第5話「魔族領へ! その2」
さて、午後は城下町へ行く予定だ。残念なことに、サリーは来ない。母であるサリエンテさんと過ごすのだ。家族で一緒にいる時間も大切にしてもらいたい。
「ぴとー……すんすん……ふぁ!? すんすんすんすんすんすん」
「ディーちゃん、汗かいてるからやめなさい」
「えー……や! すんすんすんすん」
部屋に戻る途中でディーちゃんと会ったのだが、凄い勢いで背中にくっついてきて離れないし、匂いを嗅がれ続けている。
さすがにこれは勘弁して欲しい。恥ずかしい。
そのままディーちゃんを装備して部屋に戻り、俺はシャワーを浴びることにした。もちろん、ディーちゃんはベッドの上にリリースしたよ。
「動いたあとのシャワーは格別だな……」
「ディル様……このにおい……ボク、しあわせ……」
シャワーのあとは布団に潜り込んでもぞもぞ一人遊びをしているディーちゃんを回収してロビーへと向かった。
魔王城はとてつもなく広いし、豪勢というより洗練された感じがして、目に映るものが全て新鮮だ。
「ディルにーちゃん!」
「おにいちゃん! なんでディリーがくっついてるの!」
とてとてとミィちゃんとリリが駆け寄ってくる。すぐに俺の両手をそれぞれが握り、まだ来ていないレスターさん、ミレイちゃん、ギャラン、テオを待つことにした。
「ディリーはなにしてたの」
「ディル様のお布団の中で遊んでた」
リリが目つきが変わる。え、そこが地雷なのか。
「え? はあ!? わたしのおにいちゃんだっていつも言ってるのに!」
「リリ〜、ディルにーちゃんはミィの騎士様なの」
「も、もう!!! おにいちゃん! 浮気しないで!」
う、浮気? 周りの魔族の方々がこちらをチラチラ見ている。だが、生暖かい視線なので察してくれているのだろう。
「リリ? 俺はそんなことしてないと思うよ……」
「だって、ディリーが」
「今日の夜部屋に遊びに来ても良いからさ」
「むー……それなら、ゆるす」
よし、許された。チョロい。
そんなわけで、すぐにレスターさんたちも合流し、城下町へ行くこととなった。また色々なものが食べれるといいな。
その期待は裏切られなかった。
昼食は“あんかけらぁめん”というものを食べた。とてつもなく熱く、最後まで冷めることはなかった。スープもとろとろで何をどうやればこういうものが作れるのかと感心したものだ。
その後はスイーツ。甘いものも凄くて、チョコソースを果物にたっぷりつけたものは無限に食べれそうな気がした。みんなもがっついて食べていたので俺も嬉しい気持ちになる。
サリーも一緒に楽しみたかったな。
他にも多くのお店があり、正直王都より目移りしてしまう感じがした。
一週間では満足に食べ歩けないだろう。期間が短いのが少し悔しくなる。
「夜も外に出たくなるな……」
別に夜遊びをしたいわけじゃない。そんなことをしている暇があるなら鍛練をする。
ただ、たまにはお酒も飲みたくなるよね。明日近衛兵のキルトンを誘ってみるかな。
同い年の友人とお酒を飲むってもう叶わない夢だと思っていたりしたから、その夢が叶いそうで舞い上がっちゃってます、勝手に。
ただ、今日の夜はリリと遊ぶからもちろん外出はできない。
「なんでみんないるの!?」
「兄貴の部屋だぞ? 舎弟は当然いるべきだろ?」
「僕もディルにいのお部屋気になって」
夜は全員集合しました。リリがあーだこーだ言ってるが誰もまともに取り合わず各々好きなことをしている。
とは言っても特に娯楽はないので、お喋りしてるだけだ。リリは俺の膝の上、ディーちゃんは布団中でもぞもぞと二人だけよくわからない。
「おにいちゃんは……わたしだけのなのにぃ……」
何やら物騒なことを呟いているが、気にしない。俺だって子ども頃はそれなりに独占欲があった。リリも同じだろう。
その独占欲の格の違いを今の俺は全く感じ取れていなかったのだけど。
翌日、俺はキルトンを飲みに誘ってみた。死ぬほど緊張したが、快諾されたよ。
「まじ!? 行こうぜ。何人か連れていくか?」
「賑やかそうだから、そうしよっか」
「おう、そしたら近衛兵で顔知ってるやつ誘っておくわ」
「ありがとうね!」
俺のテンションは天を突き抜けていた。同年代の友人たちとの飲み会、素晴らしい響きである。
もちろん、訓練はサボらずに剣術指南は受けたし、結界魔法を破れるかのチャレンジもした。
今日もヒビすら入らなかったが、こう考えるとやはりガネシャさんのパワーは少しおかしい気がする。さすが魔王といったところだろう。
ああ、今日の夜が今から楽しみだ。
午後は孤児院の子たちと外出だ。今日はサリーもいる。サリエンテさんに聞いたところだと、ガネシャさんには相変わらず会いたがらないらしい。誤解だと説明はしているが、まだ完全に受け入れてはくれていないようだ。
「ディルよ! 今日はどこへいくのだ?」
「まだ決まってないかな〜」
「それなら、ぽよぽよドームに行きたいのじゃ!」
ぽよぽよドームとはその名の通り、ぽよぽよと跳ねながら遊ぶ施設のようだ。
「みんなは?」
『行く!!!』
よし、大丈夫そうだな。サリーの希望であるぽよぽよドームへ行くことにした。ちなみに今日の昼食は魔王城でいただいた。
パスタというもので、これもまた絶品であった。探せば王都にもあるのだろうか。帰ったらミリアに聞いてみよう。
ぽよぽよドームは凄かった。めっちゃ賑わっている。そして、跳ねる跳ねる。子どもたちが高く跳ねると心配になるが、クッション性がかなり高いため基本的に怪我をしないようだ。
俺も少し跳ねてみたが意外に面白い。
「鬼ごっこしたいのー」
ミィちゃんの提案で子どもたちは鬼ごっこを始めた。ちなみに最初の鬼はなぜか毎回ギャランがやっている。運動能力高いからすぐみんな捕まっているんだよな。
レスターさんはさすがにぽよぽよドームは危険だと受付で止められたため見学だ。俺は保護者ということで子どもたちとぽよぽよしている。
みんな遊ぶのに全力で汗だくだ。知らぬ間に他の魔族の子たちも一緒になって鬼ごっこをしてる。穏やかな時間だなあ。
帰ったらまたシャワーを浴びないといけないかな。夜は、夜は……飲み会だから!
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いつも読んでいただきありがとうございます。
応援等はとても励みになっていて、感謝しかありません。
近況ノートにキャライメージを載せているのでそれも見ていただけると嬉しいです!
https://kakuyomu.jp/users/popoLON2114/news
今後とも何卒よろしくお願いします!
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