第7話 次世代VRゲーム
「な、なんで先生がここにいるんですか!?」
まさかおばあちゃんの知り合いが先生だなんて、予想だにしていなかった展開についていけない。
「実はね、私と君のおばあさん
「そうだったんですか。そんなこと全然聞いてなかったから驚いちゃいました」
「蒼ちゃんすまんの。まさか蒼ちゃんとこいつが知り合いだなんておばあちゃん知らなかったもんでの」
「ううん、いいよ、そんなこと分かるわけないもんね。でもおばあちゃんは先生となに話してたの? あっ、久しぶりに会ったから近況報告とか?」
「あ、あぁ、う~んと、それは~、え~っと……」
「先輩、ここは私から」
「う、うん、頼む」
何故だかしどろもどろになっているおばあちゃんの代わりに、メル先生が今回おばあちゃんが先生に会いに行った理由を話してくれた。
「まず事の発端は今君が手にしている眼鏡だ。実はその眼鏡は次世代型VRゲームの筐体なんだ。実は私は医師以外にもゲーム開発を手掛けていてね。君のおばあさんにも色々と手伝ってもらっていたのだよ」
「え、そうだったんですか? でもおばあちゃんがゲームするなんて初めて聞いたんですけど。おばあちゃんゲームなんてやってたんだ?」
「えっ!? あ、あぁ、うん、麻雀とか好きじゃよ。あ、あと花札も好きじゃ……」
麻雀と花札…… いや、ゲームっちゃあゲームだけれども。
う~ん、どうもおばあちゃんの様子がおかしい気がする。なんだか落ち着きがないっていうか、あたふたしている気がする。
(おい! なんじゃゲームって! そんな話するんならなんで先に言っとかんのじゃ! わしゃゲームなんてやったことないんじゃぞ!)
(いや、適当に話を合わせてくださいよ。お孫さんあなたのこと怪しんでますよ? かの有名な志岐谷紅がそんなんじゃ情けなさすぎますよ)
(うるさいうるさいうるさい! 全部貴様のせいじゃろがぁ!)
「どうしたの?二人とも。なにこそこそ話してるの?」
「え、い、いや、なんでもないぞ。ゲ、ゲーム談義じゃ」
「あぁ、そうだとも。次に作るゲームのアイデアが突然沸いてね。すぐにでも彼女に伝えなくてはと思っただけさ」
「はぁ……」
怪しい。二人ともなんか怪しい。でもまっいっか。なんかあたふたしてるおばあちゃん見てるの楽しいし。
「話題を戻そうか。それでだ、私が作成した次世代型VRゲーム機を先輩、あぁ君のおばあさんのことだが、彼女にチェックしてもらったのだよ。そして彼女が私宛に返送する際、彼女は間違えて君の住所宛てに、その荷物を送ってしまったというわけだ」
「なるほど。まぁスジは通ってますね」
(おい! なに勝手にワシがミスったみたいな話にしとるんじゃ! 全部貴様が悪いのに! なんでじゃ! これだとワシが蒼ちゃんに怒られるじゃろうがぁ!)
(大丈夫ですよ、先輩。彼女はそんなことで怒ったりしませんよ。まぁいいじゃないですか。どっちも悪いということで。一蓮托生ですよ)
(うるさいうるさいうるさい! わしゃ1ミリも悪くないじゃろがぁぁぁ!!)
「さっきからどうしたの? 二人とも。なんかこそこそ話ばっかしてさ。なんかあたしに隠し事でもしてるの?」
「え、い、いや、ま、まさかぁ、おばあちゃんが蒼ちゃんに隠し事なんてするわけなかろうがぁ。コイツの香水が臭いから文句言っとっただけじゃよ」
「あ、あぁ、そうだとも蒼君。今日はいつもと違う香水をつけてきてね。しかも少しばかりつけすぎたみたいだ。申し訳ないね」
「い、いや、別にいい匂いなんでいいですけども」
でも最新のVRゲームかぁ。VRゲームってあたししたことないからよくわかんないんだけれど、あんなにリアルなものなのかなぁ。どう見ても現実としか思えなかった。匂いだってあったし、水だって飲んだ。普通に冷たくて美味しい水だった。いつの間に現代の技術はあそこまで進歩してたんだろう。
「えぇと、それでだ。あの筐体は特別でね。最初にユーザー登録をしてしまうと他人には使用不可になってしまうのだよ。それでだ、そのユーザー登録を解除するにはゲームを全てクリアする必要がある。だから蒼君には申し訳ないのだが、このままあのゲームを進めてもらいたいのだよ」
う~ん、なんか余りにもリアルすぎて怖かったんだよなぁ。でも勝手に眼鏡掛けて迷惑かけちゃったのは事実だし。
う~ん、どうしたものか……
「どうだろう? お願いできないだろうか?」
どうすればいいの? もしかして断ったら大変なことになっちゃったりする? あ~! こんなことなら眼鏡なんて掛けなきゃよかった。一時の好奇心がこんな事態を引き起こすなんて。
でも乗り掛かった舟だ。そもそも偸子がどうなったのかも気になる。
「先生! 分かりました! あたしに務まるかわかんないですけど、やってみます!」
「おぉ! 素晴らしい! 有難う蒼君。私も最大限バックアップするから安心してくれていい。大船に乗ったつもりでいるといい」
「は、はぁ」
一旦話はここでお開きになった。先生が今回の騒動のお詫びにイタリア料理屋さんでご馳走してくれると言うので、ついていくことにした。
◇
「なんじゃ、この小洒落た店は。なんか店の中が暗いし」
「先輩はイタリア料理はあんまりですか? 普段芋とか草とかしか食べてなさそうですもんね」
「あぁ!? バカにするんじゃない! ワシだって外国の食いもん食べとるわ! ラーメンとかカレーとか」
「はははっ、おもしろい冗談ですね、先輩」
「な、なにをぉぉぉ!!」
「お願い、おばあちゃん静かにしてよ。恥ずかしいから」
「え、あっ、あぁ、すまんの、蒼ちゃん、でもワシは悪くないぞ? 悪いのはこのクソじゃ!」
とても素敵なレストランに響くおばあちゃんの怒声。かなり恥ずかしいけどおばあちゃんがなんだか楽しそうだからいいか。
「なんでも好きなものを頼みなさい。支払いは私がするからね」
「じゃあこの店で一番高いもん持ってこい! あっ! ここにいる客全員分奢ってやるか!」
「先輩は別会計ですよ」
「なんでじゃ! 今回の件は貴様が全部悪いのにぃ!」
「おばあちゃん、お願いだから……」
「あ、すまん……」
そんな感じでお食事会が始まった。
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