ロボ娘はネイルをサンダーで磨く

半私半消

彼女たちは輝いていた(金属光沢で)

「おはよー……」

「どうしたの? 午前中いなかったけど」

「さっきまで整備工場ほけんしつ行ってた……」

「え!? 何!? 熱でもあるの?」

「いや大丈夫、それよりグラインダー持ってない?」

「? サンダーじゃなくて?」

「ネイルケアもしたいけど、先にささくれ治しておきたいなって」

 そう言うと彼女は、指を開いて両手を前に出した。確かに爪近くがめくれてしまっている。しかしめくれているのは皮膚ではなく、金属である。ささくれと呼ばれているが、実際には切削加工した後の削りくずのようなのが付着していた。

 その傷だけに着目せず、手の全体をよくよく見てみれば、女性の手のようにほっそりとしたシルエットではあるものの、サイズとしては成人男性のそれより二回りほど大きいと分かる。


「何その傷、どしたの?」

「いやー登校中にさ、コンビニ寄ろうと思ったらさ」

「うんうん」

「よそ見してたんだか知らないけど、バイクが店内に突っ込みそうだったんだよ」

「あー……それで思わず止めに入っちゃったと」

「バイク程度ならヨユーだと思って、掴んで止めたのが失敗だったなー」

「馬力なら負けないだろうけど、無茶したね」

整備工場ほけんしつだと脳内回路とかの内側しか診てくれなくて、ささくれ程度なら後日換装しろって。ありえなくない!?」

「は~!? 指先ボロボロのまま一日過ごせってこと!? 気分下がりっぱなしじゃん!」

「そうそう! なんとか応急処置できないかなって」

「わかった、あとで他のクラスからグラインダー持ってそうな人探してくる」

「ありがとー、一応サンダー試してみるわ」

 そう言って、彼女は高速で振動しているサンドペーパー(紙ヤスリ)を取り付けたパッドを自身の指に当てる。しかし表面が綺麗になるだけであり、やはり砥石が回転しているグラインダーでないと、バリは取れなさそうであった。

 ささくれを諦め、そのまま爪を磨くモードに移行する。文字通りの鉄の爪アイアンクローが輝きを増していく。若干表情も明るくなったように見受けられる。

 ヒトもロボも、自分磨きは欠かせないのだ。

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ロボ娘はネイルをサンダーで磨く 半私半消 @hanshihanshou

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