003【噂】

 お昼休み。待ちに待ったお昼ご飯。


 ――今日は何食べよかな?


 意気揚々と購買へと向かう。ここ“新東京都立華椰樹はなやしき高等学校”の購買は、そんじょそこらの高校の購買とはわけが違う。各地の美味しいものを集めに集め販売しているから品揃えも多く色んなものが楽しめるのだ。


 ――今日はコレ!


 と、買ったパンとペットボトルのアップルティーを持って、茅絵里たちの待つ中庭へと向かった。


「おまたせぇー」

「今日はなんにしたの?」

「今日はね、じゃじゃーん」

「何それ?」

「“ほんとのメロンを使った、これがほんとのメロンパン”!!」

「ちえり、メロンきらぁい」

「そぉだったね。てか、志帆と彩々芽ちゃんは?」


 と、そこそこ会話した後に茅絵里しか居ないことを質問してみた。


「志帆ちゃんはわかんなぁい。彩々芽ちゃんは生徒会の関係で遅くなるって言ってたぁ」

「そぉなんねぇ。あ、てか志帆はなんか先生に呼び出しくらってたっけな」

「彩々芽ちゃんは、先に食べててくださいって言ってたよ」

「そかそか。じゃあ少しだけ待って来なかったら食べちゃおか」

「うんうん。あ、そうだ」

「ん?」

「ちえりね、今日は放課後に学祭のクラスのやつ、少しやらなきゃ行けないことあるからぁ、一緒に帰れないからね」

「ん。わかった」


 会話をしつつ待っていると、校舎から二つの人影が見えた。


「ごーめーーーん! 先生にとっ捕まって遅くなったー」

「そんな志帆さんを、先生の魔の手から救ってきました!」


 “鹿子かのこ 志帆しほ”と“香澄かすみ 彩々芽ささめ”、待ち人二人も合流し、昼食を取り始めた。


「そういえば、御三方は“不思議の図書館”って噂聞いたことありますか?」


 メロンパンがとてもメロンメロンしていて甘く、そしてさも当たり前のように葵依の口の中の水分を奪っているさなか、彩々芽が口を開いた。


「あぁ、なんか聞いたことあるなぁそれ。最近噂になってるやつでしょ?」


 その話に志帆も乗っかる。


「え、なんか怖い話? ちえり怖い話無理……」

「んーや、そんな怖い話じゃなかった気がするけど」

「そうですね。これは怖い話では無いです。なんでも、普段はないところに何やら幻想的な図書館が現れて、しかもすごく楽しい体験ができるとか」

「彩々芽ちゃんは不思議な場所とか好きだもんね」


 目を輝かせながら話す彩々芽に、メロンパンで奪われた水分をアップルティーで補給しつつ、返す。


「まぁもっと好きなのは廃村とかそういうところですけど。キリッ」

「はいはい。彩々芽ちゃん、葵依ちゃんも茅絵里ちゃんも怖がるからその話はまた今度ね。それで、楽しい体験って?」


 志帆が葵依と茅絵里の表情を見つつ、脱線しそうな話の軌道修正をし、続きを促す。


「あ、そうでした。それでその図書館では、なんと!!」

「「「なんと?」」」

「なななんと!! 本の」


 《キーンコーンカーンコーン》


「あー!! もぉ予鈴!?」

「え!? もぉそんな時間? ちえり半分しか食べれてない……」

「ウチらが来るの遅すぎましたね」

「続きはまた明日だね」


 四人は急ぎ片付け、教室へと戻ることになった。


 ――話の続き、気になるなぁ。てか、眠い……。

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