第4話「夕食とクッキー」

 レスターさんたちのところに戻ったときには、ちょうど夕食の準備がほぼ終わっていた。


「それじゃあ、ディル君とミレイには配膳をお願いするかな? 私はみんなを呼んでくるとするよ」

「「わかりました!」」


 今日の夕食はライオネルホーンの肉をふんだんに使ったシチューというものだ。料理を考える先人たちはどのようなセンスをしているのだろう。見た目も匂いもとても美味しそうで、つまみ食いをしたくなってしまう。


「よし、ミレイちゃんは軽いものを運んでもらっていいかい? 重いものは全部俺が運ぶから」

「はい、ありがとうございます」


 ミレイちゃんは八歳で、他の子たちより年上だ。それが原因かはわからないけど、かなり真面目で積極的に色々お手伝いをしている。

 まだまだ、甘えたい年頃なんだろうけど、本当にしっかりしている。俺が八歳の頃なんて近所の友達とひたすら暴れ回っていた記憶しかない。親の手伝い? なんですかそれ、みたいな感じだった。


「そいえば……ディルさん、お肉ありがとうございます」

「ん? 別にいいんだよ。ミレイちゃんはいっぱい食べるのが仕事なんだから」

「……はいっ」


 はぁ、本当に良い子だ。騎士団の後輩にも女性はいたが、明らかにミレイちゃんのほうが大人に見えてしまう。

 その後はみんなで食卓を囲んでライオネルホーンのシチューをいただいた。騎士団寮の食事も美味しかったが、今日のシチューはそれ以上に美味しく感じた。


「お肉すげえ多いな! これも兄貴の力か!」

「さすがディルにいだね!」


 ギャランとテオはよくはしゃいで食べている。行儀良くしなさいとレスターさんに何度か注意をされていたくらいだ。二人はシチューを三杯もおかわりしていて、見ているこちらも嬉しくなる。

 ギルドでの活動は毎日行うつもりはない。数日に一度くらいのペースで討伐依頼をこなしていく予定だ。討伐依頼でなくても、日帰りで済むものならやるつもりでいる。

 ライオネルホーンなど食材になるものだと一石二鳥だから、できることなら討伐依頼が理想的なんだけどね。


「ごちそうさまでした!」


 さて、次はデザートの時間だ。


「じゃあ次はデザートだね。クッキーを買ってきたからみんなで食べようか」

「くっきー?」

「ディルさん、クッキーとは……」

「最近流行っているお菓子らしくてね、買ってきてみたんだ」


 俺もまだこのクッキーというものを食べたことがない。硬めなのでサクサクしているお菓子なのだろうけど、どうなのだろうか。少しお高めだったからまずいということはないと思う。


「我が配るぞ!」

「そしたら配るのはサリーにお願いするかな」

「任せるのだ!」


 クッキーを配るのはサリーがやってくれた。一人三枚あたるように買ってきたけど、味はどうなのだろうか。


「こ、これは……美味しいな……」

「うん! おいしーの!」

「うんめえな! サクサクしてるぞ!」

「ディルにい、ありがとう!」


 とても好評でした。初めて食べる食感に味だが、これだと何枚でも食べれてしまいそうだ。どうやって作っているのだろうな。やはり、こういうものを作り出す人は偉大だ。


「また今度買ってくるからね」

「楽しみにしてるね、おにいちゃん!」


 みんな目をキラキラさせていて癒される。買ってきて良かったな。レスターさんも目を輝かせているのは面白かった。口には出さないけどね。

 食後はお風呂と歯磨きをして自由時間だ。子どもたちは風呂上がりにも関わらず汗を流しながら遊んでいる。元気が有り余っていて羨ましい。

 そんな俺は今レスターさんとお話し中である。


「ディル君、今日は本当にありがとう。あんなに賑やかな食卓は久しぶりな気がするよ」

「いえいえ。俺にできることはこれくらいですし……また定期的にギルドに出向いて色々調達しようかと思っています」

「助かるよ。でも、無理はしないようにね。子どもたちにも懐かれているようだから、疲れるだろう」

「可愛いものですよ。妹にしてやれなかったことを、せめてこの子たちにしてあげれればって思っているので」


 余談だが、レスターさんには妹のことを話している。


「そうかそうか。でも、本当に疲れているときは休んで良いからね」

「お気遣いありがとうございます」

「よし、私は少し雑務をするからディル君は休むといい。明日もまた疲れるだろうからね」

「わかりました。では、失礼します」

「お疲れ様」


 レスターさんに促されるまま、俺は自室に戻り休むことにした。少しはレスターさんの負担を減らせるといいのだけど、役に立てているのだろうか。

 当分は子どもの面倒をみるのが中心だが、そのうち事務仕事もする予定だし、その時がきてからだな。


「ディル様〜」

「ディーちゃんか。どうかしたのかい?」

「羽のお手入れ……して欲しいの」

「なるほどね。わかったよ、おいで」

「ん」


 鳥人種であるディリーことディーちゃんは毎日の羽の手入れが必須だ。とはいっても、櫛で丁寧に整えるだけなんだけど。

 自分でやるのは難しいらしく、いつからか俺がやるようになっていた。


「それにしても、本当に綺麗な羽だね」

「そ、そんなにほめないでよぉー」

「ははは。本当の本当に綺麗だぞ?」

「嬉しいのー」


 ディーちゃんの両翼はそれぞれが黒色と白色である。毎回褒めているのだが、毎回同じように照れていて可愛い。

 ただ、鳥人種は調和を好む傾向にある。ディーちゃんの場合は『白と黒の羽』という左右非対称が彼らに受け入れられなかったらしい。言ってしまえばハーフエルフのミィちゃんと同様に捨て子だ。

 このあたりは文化というか考え方の違いがあるので、安易な口出しができるものではない。

 しかし、俺は綺麗な羽だと思うし、孤児院の子たちも羽を馬鹿にしたり忌避するようなことはない。だから、この子には自信を持って生きて欲しいと思っている。


「ディル様がおとうさんだったらなぁ」

「ふふ。今はそう思ってくれてもいいんだよ?」

「ん、うん……ふへへ」


 羽を櫛でとかしていると、気持ちよさそうにするから、そういうところも愛らしい。


「む? ディリーは何をしているのだ?」


 サリーことサリシャがぬるりと現れた。結構ディーちゃんとサリーはセットになっていることが多い。磁石でも付いているのだろうかと思うほどに。


「サリシャ、邪魔だからばいばい」

「な、なにを!?」

「喧嘩はしないの」


 そして、仲良しではあるのだが、わりと喧嘩っぽくなることが多かったりもする。可愛いからそんな二人を見てても癒されるね。








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