第10話 ソロ配信にも現れた

 帰宅した俺はすぐにパソコンを起動させ、配信を始める。


 みんな、桃田ネルとのコラボ配信はさぞ驚いたんだろうなぁ。


「みんな~元気だった? 配信の時間だよ~」


【ライブコメント】

:始まった!

:待ってました!

:聞きたいことめっちゃある!

:初見です

:色々聞きたい!


 コメントを見てみると、やはりコラボ配信の話を詳しく聞きたい視聴者が多いようだ。

 それに、そのコラボ配信の影響か初見の視聴者もコメントを書いてくれている。


 アンチコメントを書き込んでいる人はいないようなので、それは安心した。


 SNSで俺へのアンチコメントを書き込んでいる人はいるかもしれないが、配信のコメントに直接書き込んでくる人はいなかった。


「みんなが聞きたいことは分かってるよ~。ネルさんとのコラボ配信の件だよね?」


 登録者数が激増したこともあってか配信のコメントの速度が普段よりも早いような気がする。


「まあ、ネルさんのチャンネルでのコラボ配信を見た人なら知ってると思うんだけど、改めて言うね。あの配信で言った通り、俺はネルさんの弟の親友なんだよね。それと、これからはネルさんと一緒に配信することが増えていくと思います」


 俺は改めて視聴者のみんなに桃田ネルの弟と親友であることと今後一緒に配信する機会が増えることを伝えた。

 視聴者の反応を見ようとコメント欄に再び目を向けたのだが、様子がおかしい。


 先ほどまでもコメントの流れる速度は普段より早かったのだが、それを超える速さで流れていた。


 何事かと思い、俺はコメントをさかのぼってみてみる。


 すると、原因が分かった。


 コメント欄には今日配信を始める前に出会った人物の名前があったのだ。


【ライブコメント】

夜凪ルナ:私ともコラボ配信しよーねっ!

:ルナちゃん!?!?!?

:本物!?!?!?

:え、どういうこと???


 そう、夜凪ルナが俺の配信にコメントをしてきたのだ。

 それで視聴者のみんなは困惑していたようだ。


 なんでこの人、俺の配信のコメントにいるの。

 この人、自分の配信は?


 今日は休みなのだろうか。


「なんでルナさんがいるんですか? 今日は配信お休みですか?」


 俺が配信を見ているであろう夜凪ルナに問いかけると、数秒で再びコメント欄に現れた。


【ライブコメント】

夜凪ルナ:配信しながら見てるー


 おい、何してんだ。

 配信しながら俺の配信を見てる?


 俺は夜凪ルナのYooTubeのチャンネルを開き、配信を確認する。


「本当に配信してるじゃん」


 確認すると、彼女は本当に配信をしながら俺の配信を視聴しているようだった。

 それに、なぜか彼女の視聴者も俺の配信を一緒に見て楽しんでいるようだった。


 視聴者にも何故夜凪ルナが俺の配信に来ているのか知りたいはずだろうが、俺が今日会ったということを言ってもいいのか分からないので俺からは答えることができない。


 かと言って、視聴者の疑問を無視するわけにもいかない。

 ……どうしたものか。


 そんなことを考えていると、俺の考えに気づいたのか夜凪ルナ本人がコメント欄で答えてくれる。


【ライブコメント】

夜凪ルナ:あ、実は今日、偶然会ったんだよね! もしかして、運命!?


 俺の代わりに視聴者に答えを伝えてくれたのはありがたいが、なに運命とか言ってるの?!

 なんか視聴者も盛り上がっているようだった。


 まあ、今後コラボをする可能性はあるので、今絡んでおくことは正解なのかもしれない。


 この数日間で俺のVTuber人生が大きく変わってきているような気がするのは俺だけだろうか。


「ルナさんが言っている通り、実は今日会ったんだよね。まあ、運命じゃなくてただの偶然なんですけど」


 コメントではこの二人のコラボ配信も見てみたいというコメントが多く見られた。

 いつになるかは分からないが、近いうちにここでもコラボをすることになるかもしれないな。


 俺はその後も約1時間ほど視聴者との雑談をしてから、配信を閉じた。

 夜凪ルナは何故か配信が終わるまでずっとコメント欄にいた。


「なんか凄いことになってきたなぁ」


 俺は部屋の中でそう呟いていた。


 推しの桃田ネルとの関りができただけでも夢みたいな話なのに、まさかその同期の夜凪ルナとまで出会うことになるなんて過去の俺に言っても絶対に信じないだろうな。


 ピコンッ♪


 そんなことを考えているとメッセージアプリの通知音が鳴った。

 里香さんからだった。


 メッセージを読んでみる。


『配信、お疲れ様。配信見てたんだけど、ルナちゃんと会ったってホント?』


 どうやら、里香さんも俺の配信を見ていたらしい。

 やはり、これは気になるよな。


 俺は、『学校からの帰り道で偶然会いました』と返信した。

 すると、ものの数秒で返事が返ってくる。


『それじゃあ、今度三人で会わない?』


 このような返事だった。

 三人……。


 まあ、会っておいたほうが今後のコラボ配信の予定も立てやすいだろうし、会っておこう。


『わかりました。日程は合わせるので決まったら教えてください』と、返信しておく。


 もしかしたら、この三人でのコラボ配信とかもできたりするかもしれないな。

 そんなことを思いながら、俺はパソコンの電源を落とした。


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