第6話 各々の事情~ジェイド=ブルックナー~

ジェイド=ブルックナー


全てに疲れ、やさぐれたジェイドは

行きつけの酒場で今日も飲んだくれていた。


「お前さん、そろそろ定職に就いた方が

いいんじゃねーかぁ?」


グラスをふきながらこちらを見るマスターがいた。


「はっ、こんな飲んだくれに

仕事が紹介できるってのかよ」

ジェイドはぶっきらぼうな対応をする。


「まぁ、それもそうなんだが。」

マスターは酒の棚を整理しながら話を続ける。


「俺はもう疲れちまったんだよ。

派閥だのなんだの。

若いだの前例がないだの

かたっ苦しいことばっかだ。

あいにく、給料はよくて使う暇もなかったから

こんなことしてられるんだけどな」

酒が空になったグラスをトンと置く。


「だが、さすがになぁ、俺も心配-」

マスターの言葉を遮るように

入口のベルが小気味いい音色を奏でた


「やっぱりここにいたんだね、ジェイ」

その声の主は胡散臭い顔をしながら

近づいてきた。


「チッ、酒がまずくなる。

来んじゃねーよ。俺の聖域に」

ジェイドは嫌そうな顔をしていた


「そんなこと言わないでほしいな。

何だか疲れた顔をしているよ。

ちゃんと寝ているのかい?」

笑顔を崩さず心配するような顔をする怪物


「お前が来たからだ、全く。

あの話なら断っただろ。

そう何回もくんじゃねーよ。」


「そこを何とかお願いできないかな?

僕の息子が成長していてね!

すぐにでも君には来てもらいたいんだ!

お願いだよ。何回でもお願いするよ!」

そう言いながら本当にすがるような

演技をするカナン


「チッ、半日だけだ。そいつの心意気、

センスすべてを半日で決めてやる。

だからさっさと消えろ。」

ジェイドは威圧感を出しながら怪物の顔を見る。


半笑いだったカナンの顔は真面目な顔になり

ジェイドの威圧感を超える

不思議な圧迫感を醸し出した

「大丈夫、気に入ると断言するよ。

ジークは君をないがしろにしたりしない。

まっすぐぶつかって君の心を楽にしてくれるよ。

これは絶対だよ。

運命すら感じさせてあげれると思うよ。」

急に真面目な顔から

親の顔になったカナンは優しい笑みを向ける。


「わーったよ。この親バカが。

化け物が親バカなんてどんな冗談だ。」

そう言いながら手をしっしとするジェイド


「マスター次は飲みに来るよ」

そう言いながら親バカは扉を開け去っていった。


「行くのか?」

マスターは空のグラスを指さし

暗にお代わりをするのか聞いてくる。


「やめだやめだ、あんな奴と話した後なんざ

酒なんてまずくて飲めたもんじゃねーよ。」

そう言いながら数枚の硬貨を置くと

ジェイドは小気味いい音色を奏でた―。



膝をつき、項垂れ、肩で呼吸している子供を

見下ろしているジェイドは

少し感心していた。

(腐ってもあいつの子供か。

これは素直にさすがだな。)


ジークはまっすぐな少年だった。

言われたことはすぐに実行し吸収も早い

自分の才能など石ころ同然なのだと

理解させられる天才、神童。


(少し折ってみるか)

10歳の子供に行うべきことではない

と思いながら

ジェイドはジークをふるいにかけた―。



「その結果がこれか。

まさか身体強化まで使って来るとは想定外だ。

本能か?」


あまりにも早すぎたジークの一撃

ジェイドは少し本気を出してしまい

吹き飛ばされたジークを見る。


「ィッツ」

わき腹をさすると痛みが襲ってくる

この感じは二本くらい折れているだろうとわかる。

明らかに異常。

身体強化を使わなかったせいだとしても

ジェイドの肉体は完成されている。

10歳の少年が出していい威力ではなかった。


「まぁ、合格だわな。」

聞こえていないジークに向け言葉を発する。


「ちょっと!!さすがにこれはやりすぎよ!!」

後ろから凛とした声が聞こえる。

「おう、エリス、魔法はお前か。

それよりもちょっと治癒掛けてくれ」



「あんたより先にジーク様よ。全く、

騎士団長ともあろう人が子供に本気だなんて

どうかしてるわ。」

エリスはぷんすかしながら

ジークに治癒魔法をかけ始める。


「元だ、それに出すつもりはなかった。

危なかったからな。」

ジェイドは内心驚愕していた。


10歳の子供が俺に

食らいついてきたどころじゃねぇ

一撃入れてきやがった。

それも強力なやつを。

朝には剣を持っていなかったガキがだ。

こいつはすげーぞ。

天才なんてもんじゃねぇ

俺なんてすぐに超えていく。

こいつがどうなるか。見てみたい。

他なんざどうでもいい。

悪になろうが。どこまで落ちようが

俺はそばでこいつを見届けたい。


ジェイドの心は既にある一人の少年に

揺らいでいた。否

思いは既に決まっていた。


「あの親バカめ今回だけはおめーの勝ちだ。

やってやるよ。」


だがすでに未来は変わっていた。

ジェイドが酒を飲むのをやめ

酒場から立ち去ったあの瞬間から

すでにジェイドの未来は破綻した

酔っ払い、酒場を出たジェイドは

帰路の途中、喧嘩をしている勇者ー主人公と出会い

意気投合し仲良くなった後

剣を師事する事になるのだが

そのジェイドはこの世にはいない。


※ジェイド、個人的に結構好きなんですよね。

過去とか気になったらコメントください。

投稿します。

カナンがジェイと呼んでいる理由も

判明するかも??

ジェイドがヒロインダークホース?!

(役割的にはツンデレデレ?)

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