第21話、ずっと続いていくもの、共に或る6人を眺めていたい
しばらくして、『家庭科室』から、タカの一番弟子だと言って憚らないユートが帰ってくる。
その間、タカの看病のおかげでだいぶ落ち着いたエフィのことを、そんなユートと後輩組に任せて。
マーサーたちはタカを中心にこれからのことについて話し合う流れとなった。
「それじゃあ、僕たちは、これから『職員室』に向かえばいいんだね?」
「そうですね。ただ、その前にみなさんに話しておかなくてはならないことがありますが」
マーサーの言葉に頷きつつ、タカは改めてそう答えた。
「話って?」
「はい、今回の魔物の襲撃の動機について、です」
「なんだよ、もう分かったのか?」
呆れつつもタカなら当然だろうな、なんて顔でトールが促す。
「この学校のどこかに強大なもの、たとえば世界を変えてしまいかねない物を封印している部屋があるらしいんです。彼らの、いや彼らを統括している何者かは、それを狙っているんじゃないかと思われます。加えて、それの封印を解くにあたって邪魔になるであろう存在を消すこと、それが今回の魔物たちの目的なのでしょう。『職員室』で起きた出来事を判断する限り、おそらく間違いないことだと思います」
「その封印してるものってなんなの?」
続くマーサーの問いかけ。
単純に知らないからこそついて出たものだが、どうやらカズやトールには心当たりがあるらしく渋い表情をしている。
タカは一つ頷き、言葉を選ぶように言った。
「一言で言えば、『死』でしょうか」
「なんだと? まさかそんなものが学校に……」
それを聞いてそれが何であるのかすぐに気づいたらしいケイがそう言って唸る。
「もったいぶるなぁ。何だか聞きたくなくなってきたけど」
「つまり、あれだろ。黄泉へ続くの扉とか、そんな感じのものだろ?」
眉を寄せるマーサーに構わず、あっさりとそう口にしたのはトール。
「トールのくせに生意気だぞ。何でお前がそんなこと知ってるんだよ?」
どうやらカズはトールが知っていたのが気に喰わなかったらしい。
そう言うカズも、初耳だという雰囲気はなかったが、渋い表情は変わらない。
それでも一寸たりとも美貌が損なわれないのだから、大したものだとマーサーは内心で思っていたが。
「うーん、まあ家の教育って奴かな?」
「けっ、オレにはどうせ、家族なんていねえよーっだ!」
「まあまあ、カズ、僕も分からなかったし」
そう言って、マーサーはカズをなだめる。
トールもカズも本気じゃないことを分かっているのか、繋ぐ形でタカが続ける。
「まあ、その封印云々の話はいつでもできるので、とりあえず置いときましょう。最後になりますが、実は今回の出来事が起きる前、校長先生からの伝言があったんです。それは、『召集の際には五人の同世代の生徒を連れて我のもとに訪れよ』というものでした。初めは、集まった皆さんの中から五人を選ぶものだと思っていたんですが……」
「まさか、こうなることが、分かってたってのか?」
確か、この『ユーライジア・スクール』の校長先生は、【時(リヴァ)】魔法の使い手で。
そんな予言めいたことが、きっと校長先生ならば可能なのだろう。
それならあもっと早くあらかじめ教えておいてくれれば良かったのに。
そんな不満も含んだ、カズの呟き。
「ええ、おそらくは。確か校長先生は、先を予見する能力をもっていると聞き及んでいます。となると、ユートたち後輩組を除くとすると、必然的にここにいる私、トール、カズ、マーサー、ケイ、そして……」
「最後の一人はダイスってことか」
ダイス・アーヴァイン。
ケイの親友にして、遠方ユーミール大陸にある、アーヴァイン国の王子だ。
ケイとともに、ユーライジアスクールに留学に来ている彼も含めて、六人でよくつるむのが常であった。
まぁ、同学年の友人と言う意味ならば。
6人目……マスコット的なキャラがもう一人、一匹いたりするのだが。
飼い主扱いのトールとセット扱いな部分もあるので、ここでは割愛する。
「ええ、そういうことになりますね、今の状況だと。とりあえずダイスに会って、『職員室』へ行ってみればまた状況が変わるかもしれませんが」
「行ってみて、ね。確かにダイスの奴、ここ最近様子がおかしかったからなあ」
「……そうだな。今回の魔物たちの襲撃は、『従霊道士』のあいつにとってつらいことだろうからな」
最近急に付き合いが悪くなったんだよな、なんてぼやくカズと、ケイの言葉を受けて、タカは頷きつつ改めてケイとここにはいないユートの方を見やる。
「そのことを、含めてと言ったら少し語弊があるかもしれませんが、ケイとユートにお話があります」
一体どのような話であるのか。
ある程度は予想がついているらしいケイは複雑な表情を浮かべていて。
「と、言うわけなんでマーサー達にはこれからの準備をお願いしますね。とにかく学校は広いですし、旅をする時と同等の準備が必要になるでしょうから」
「うん。分かった」
「話って、オレらが聞いているとまずいのか?」
マーサーは元よりそのつもりよ、とばかりに頷いたが。
カズはタカのお話の内容が気になるらしく、思わず、といった様子で声を上げる。
「いえ、そんなことはないんですが、二人だけのほうが話しやすいのは確かですね」
「ま、そりゃそうか。準備は全員でしたほうがいいかと思ったけど、しゃーねーな」
「んじゃオレらは席外しますか」
トールが最後にそう締めて。
三人は準備のためにその場を離れたのだった……。
(第22話につづく)
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