SIDE 冒険者ギルド

俺は、セリア王国冒険者ギルド、セリア支部副ギルドマスターのレーターだ。

 ギルドマスターのザムさんから言われ、新しいダンジョンの近くに建てられる仮の冒険者ギルドのギルドマスターとして派遣された。

 今朝方、出発した第1陣のガイスさんたち一行が夕方間近に帰ってきたようだ。

 前回調査した時の内容はザムさんから聞いたが、出来たばかりのダンジョンは不安定なこともあるから心配だ。何事もなければいいが・・・。

 そこに、ガイスさんたちのパーティが報告のためギルドを訪れた。

 受付のクレアには前もって伝えていたためすぐに案内してきた。

「副ギルドマスター。守護者の翼の皆様をお連れしました」

「入ってくれ」

 2階執務室の机の席から立ち上がり、入口付近のソファーに移動した。

「守護者の翼のみなさん。お疲れ様でした。どうぞ座って下さい」

「あ、ああ・・・」

 ガイスさんたちはソファーに腰掛け一息ついた。

 だいぶ疲れてるようだ。

「それでガイスさん。報告をお願いしたいのですが、以前と比べてどうでしたか?」

「そうだな・・・どう報告すべきか・・・」

「・・・?どうされました?駄目でしたか?」

「駄目と言えば駄目だな。レーターは以前のダンジョンの内容を聞いているか?」

「ギルドマスターからある程度聞いてますよ。細心の注意を払うようにも言われてます」

「それなら話が早い。今日の探索だが、全容がわからず撤退してきた。俺らの判断だが、この先間違いなく大規模に成長する」

 そこでガイスは、以前とは全く違う入口から内部のこと、ブルースライムのこと、空間魔法で繋げられたと思われるその先のことまでジョイナが捕捉を加えながら話した。

「・・・なるほど。少し状況が悪いですね。それに成長のスピードも早く、ある程度奥まで調査しないとランクも決められないと・・・。それで、第2陣はどうしますか?」

「第2陣は俺らのパーティ4人、騎士団5人、騎士団のことはティナに任せてある。冒険者の方は、Bクラス2人に、強さより探索に向いたベテラン3人、マッピングが1人、物資を運ぶためのサポート5人、それにギルドからも1人立ち合ってくれ」

「そうですね。期間がわからないとなると戦闘員、調査員、サポート人員で手分けした方がよさそうですね。それで出発はいつになりそうですか?」

「物資が集まり次第・・・。大体1週間前後ってとこだろう」

「わかりました。手配しておきます。しかし、大事になりそうですね」

「ああ。だが、この先強い魔物や有益な物が出れば、他の高ランク冒険者も利用出来るだろう。それに魔石や素材が出れば人も自然と集まるからな。街でもできるかもしれんな」

「ダンジョンが大規模になると考えたら、可能性は十分ありますね。ギルドも早いうちに手を打っておいた方がよさそうですね。ギルドマスターに相談してみましょう」

「そうだな。俺たちも出来る限り手を貸そう」

「ありがとうございます。ガイスさん。ところでダンジョンの方は第2陣が入るまでは封鎖でよかったですか?」

「ああ。調査結果が出てない危険なダンジョンに入って行くヤツなんていないだろうが、冒険者は自己責任だしな。見張りを立てて置くぐらいでいいだろう」

「わかりました。では人員と物資が揃い次第連絡します」

「レーター。よろしく頼む」

 そこで守護者の翼の4人は退出していった。


「ふー。まさか2ヶ月程度でダンジョンが成長してるなんてな。普通は何百年とかかるはずなんだが、やはり魔の森だからだろうか?この調子じゃすぐ高ランクのダンジョンになりそうだ。それはそれでいいことでもあるんだが・・・。ガイスさんは街と言っていたが、都市が出来てもおかしくない気がしてきたな。もしかして俺はとんでもない瞬間に立ち合えるんじゃないか?」

 忙しくなる前にギルドマスターに報告の手紙を書こうと筆を持ち、ついでにギルド職員も増やしてもらうように書いたレーターは、2階の執務室にクレアを呼んだ。

「クレア。この手紙を王都のギルドマスターのザムさんに届ける依頼を頼めるか?騎士団からも王国に何人か報告に出すはずだから、それに同行するように信頼できる冒険者にお願いしてくれ。」

「はい。わかりました。守護者の翼の方たちは今回の探索の結果はなんと?」

「それが、少々問題が起きてな。まだ発見して2ヶ月程度のダンジョンが、すでに成長していたらしい。今回は以前の最奥の少し先を調査して戻ってきた。それで次の探索に守護者の翼、騎士団5人、冒険者がBクラス2人、探索に向いたベテラン3人、マッピングが1人、サポート5人、それにギルドからも1人立ち合ってくれということでローゼットには話をしといてくれ」

「えっ?出来たばかりのダンジョンがもう成長してるってことですか?それは急いだ方がよさそうですね。わかりました。依頼と並行して進めます」

「よろしく頼む」

 クレアは急ぎ足で退出していった。

 優秀な職員で大変助かっているが、これから先の忙しさのことを思うと憂鬱ゆううつになるレーターだった・・・。

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