第42話 おいおい、それって


上品な笑いから

ケラケラと笑い出したルミエラを見て

ジークの顔にも笑みが移る。


「ルミエラさん。笑いすぎ。

あ、敬語使った方がいいのかな?、、ですか?」

ジークの笑みは真顔になった。


「よいよい。元であるし今ではルミエラだ。

そんなことは気にしない。」

笑いを引きずりながらルミエラは話す。


「この場で談笑もよいのですが。

場所を変えませんか?」

現女王のアリアが入ってくる。


「おぉ、そうだったな。

案内任せよう。」

ルミエラからの発言に

全員で移動を始めた。


森を抜けた先には

神聖さを感じる大木と

連なる木々に作られた

木造の家々

自然と一体になっていると

いうのが一番しっくりくる

大木の目の前には

城と呼んでいいのだろうか

大きな建物があり

案内されるジーク一行


ジーク達が気になるのか

エルフ達が物珍しい物を見るような

視線を向けていた。


木造と思わしき建物へと入ると

内装は豪華で城と呼ぶにふさわしい。

基調なのであろう調度品などが置かれており

キョロキョロ見ていたジークは

大きな扉の前まで案内された。


「少し、お待ちになって。」

アリア達は裏の方へと回った

準備などがあるのだろう。


ジーク達は声がかかるまで

扉の前で待っていた。


何も言われずに

扉が開き目にした光景は

段々になっている一番上の

玉座に座るアリア

左右を騎士

下にはエルフの代表たちだろうか

ジーク達一行を見ていた。


ジーク達は中へ入ると

片膝をつき頭を下げた。

ルミエラも元女王であったが

同じように頭を下げた。


「戻ってくる気はないのですね。」

ボソッと小声で言ったアリアの言葉が

ジークの耳へと届いたが

今は面会の場

知らぬ存ぜぬを決めようと

内心思ったのだった。


「面を上げよ。」

その言葉にジーク達は

顔を上げた。


「何用で参られたのか。」

アリアの雰囲気が変わる。


ジークが話そうとする前に

「女王陛下、この度訪問したのは

アルカナイン領との交流提案をしにまいりました。」

ルミエラが話し出す。

周りのエルフもざわざわとしだす。


「交流?とな?アルカナインか、、、。」

後半はほとんどの者には聞こえない声量で

アリアの質問がルミエラにされる。


「えぇ、アリア女王陛下は

今のエルフの現状をどう思っておられますか?」

ルミエラの言葉が少しきつくなる。


「今の状態は平和でとてもー」

「停滞」

アリアの言葉を遮り

ルミエラが言葉を話す。


「女王陛下の言葉を遮るとは何事だ!!

元女王とは言え、あなたは里を出た身!失礼であるぞ!!」

一人のエルフが騒いだ。


「ルイ。よい。今でもルミエラには

教えを乞う身、構わん。」

アリアの言葉にルイと呼ばれたエルフは

頭を下げるが納得していない雰囲気を感じた。


「ルミエラ、停滞といったな。

どういう意味だ?」

アリアが質問する。


「現状維持、すなわち停滞。

魔法に関しての知見はあるが

それだけ、我らには応用がない。

このままでは我らは取り残されてしまう。」

ルミエラは真正面からアリアを見た。


「そうか、時代の進歩か、、、。」

アリアには何か思うものがあったのだろう

少し唸っていた。


「彼、ジークフリード=アルカナインは

アルカナイン公爵のご子息

身体強化魔法を使え

さらには各種属性魔法を使える神童。

自ら魔法開発までしている。」

ルミエラの言葉に周りのざわめきまで

大きくなる。


「なんと、この少年がか、、、。」

少し驚いた顔をしているアリア。


「ジークはすごいぞ。

ジークを出すんだ。」

ルミエラの視線がジークに向き

ジークは売ろうと思ていたクッキーを渡す。


「食べてみてくれ。」

ルミエラは魔法でクッキーを半分に割り

片方を口に運びながらアリアへと渡すよう命じる。


アリアがクッキーを食べると

身体強化の魔法が発動したのが分かったのか

驚いた顔をしていた。


「これは!こんなことが、、。」


「これはジークが作ったものだ。

これの詳しい製法は秘密らしいが

魔石に身体強化を付与し

砕いたものを入れているらしい。」


「そんな!魔法石は砕かれた時点でー」

「そうなのだ。普通付与されたものは

効力を発揮しない。」

ルミエラの言うとおりだった。


魔石は魔法や魔力を留めておくことができるが

砕かれた時点で霧散してしまう。

ジークはどうにかできないかと

エリスと夜な夜な研究を重ねていた。

原理は単純、霧散する仕組みは

砕けた魔石に対する魔法含有量が

砕けた瞬間に合っておらず

余剰分が出ていくときに

全て出て行ってしまうことが判明した。


なら砕けた魔石一つ一つに

適正な魔法・魔力量を込めればいい

粉になったとしても

一粒でも魔石だと考え付与を行うこと

又は砕け散る際に魔法含有量を調節することで

実験は成功した。

今では魔石が砕かれたとき

自動的に魔法含有量を調節する

魔法の開発に成功したため

その魔法を付与した後に

砕くだけでいい。


「このようなことを

この少年が、、、。」

アリアはジークを見つめた。



ジーク

君には科学者の称号を与えよう。

いつもお読みいただきありがとうございます。

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