第7話 ~いざ商業組合へ~

 隣街までは先程までいた場所から20分程度で着くので、ここまで近付いてしまえば、余程の事が無い限り安全なので、何事も無く街へ辿り着いた。


 門には槍を持った衛兵が2人立っていたけど、アルテンさんに気付くとすぐ門を開けてもらえた。


 やっぱりアルテンさんは、凄い人なんだなと思った。


 街の中に入り、そのまま真っ直ぐ道のりを沿って行くと、冒険者協会の建物が見えた、そしてその横には商業組合があった。


 アルテンさんは協会の倉庫から、武器を取り出す手続きをする為、冒険者協会の中に入って行ってしまった。


 しばらく時間が掛かるそうなので、出発前に寄ろうと思っていた、商業組合に行く事にして、荷馬車は近くにある繋ぎ場に止め、建物の中へと入った。


「あ、お客様ですか?こちらへどうぞ」


 組合に入るとすぐに職員の人が駆け寄って来て、窓口に案内された。


 中は外の露天などが入り混じる広場とは違い、全てが整っていた。


 床や壁は大理石で出来ていて、所々に煌びやかな宝石で装飾された置物や、絵画などが飾られているので、ここが商業組合と知らずに入ったら、美術館だと思っただろう。


 中央には大きな石像があって、それは大賢者をモチーフにして削られた作品だ。


 この世界では大賢者が神として崇拝されていて、どこの街にも1つは大賢者を祭っている教会がある。


「それで、お客様は何用でこちらへ?」


「僕は最近移動販売を始めた者ですが、物を売る時の相場をあまり知らなくて、教えて頂けませんか?」


「えぇ、良いですよ、それならこの商業組合が作った冊子をあげます、ここに大体の事は書いてありますのでお読みください」


「ありがとうございます!」


「ところでお客様、組合から許可を貰って販売していますか?」


「いえまだ何も売っていないんですよ、って許可?」


「はい、ここ商業組合が許可を出さないと、物を売れない地域などがあるのです、なので商業組合からの許可書が無いまま、物品を売ってしまうと犯罪になります」


「それってどこで受け取れますか?」


「ここでも受け取れますよ?受け取りますか」


「はい、是非お願いします」


 思い付きで始めた移動販売は、実は許可が無いと売れない場所があると分かった。


 なので、今からその許可証を受け取ることになった。


「では、この紙に記入してください」


「これは?」


「こちらを記入していただいて、商業組合が出すクエストにクリアしていただければ、晴れて自由に物を売れる様になるという訳です」


「わかりました」


 紙には色々書いてあったけど、要約すると、許可証を提示せずに物を売ってはいけなくて、それをしないとたとえ許可が要らない場所でも、1年間物を売る事を禁止される。


 そしてもし禁止期間中に物を売ってしまうと、生涯どこへ行っても物が売れなくなり、商業組合も使えなくなってしまう。


 許可証には特定の違反を検知する魔法が掛けられていて、上記の違反をすると商業組合に連絡が行く仕様らしい。


 許可証を受け取る為のクエストは、魔物の討伐だった。


 なぜ商業組合で討伐のクエストなどが、指標になっているかの理由としては、昔商人しか狙わない盗賊団がいて、その時に商業界隈がかなりの痛手を負って、身を守れなければ、商人になる事は出来ないという、商業組合の考えに基づいた条件だと職員の人は言っていた。


 その考えのせいで、商業組合に所属している大半の人間は、そこら辺の冒険者よりも強くて、最近は意外にも武闘派集団というイメージが付いている様だ。


 討伐内容は、Cランクの魔物1体の討伐で、商業組合が派遣する監視員を連れ、商人が1人でそれを討伐しなければならないという条件付きであった。


 駆け出しの商人は、大抵ろくな訓練も積んでいないので、ここで躓く人も多いのだと。


 Cランクの魔物は昨日襲われた、レッドベアーなどがいるランク帯で、最高ランクのAランクから3番目ともあり、一端のBランク冒険者が苦戦するレベルである。


「それでは頑張ってください」


 職員に見送られ、僕は討伐クエストに行く前に、アルテンさんに武器を貰う為に、冒険者協会に入った。

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