第21話 鏡乱の回廊(8)

「おう、ジーク。何で泣いてんだ?」

世界樹の祈りの光が収まり少し経つと

寝起きかの様にジェイが目を覚ました。


お前!!ふざけんじゃねーよ!!

心配させんな!アホが!

師事して二か月後に

なにがお前の行く先を見てみて―から

お前のそばで見届けてやるだ。ばーか!

カッコつけやがって

一番危険な状態だったんだぞ

この酒浸り親父!


「なに?!俺はまだ親父って歳じゃねーぞ?!

まだお兄さんだ。」


どうやら動揺して僕の心の声が

溢れてしまっていたみたいだ。


「心配かけさせやがって。あほの子ジェイ。」

そう言いながらトンッと

手をグーの形にしてジェイの左胸にぶつける。


「すまねぇ。少し昔の女に

引っ掛けられたみてぇだ。」

穏やかな笑顔でほほ笑むジェイは

どこかすっきりしていたように感じた。


ジェイから相談というか

今まであったことを説明され

最愛の人を失った過去を聞いたときは

僕の胸は苦しくなった。

それを行った奴も許せない。

話を聞くとそいつは

上位貴族だという話だ。

やはりこの国は既に腐りかけている。

上位貴族を筆頭に未曾有の危機にさらされているんだと

改めて実感できた。


「おいおい、そんな顔すんなよ。」

ジェイは僕の頭に手をポンと置くと

優しく微笑んだ。


「これからのお前が正してくれるんだろ?

全く、俺らのことになるとこえーんだよ。」

にへらと笑うその顔は

まるで兄の様に感じた―。



ジェイを連れて空間を歩くことしばらく

座りながらうつらうつらしているエリーを見つけた。


「こんなよくわかんねー空間に居るのに

眠気がきているのに驚きだ。」

ジェイの顔は今すぐにでも

え?!を言いそうだった。


それもそうだ

エリーはジェイと違い

この空間で精神と戦っていたのだ。

負荷がかなりかかっていたと思うのが

正解だろう。

ジェイの方が命的には危なかったが

精神世界での出来事の為

体的には元気なんだろう。


「仕方ないよ。ウィス?この空間は安全なの?」

今日のMVPに話しかけると

大丈夫!とのことなので

ジェイに少し休みを提案しようとした矢先。


「おい、そのウィスってのはなんだ?

それに、なんだ?そのネックレス。

世界樹の祈りはどうした?」

ジェイが珍しく質問攻めをしてくるので

これまであったことを説明したのだが。


「はぁ?!アーティファクトを手に入れただと?!」

空間にジェイの声が響き渡りエリーは起きてしまうのであった。


あれから起きたエリーにも

ジェイと同様の話をして

死せる英知の結晶がウィストゥラという

レヴィルエクスと同じ

生きているアーティファクトだと言うこと

それに加えて何やらウィスに危険があったから

僕が変な空間から抜けだした瞬間に

無理やり僕をウィスの所に連れてきたことを説明した。


「ジーク。あなたはアーティファクトから寄ってくる

能力でもあるのかしら?」

半目でこちらを見るエリーが可愛いが

僕も少しはそんな気がして否定できない。


「ちょっと休憩したらこの空間から出ようか。

少し心配だし。」

僕が提案すると二人は頷き

しばしの時間が経過した。


急にウィスが光り

びっくりしていると。


「え?!変な人たちがいっぱいいる階層にしか出れない??」

焦っている感じがウィスから伝わってきており。

落ち着くように念じる。


どうやら、まだ何かしらの制限がかけられているようだ

ウィスを狙ったやつも正体はいまだに分からないし

特殊な力を持っていると考えられる。


ウィスが伝えてきた

変な人たちは

十中八九ディアブロの可能性が高い

この空間から出ればすぐに戦闘が始まる。

そのことを二人に伝え。

ぼくはレヴィを携える。


「全く、いろいろありすぎだ。

しばらくダンジョンはこりごりだぜ。」


「私もよ。終わったら、少し休んだ方がいいわ。」


二人の言葉を聞きながら空間を出るのだった。

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