転生先は絶滅危惧種のドラゴン様!?〜世界樹に寄生されてますがこの先生き残れるのか〜
カッチョ
第1話 プロローグ
(熱い)
ジリジリと焦がされているような熱さが身体を襲う。しかし、物凄く熱いというわけでもなく、低温火傷になるかくらいの熱さ。
これは夢なのだろうか?しかし、今までにあった自分の記憶を掘り起こそうとしても、モヤがかかっていて断片的にしか上手く思い出せない。
日本、焼死、植物。
今はその3つしか分からない、だが焼死という断片があるなら死後の世界なのだろうか?なんせ、真っ暗な暗闇の中でただただ熱せられているのだから。
そんな頭がおかしくなりそうな中で、救いのような微かな声が聞こえてきた。
(ごめんね)
頭の中に直接響く様に、小さく囁くような一言。しかし、今まで熱さ以外何も無かったこの暗闇の中で、救いとも呼べる声に心は歓喜した。
もしここが死後の世界であればこの声の主は
その期待と共にいつもより丁寧な言葉で失礼のないよう言葉に気をつける。人間最初の印象が大事なのだ。
(すいません、貴方様はだれですか?)
(世界樹)
どうやら自分が思っていた神様ではなく世界樹らしい。しかし、世界樹?つまり、考えの中のひとつにあった地獄という線は無さそうだ。ましてや、生前の日本では世界樹なんてものは無いわけで。
(どうして謝るんですか?)
(貴方に寄生して、宿にしているから)
(寄生!?)
世界樹の寄生と聞くと虫に寄生する冬虫夏草や、はたまた宿木といった半寄生を思い浮かべてしまうが、正直寄生という言葉には良い思いはしない。
しかし、真っ暗闇の中でジリジリと焦がされ寄生されているとはこれいったい。この熱さがもし寄生されている原因だとしたら今すぐにでも辞めてもらいたい。
そして、もしこれが異世界転生であるのであればもっとマシな転生がしたかったし、始めは神様に会ってチート特典なり貰えるのではと期待していたため、心の中で少し落胆してしまった。
そして少しの抵抗と言わんばかりに、せめてもの抗議をあげる。
(寄生はやめて、自分の力で生きてほしい)
(ごめんね、貴方のお母さんに託されたから)
世界樹は悲しげにそう呟いた。
どうやらこの世界での母親の使命は世界樹を守る事らしい。なんとも立派な使命だとは思うが、転生したばかりのこの身ではジリジリとした焦がされる熱さには厳しいものがある。
(母は?)
(魔族との戦争で、わたしを守るために死んだ)
母親がいるのだとしたら意識的に人間だと思っていたら、信じられないことに自分の母はフォレストドラゴンらしい。
ドラゴン族の中では戦闘力は最弱だそうだが世界樹を守る使命があり、その中では穏健派でエルフとも少し交流があったそうだ。
その後も世界樹に色々話を聞いていると、竜魔の森という場所に世界樹はあったそうで、そこで魔族との大戦争が勃発。しかしながら、ドラゴン族は敗北し絶滅危惧種、幸いな事に魔族もかなり損害を出したそうだが、その戦争の影響で世界樹がなくなり世界を守護する力が消失、魔物の活性化に繋がり気候変動も出ている。
(つまりこのままだと世界は滅亡?)
(大体そんな感じ。魔族や魔物が繁栄すれば人族は衰退し滅亡する)
そんな話を聞いているとこの先生き残れる気が全くしない。しかしながら世界樹と話をしていると、不思議な事にジリジリ肌を焦がすような熱さが和らいだように感じる。
(いつになったら、出れるんだろう?)
(私との意識が繋がったから、もうすぐ孵化する)
先ほどの謝罪からよりは、いくらばかしか少し声色が明るく聞こえる様は、こちらとしても希望に聞こえた。
熱さが和らいではいるもののこのままずっといるとしたら退屈で死んでしまいそうだ。 だから、寄生されているとしてもここから出られるとすればもうなんだって良く思えたし、細かいことはここから出られたら考えていけば良いと軽く考えてしまった。
しかし、世界樹の消失がこの世界では計り知れないものだとは、この時点では思いもよらないのであった。
◇◇◇
竜魔の森の西南に位置するラスマータ王国の辺境にある城塞都市カルメンにて避難している、エルフ族の女王ラズーシャは頭を抱えていた。
その原因は3年前に突如勃発した竜魔大戦争にある。人間の想像を遥かに超える戦争は、平和に暮らしていたエルフ族に大打撃を与える事になった。
報告が上がっているだけで、世界樹の消滅、魔物の活性化にスタンビート、大量のエルフの難民、気温の低下、そして。
「魔法の消失か」
人族の国では、3000人に1人発現する魔法ではあるが、エルフ族は世界樹の恵みから魔法が全員使えるようになる。
それが今では、魔法が使えないのだからエルフ族としての価値はかなり下がったと言える。
また無念ではあるが、エルフの国エマリーズは3年前に戦争の影響から、魔物のスタンビートが発生してしまい崩壊してしまった。
不幸中の幸いではあるが親交のあったラスマータ王国に、難民の半分を受け入れてもらえた事で、結果としてエルフ族は生きながらえる事が出来た。
今のエルフ族はラスマータ王国の辺境にある城塞都市カルメンにて、最前線の竜魔の森に狩りにいったり、傭兵や冒険者、商人になったりして暮らしている。また、少数ながら他の国に移住する者もいた。
また魔法は今は使えない物の、弓に関しては並ぶものは少ない。さらに、耳の良さにも定評がある。
そんな事から、人間族との関係は悪くはないと思いたいが、竜魔大戦争の影響で野菜や穀物の収穫量がかなり落ち込んでいる。
そのため、王国民からすればエルフ族の難民のせいで食い扶持に不満を感じている民も中にはいる。
これからの事を考えるとつい愚痴が出てしまう。
「この先生き残ることが出来るのか」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます