri とか、そんな感じかな。もうじいちゃんも亡くなったし、ちょうどいいから登録を変えようかな。


「 はい」


俺はそう答えた。


『新しいオーナー様のお名前は何ですか?』


 フルネームっていうのもなあ……。


「晃市」


『コーイチ様、承知しました。 お名前登録しました。次に 私のことは何と呼びになりますか?』


 あー、結構面倒くさいなぁ。そういえば、最近の Alexa とかは その呼び方変えたりもできるんだったな。


 確かになんか 『Alexa』とか 『Hey Siri』 とかって他の人がいるところで言うと ちょっと恥ずかしいもんな。


 じゃあ……。俺は視線を斜め上に上げて考えた。論理的な考えは左脳が得意という。その時に無意識にそちらの方を向くというのは本当か?


 気づけば俺も左上を見てるなあ。まあ、そんな事、どうでもいいけど。そうだ!『ねえ』とかだったらどうかな。


『ねえ、今日の天気は?』とかね。『○○までの道を教えてとか』。 名前じゃないけど、名前みたいに呼んでも恥ずかしくない!


「よし! 名前 は『ねえ』にする」


「『 ねえ』 ですね。 かしこまりました。これからは私の事を『ねえ』と呼んでください』


じゃあ、ちょっと早速使ってみるか。


「『ねえ』 、近所で食材が安いスーパーってどこ?」

『 近所で食材が安いお店は2店あります。 お店で販売することを考えると、 業務用食材の店がいいと思いますので、『ファティ』がいいかと思います』


 めちゃくちゃ 高性能!  業務用で使うってことももう理解してるってどういう状態なんだよ!? 


 俺はスマホの 案内通り、 ファティに行くことにした。 ファティは近所の業務用食材の店。 まあ、 業務用と言っても個人でも買いに来れるから 、ちょっと珍しいもんが置いてあるスーパーみたいな感じだろうか。


***

 早速店についた。うちから歩いて20分くらい。近いと言ってもそれなりに距離があった。何度も行くのは面倒くさそうだ。


 中にはいると店舗の広さで言ったら、普通のスーパーよりはちょっと狭いかな。 でも コンビニのよりは広い。 そんな 店だった。


 違うのは売ってるもの。 冷食とかをいっぱい置いてあるし、 珍しい食材もいっぱい売ってある。


「温めるだけで料理ができたりするんだ」


 俺が手にしたのは冷凍のオムライス。チキンライスにたまごがきれいに載ってて、皿に盛るだけの状態で冷凍され、真空パックしてある。これなら温めるだけだから、俺でもできそうだ。


……ダメだ。価格が680円だった。これ出すなら、いくらに設定しないと儲からないのか。800円でも、120円しか儲からない。それ以上は、俺がお客さんだったら出すの嫌だなぁ。不採用。


 次に、俺が注目したのはコーヒーだ。それも、コーヒー豆。 店内でローストしててるらしく、オリジナルの焙煎ができるらしい。


 うちのあの店は元々 喫茶店らしいから、 コーヒーが出せれば 店として格好がつくかも。


  コーヒーなんて豆を挽いてお湯を注ぐだけでのできるんだから、 誰にだって淹れることはできる。


  豆を挽く機械も店にあったし、 コーヒーを入れるフラスコみたいなのもあった。 紙フィルターはさすがに古いから使えないと思うんで、まあそのくらいかな。


 出費は最低限にして商品ができるんだったら、それがいいかな。 俺はそう考えてコーヒー豆を買うことにした。


 よく見ると、100g 100円のものもあれば、100g 300円のものもある。まず、 コーヒー豆の100g でどんくらいなのか、 俺は知らなかった。


 もっと言うと、 コーヒーを粉にするための道具が何なのかも知らなかった。こういう時は詳しい人に聞くのが一番。


「あのー、コーヒー豆がほしいんですけど……」


 俺は若くて可愛い店員さんに声をかけた。俺よりちょっとだけ年上って感じ? バイトかな。合法的に可愛い子に声をかけられるし、邪険にされないからいいな、こういうの。


「いらっしゃいませ。どの豆にしましょうか?」


そうくるよね。それがわからないんっスよ。


「すいません、 コーヒー豆買うの 初めて なんで と全然わかんないんですけど……」

「大丈夫ですよ。 プレゼントですか?」


 いや、可愛いわ! この人! 笑顔が可愛い! いや、今は豆に集中だ!


「うちの店で新しく出そうと思ってまして……」


『うちの店』とか言っちゃったよ!  オープンするかどうかも分かんないのに! 


「 あーそうですか。 どんなコーヒーをお探しですか?」


どんなコーヒーとは!? コーヒーはコーヒーでしょ。どれも変わらないだろ。


「飲みやすくて、美味しいのを探してるんですけど……」


 ダメだ。 多分全部 飲みやすくておいしいに違いない。ここに来て答えを間違えた!


「失礼ですけど、 お店はお食事もできますか?」

「いえ、まだ料理を出してないんです。とりあえず、コーヒーだけ出そうと思って」


しまった!  食事も出してなくて新しくコーヒー出そうとしてて、コーヒーが選べないってどんな状況なんだよ!?


「それでしたら、こちら なんかどうでしょうか。 酸味も抑えめでローストも 抑えめ。 苦味も抑えめ の商品となります 」


 なんでも抑えめじゃん! こいつの個性はないのか!?


「あ、じゃあそれください」


 まあ、頼むけれども!


「今日はどのくらいなさいますか ?」

「えっと 100g ってどれぐらいですかね?」


 これ! 俺はこれが聞きたかったんだ!


「 そうですね、 このスコップで大体いっぱい…… このぐらいになります」

「じゃあ、 300g お願いします」


別に 100g でも200g でも良かったんだけど 、コーヒー1杯入れるのにどのくらいの量が必要なのか俺にはわからなかった。


 だから、まあ 失敗しないように 多めに頼んだつもりだ 。さて、 俺は家に帰ってコーヒーを淹れることにした。


まだまだこれからです。

初日は5話更新予定です。

今回は2話目。

次回は12時更新です。


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