幕間「主柱ではない女神」
女神は信仰から生まれる。単なる偶像だったものが、信仰の力を糧として、“主柱”として顕現する。
尤も、彼女らが人々の前に姿を現すことはない。加護を与える者の前にのみ一度姿を現す――というのが、定説だ。
それっぽいことを言っているが、主柱だの何を言っているかわからない、と無神論者はよく言っている。
ただ実際に世には二十の主柱がある。つまり、それだけの女神が様々な地域で信仰されているわけだ。
だが、支柱は存在しない。この点も無神論者は突っついているが、女神の下に女神はいない、と言われている。
そして、女神はその加護を一人にのみ与えるという。その者の死をもって次の者へと加護が渡る。
一般的には司教に加護が与えられていると考えられているが、その真実は単なる信者には知る由もない。
ここで一つディルの過去の話をしよう。彼は十四歳の頃に、七歳の妹を不治の病で失った。
非常に溺愛していた妹であるため、彼はひどく悲しみに溺れていた。
そしてディルはその後、『リーシア』という存在しない架空の女神へ懺悔を続けた。
何かに縋って、この苦しみから救われたいと無意識で思っていたのだ。
彼が王国騎士団に入団するその時まで、いや、入団後も定期的にそれ続けていた。
そんな中、彼は創造魔法を会得した。それが
この魔法の『リーシア』は彼の信仰する女神『リーシア』と一致する。別に何か意図があったわけではない。ただ、直感でそう命名した。
それが、主柱ではない、イレギュラーな女神を生み出すことに繋がるなど誰も想像ができるわけもなかった。
彼の創造魔法である
それはつまり、ディルは優秀で、
信仰とは『信じること』であり、彼の創造魔法は明確にその有用性を示して信じられていた。
この『信頼』が積み重なり、意図せぬところで生まれるはずのない、存在し得ない主柱から外れた女神が創造された。
この女神にとっての司教はディルである。
彼自身の意図は関係なく、過程と結果を鑑みても司教と呼べる者はディル以外にはいないだろう。
『女神リーシアの加護は貴方様だけに』
誰も何も予期せぬところで、ディルは女神の加護を受けることとなっていた。
まだ明確にそれは実力に反映されていないが、少しずつ芽吹いていることは間違いない。
◇◆◇◆
「女神の加護付きか。しかも“主柱”の女神ではない。どういうことだ?」
魔王ガネシャはそのイレギュラーな女神の気配に気付いていた。その過程はいざ知らず、現在ディルに起こっている事実は理解しなければならい。
存在しない女神の加護を受けている、と。ガネシャは女神の加護を受けているわけではない。
しかし、魔王の座に在り続けるだけあり、異常なまでの感知魔法や様々な魔法、そして力まで備えている。だからこそ、気付けた。気付いてしまった。
「確認してみたいぞ……その加護の力」
こうして手合わせを申し込むことに繋がる。一度目の手合わせも、二度目の手合わせも事実上ディルの勝利だった。
通常、結界魔法など指でも破壊できるガネシャが
特に二度目は一度目より魔力を集中し、一度目以上の力で持って結界を破壊するための一撃を放った。
だが、それは一度目と同じように防がれてしまったのだ。このとき、ガネシャは女神の加護の強さを改めて知るとともに、本気でディルを囲いたいと思っていた。
娘がとても懐いていて、人柄も悪くなく、明らかな実力が伴っている。さらに努力も欠かさずその実力には明確な伸び代がある。
「誰がそんな人材を放っておけるものか」
ディルは人族で初めて魔王に目をかけられた存在であった。これもまた女神の加護の一つなのだろう。
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