SIDE セリア王国
「団長!バノギス隊の者が報告の手紙を持って一時帰還したようです!」
「なにっ!?わかった。ここに連れてきてくれ」
しばらくすると
「バノギス隊、ただいま帰還しました」
「ごくろうだった。それでティナからの手紙は?」
「こちらに」
「確かに受け取った。お前たちには返事を持って行ってもらうことになる。2日ほど休んでいてくれ。下がっていいぞ」
「はい!失礼します!」
短いやり取りを終えて、自分宛の手紙に素早く目を通し、その足で国王の元に向かった。
執務室の前にたどり着くと、扉の前にいた見張りが警戒するが、騎士団長だとわかると警戒を解いた。
ウィルはノックをして
「騎士団長ウィル・ファクト。陛下に緊急の報告があり参りました」
「むっ!ウィルか。直接くるとは珍しいな。盗賊でも出たか?」
「陛下。内密の案件でございますので」
「ふむ。わかった。入れ」
「失礼します」
「ウィル。堅苦しい挨拶はいらん。そこに座ってしばし待て」
ウィルが柔らかいソファーで背筋を伸ばして待っていると
「待たせたな。それでダンジョンか?」
「はい!あちらで指揮をとっている副騎士団長のティナ・プリセットから報告の手紙が届きました。こちらになります」
「うむ。拝見しよう」
手紙を読み、むぅと
ハイベストは、手紙を読み終えると、フーっと息を吐きながらソファーに背を預けた。
「ウィルよ。お主の方もダンジョンの報告を受けておるな?その他に何か書いてあったか?」
「はい。ダンジョンが大規模になる可能性があるため早いうちに増員をとのことでした。そこまで状況が悪いのでしょうか?」
「現地でしかわからん脅威があるのだろう。ここで判断を誤れば手遅れになる。それだけは避けねばならん。明日10時に緊急の会議を開く。お主も参加しろ。下がってよいぞ」
「かしこまりました。失礼いたします」
ウィルが退出後、ハイベストはすぐに動き始めた。
「セバール。いるか?」
「はい。ここに」
「明日10時に緊急の会議をおこなう。宰相、財務大臣、軍務大臣それとギルドマスターを呼んでおいてくれ」
「かしこまりました」
セバールはハイベストの執事で幼少の頃からの付き合いだ。一時は冒険者をしていたこともあり、戦闘も頭もキレる。
いくら宰相たちが忙しくても必ず連れてくるだろう。
翌日
「みな。揃ったな」
「陛下。緊急とのことでしたが、何かございましたか?」
「リベルグよ。そう急くな。ウィル。説明を頼む」
3人は一斉にウィルの方に視線を向けた。
ギルドマスターのザムは冒険者から報告があったからかわかっているようだ。
「では、説明させていただきます。昨日、私の部下が副騎士団長ティナ・プリセットからダンジョンの報告の手紙を持ち帰ってまいりました」
「例のダンジョンかっ!」
「ローアン!静かにっ!」
ローアンはすぐにモルドールに怒鳴られて大人しくなった。
そこでウィルはダンジョン内部のことから、増員の要望など手紙に書いてあることを伝えた。
「ギルドの方にも副ギルドマスターから似たような報告があがってきております」
「陛下はどうお考えで?」
「リベルグ。わしの意思はほぼ決定しておる。みなを呼んだのは、意志疎通しておきたいのと、わし1人で決めるわけにもいかんから、みなの意見を聞くためじゃな。ザムよ。ギルドは向こうに人を送るのじゃろう?」
「はい。陛下。早めに対応するつもりです」
「そうか。わしは数年でBランククラスの規模になると思っておる。5年を目安に街程度にまで作り上げておきたい。ダンジョンが大きくなれば冒険者が増える。当然問題も起こる。そのために騎士団の増員は絶対となる。それに宿ができれば、商人や冒険者相手の店も増えるじゃろう。ギルドと並行して早めに対策したい」
「陛下の考えに概ね賛成ですが、建物に関しては勝手に建てられる前に視察した方がよいかと」
「私も賛成ですが、魔石や素材の需要供給がどれだけあるかです。それだけでも予算がかなり変わりますので」
「俺も賛成です。ですがダンジョンの近くとなると城壁が必要となりますね。騎士団の増員はウィルに任せるとして、同時に募集もした方がよいかと」
「よし。ならば2回目以降の報告時にダンジョンのランク、魔物のランク、魔石、素材の情報を出来るだけ持ち帰ってもらい、そのあとに動くことにする。それまでは他言無用だ。商業ギルドにも2回目以降の報告がきてから通達する。それとザムとウィルは今から準備する手紙を副団長とガイスに渡すようにしてくれ。ガイスには大容量の収納袋も貸し出そう」
「わかりました。陛下。すぐに届けさせましょう」
「他に意見はあるか?また進展があったら報告しよう」
ここで会議は終わり解散となった。
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