第9話 各々の事情~ルイス=カルティ~

ルイス=カルティ


私は小さいころ王子様に救われました。

小さくても凛としていて

正義感のある私の勇者様。


お父様の仕事で王都に来ていた私は

別邸で過ごす生活に飽き飽きしていた。


「ねぇ!王都には市場や

見るところがいっぱいあるんでしょ?!

どうしていけないの?!」

子供だった私は駄々をこねるように言っていた。


「当主様がお戻りになられましたら

どこへでも連れて行ってくれるそうですよ。

それまではこちらでお過ごしください

とのことです。」

もう何回目かもわからない問答に

困り顔の執事が言う。


私は少しムキになって部屋へと戻っていった。


部屋の窓を開け外を見る。

少しの風と人の話す声。

私は我慢できずに最近覚えた魔法を使い

窓から飛び降りた。


初めて見る王都はすごいところだった。

人が多くて楽しそうで見たこともない物や

初めて見る野菜や果物すべてが鮮明だった。


色々な場所を見て回っていた矢先

道に迷ってしまったんだと気づいた。


ここがどこかもわからない。

辛うじて分かるのは家の方角くらいだ。

少しの恐怖心が沸き上がってきたとき。


「そこのお嬢ちゃん。迷子かい?

家はどこらへんなんだ?

おじちゃんが案内してあげるよ?」

優しそうな顔をしたおじさんが声をかけてきた。


私は急に声をかけられたことで

びっくりしてしまい

余計なことを言ってしまった。

「んとね、場所は多分あっちらへんだと思うの。

お父様が今お仕事中だから内緒で帰りたいの。」

指さす方向は貴族の別邸の多いエリアだった。

私はそれがどういう意味を成すのか

わからずに言ってしまった。


「そうかい。それは、内緒で帰らなきゃだねぇ」

この時のおじさんの笑みは

先ほどとは違う笑みだった。


おじさんについていき内緒だからという理由で

狭く暗い路地を連れていかれてしばらくたったころ


おじさんの先に2人組のおじさんたちがいて

合流したおじさんは何かを話しているようだった。

「へへ、それは本当か?」

「あぁ、間違いねぇ。」

「運でも回ってきたか。」

何やら話しているがうまく聞き取れない

急におじさん二人がこちらに近づいてくると

両端の腕をつかまれ口をふさがれた


「うるさくするんじゃねーぞ。

じゃなきゃお父様には一生会えないと思え。」

このときはじめて私は

自分が何をしでかしたのか気づいた。

恐怖と周りの人への申し訳なさと

色々な感情が入交り

涙が出てきてしまう。

もうこのまま死んでしまうかもしれない。

そんなことを考えていた矢先


「おじさんたち、何してるの?」

私の後ろから優しそうな声色の男の子の声が

聞こえた。


おじさんたちは慌てふためいて

「こ、これは、この子と遊んでたんだよ」

等と言っているが男の子は矢継ぎ早に

「女の子の体は気安く触れていい物じゃないって

母様がいっていたよ?

それに、さっき裏の通りを入るところから

ずっと見ていたんだよ?

おじさんたちは悪い人達なんだよね?」

男の子の顔つきが変わり声色も低くなっていた。


「チッ、このガキもつれて行くぞ。

見られたんなら面倒なことになる!」

私の腕をつかんでいた男がその子の方へ走り出すが


「そこの人~!!助けてください~!!

女の子がさらわれそうです!!

僕も襲われそうで~す!!」

とても大きな声で騒ぎ出した。


不意に聞こえた大きな声に男たちは一瞬止まり

急いで後ろを見る。

その隙に男の子はすぐ近くまで走ってきて

私の腕をつかんだ。


「行くよ、走って。」

私は言われるがままに夢中で走った。

ある程度の大通りまで出ると男の子は私の手を放し


「知らない人について行っちゃだめなんだよ?

これからは気を付けてね?

おうちはどこ?貴族の子?」

質問をいっぱいされた。私は記憶を頼りに

男の子に説明し無事に家の前までたどり着いた。


「ルイス様!いらっしゃったら

声を出してください!ルイス様〜!」


私の名前を呼びながら道の端から姿を表し

私の姿を見た執事は急いで私の元まで来て

「ルイス様!何をしているのですか!

どこに行っていたのですか!

探し回っていたんですよ!

ベリル様も予定を早めて

こちらに向かわれるそうですよ!」

怒った執事は言葉をはさめない速さで話す。


「この子が迷子になっていたのを

悪い人たちが誘拐しようとしていたんだ。

この子が外に出てしまったのも悪いことだけど。

誘拐しようとしていた人たちが一番悪いんだよ?」

なにやら男の子は見当違いな話をしていた。


「何はともあれ、ありがとうございます。

ルイス様を助けていただいて。

お名前を頂戴してもよろしいでしょうか?

