002【日常的な朝】
《ヂリリリリリリリリリリリリリリリリ》
何度目かの目覚まし時計が鳴り響いていた。
「あーちゃーん。あーちゃーん!」
――んー。……まだ眠い。
「あおいちゃーん!」
バタバタと階段を駆け上がってくる音とともに、叫び声も聞こえる。
《バタンッ!》
部屋の扉が勢いよく開け放たれた。
「葵衣!! もういい加減起きなさい!!」
「んぬぅ……まだ眠いぃ……」
「なぁに行ってんの!? 遅刻するよ!!」
「んえぇ……今何時………………」
目を閉じたまま、枕元にあったスマホを手繰り寄せ、薄目を開けて時間を確認する。七時二十八分を表示していた。
「あー!? ヤバいじゃん!! おかん、なんでもっと早く起こしてくれんかったの!!」
「バカ言うんじゃないよ。私は何度も起こしたよ!! 何度も何度も、やれまだ眠いだのやれもう少しってこの時間まで寝続けてたのはあんたじゃない」
「うへぇ……」
いつも家を出るのは五十五分なので、家を出るまでのタイムリミットは三十分もない。
飛び起きて急いでリビングへと向かう。テーブルに並ぶ朝食を五分で食べ、洗面所へダッシュ。洗顔とハミガキを高速で済ませ、自室に戻り制服に着替える。準備を済ませ時計を確認。七時五十四分。
「っっっセーーーーーフ!!」
《ピンポーン》
準備を終えたのと同時にチャイムがなる。
――いつもはもっと早く起きて、もっとゆっくりと準備をしてるんだ。してるんだよ。してるんだってば!
誰に言い訳をしているかも分からないが、ともかく、いつも通り時間丁度に“
「今行くー!!」
パタパタと階段を駆け下りて一度リビングに顔を出し、父と母に元気に「行ってきます」をした後、玄関へと向かう。そして勢いよく扉を開け
「おまたせぇー!! おはよ、茅絵里!!」
「葵依、おはよぉ。今日もピッタリだね」
「今日はちょい寝坊して急いだけどね」
「葵依の寝坊はほぼいつもでしょ?」
「そんなこと、多分ないし!」
「そーお?」
いつも通りの朝、いつもと同じ通学路
道端に咲いた小さな花が綺麗で目を奪われる。
昨日も今日も、きっと明日も変わらぬ日常
こんな当たり前の日々がとても平和でとても良い。
――あとは少し、なんか面白いことが見つけられたら、なおいいねぇ。
「ねぇ、葵衣」
「ん?」
「あのね? 時間がぁ、少しぃヤバいかも?」
「え!?」
「お花見てたりしたからだね」
「ありゃりゃ」
少し先に見えるバス停と横を通り過ぎるバス。
「んー。タクシー呼ぶ?」
「いや、走る!」
「えぇー」
「ほら、行くよ茅絵里!」
葵依は茅絵里の手を引き、そして二人はバス停に向かって走り出した。
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