第6話 -死にたい私は出会いました-
「そういうお前こそ、行かなくていいのか?」
俺が話しかけてきたこいつに、そう返すと、
「僕のことはいいからさ、君のことを教えてくれないかな?いじめられっ子君?」
なんだか腹が立つ返答だなこのチビ。
目の前のこいつは、自分よりも一回り小さい。
だが、少なくともあいつらよりは言動に知性を感じるな。
「君は同じクラスのあの子たちにいじめられている。それなのに、必死になってランクを上げようとしない理由がわからないだ。ランクを1つ上げれば、いじめなんてなくなるはずだ。なんせこの学校ではランクが高いほうが偉いのだからね。」
ふむ。なんと返答しようか。
正直いじめなんて痛くもかゆくもないから無視してるだけなんだが。
もしもそのことがバレてしまったら、怪しまれるだろう。
俺は思考を巡らせる。
「諦めっすよ。この現状はもう変えられない。どうせ上のランクに行っても、実力は変わんないんですから。結局いじめられるだけっすよ。」
それらしい返答をしておいた。
「なるほどなるほど。君の言いたいことはよーくわかった。今はそれで納得しておいてあげるよ。」
「納得いただけたなら何よりっす。」
多少不満げではあるが、納得した様子で帰ろうとしている。
「っと、そういや名前なんでしたっけ?」
「えぇ、名前覚えてないのかい?割とこのクラスながいでしょ?──まぁ、名前覚える暇もなかったか。」
そうして足を止めた。
「しょうがないなぁ。僕の名を教えてやろう。僕の名はフェイ・ネムーク。もう忘れるなよ!」
そう言い残して教室から出て行った。
「……あなた、いじめられてるの?」
どうして、といった様子で、ハルカが話しかけてくる。
「(まぁ、俺は弱いからナァ)」
「そんなわけがないでしょ。」
即答しないでいただきたいものなんだが。
「(さて、こんなところにいても何にもならない。俺も帰るかな。)」
そうして俺は教室を後にする。
「そういえば、面白いことになったわね。」
帰宅中、突然話しかけられる。
「というと?」
「だってあの子たち、見つかりもしない人間を探し続けるんでしょ?」
「(そういえばそうだったな。)」
ハルカ・シノゾムはすでに死んでいる。
だからこそもう世界中どこを探しても見つかるわけがないのだ。
「(死体だって完璧に処理したしな。)」
「悔しいけどそうね。死体現場を見てもきれいさっぱり何もないもの。しかも犯人は学園のEクラス。そんなのだれにだってわからない、そういうことでしょ?」
「(あぁそうだ。だれ一人だって気づきやしない。そういわれると滑稽だな。ランクアップを目指して皆が死に物狂いで探す。それでも見つからない。かわいそうで哀れだ。)」
「一体誰のせいでこうなってるとおもってるんだか。」
そんな話をしながら、俺たちは真昼間から帰宅した。
死にたい私は死ねました!! @ippanjin_A
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