ご両親にもお詫びをさせて

いただきたいのですが、、、。」

執事は頭を下げた後神妙な面持ちで尋ねた。


「僕はジーク!

ジークフリード=アルカナインだよ!」

その言葉に執事はぎょっとして


「アルカナイン公爵の

ご子息であらせられましたか!

この度は本当にありがとうございました!」

先ほどの礼とは違い90度の礼をする執事

どうやらこの子は私よりも偉いのだと感じた。

そうこうしているうちにお父様の馬車が

家の前に止まる。


「ルイス!無事だったか!」

馬車から飛び出してきたお父様に抱きしめられる。


「く、苦しい。お父様」

ぽんぽんと背中をたたき

抱擁を緩めるように合図をする私


「す、すまん。それでこちらの男の子は、、、、?!

もしや!?ジークフリード様?!

ジークフリード様が

うちのルイスを見付けてくれたのですか?!」

お父様は目を丸くして騒いでいた。


「えぇ、しかも

ルイス様が誘拐されそうになっていたところを

助けたのだそうです。」

執事はお父様を見ながらそう言った。


「ジークフリード様

私はベリル=カルティと申します。

この度は私の娘を

お救いいただきありがとうございます。

このことは御父上であらせられます。

カナン様にご報告と

謝罪に伺わせていただきます。」

綺麗な礼をするお父様に倣い執事も私も礼をする。


「ベリル伯爵、顔を上げてください。

父上が偉いだけで僕は偉くないので。

ジークフリード様なんて長いよ。

気軽にジークって呼んでよ!

それに、謝罪よりもお礼がもらえれば

僕はそれだけでいいんだ。内緒で外に出てるのも

バレたら、怒られちゃうよ。

お礼は今貰ったし。気にしないで下さい。」


先ほどまでの優しい男の子ではなく

凛とした男の子が目の前にいた。

この時私は初めて人に惹かれるということを

理解した。


私を助けてくれた勇敢で優しくて凛とした王子様。

私はこの人のそばにいたいと同時に思ったのだ―。




「、、ちゃん?、ルイスちゃん

元気にしていたかな?突然来てもらって悪いね。」

昔のことを思い出していたところに

カナン公爵の声が耳を打った。

はっとした私はカナン様のほうを向き。


「い、いえ、少し昔のことを

思い出しておりました。失礼しました。」

ペコっとお辞儀をしカナン様の顔を見る。


「そっかそっか。疲れているのかな?

無理は禁物だからね?それでなんだけど。

実はね、ベリル卿からルイスちゃんを

領地に戻してほしいって言われてね?

何か聞いていたりするのかな?」

カナン様はニコニコしながら話しかける

「私は、何も知らされておりません。」

突然どうしたのだろうと疑問に思う。


「やっぱりそうだよね?う~ん、、、

どうしようか、、、。

実はねベリル卿の領地から

勇者が誕生したと報告を受けていてね。

その件が関係しているんじゃないか

と思っているんだよね。」

勇者、その言葉を聞き体が強張る。

勇者が誕生するということは

よくないことが起きるということ。


「そ、それで、私はどうなるのでしょうか?」

嫌だ、ジーク様のそばにいたい。

私の王子様のそばから離れたくない

そんな思いが心に渦巻く


「とりあえず、ルイスちゃんには

ベリル卿の下に戻ってもらうしかないかな

とは思っているんだ。

行かせたくはないのだけどね。」


無慈悲な言葉は私の心をキュッと締め付けた―。


急に決まった領地戻りの為

せわしなく荷物を整理していたルイスは

馬車に一通りの荷物を積み終わり安心していた。



公爵邸に目を向けると

楽しそうに笑う三人が見えた。

ジーク、エリス、ジェイドだ

何かをしながら楽しそうに笑う三人を見た私は

もやもやとした気分になった。


(私がいないのにジーク様は笑っている。)

(ジーク様のそばは私だけだったのに、、。)

(私はいらないの?)

(ジーク様のそばにいちゃいけないの?)

(なんで?、、、私もそばにいたいのに、、。)





























(ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様ジーク様)




ルイスに初めて黒い感情が芽生えた瞬間だった―。



本来であれば、仲の良かったジークと

ルイスを見ていたカナンは

ルイスをジークのそばに置くことを

決めるのだが

エリスとジェイドがジークを気に入り

専属までになったこと

前倒しで師事することになったこと

これによりカナンは別の決断を下す。


シナリオは破壊された。

既に原形のないシナリオは今後どうなるのか。

この先はだれも知る由もない。



さぁ、やってまいりました!

こういうの憧れてたんですよ!

ルイス最高だよ!そう思いません?!

ほんとは過去とこれからの動きを

分けたかったのですが

キリのいいところで終わらそうとしたら

長く&一気になってしまった。

小説フォローがもう少しで100人!!

頑張って面白くするぞ~

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