第3話 -死にたい私は勇者でした-

この世界は、剣と魔法の世界である。

剣や魔法を使い、魔物を倒し、レベルアップ、そうして、ダンジョンを攻略していく。

ただし、それだけではない。

魔王の存在である。

魔王とは、魔物や魔族を従え、世界征服を目論む者である。

そう言う世界に私は『勇者』として生まれた。

勇者は生まれつき特別な魔力を持っている。

そして、強い。

強すぎるが故に、尊敬の眼差し以外にも、視線が浴びせられる。

それも、勇者という私だ。


そんな私は今幽霊になって男の子の家にお邪魔しておりま〜〜す!!

いやぁ、まさか私にこんなことがあるなんてねぇ……お母さんこれを聞いたらどうなるだろう。

……お母さん、大丈夫かな。


ちなみに、わたしが彼についていくと、彼の部屋についた。

すぐに彼はどこかへ行ったから、もういない。

つまり、散策し放題、ってわけ!

とはいっても、面白みのない部屋だけどね。

部屋には大きな勉強机?と、本がびっしりと詰まった本棚、そしてベッド。

ざっくりいうと、これだけね。ミニマリストなのかしら?

そう考えながらあたりを見渡していると、勉強机の上に、本が置いてあるのを発見した。

「なにこれ?」

日記かしら?タイトルがないからわからないわね。

そして、その本を手に取る。


……



「と れ な い!?!?!?!?」

あそっか。よく考えたら私、幽霊で実体がないのか!

なんとか開けないか、と触り続ける。

が、効果はない。


「なにやってるんだ。」

ガチャ、と、後ろのほうから音がする。

あら。帰ってきちゃった。



「なるほどねぇ。」

あれから、私は何をしていたか説明した。

説明、というより、弁明かな?


「あの、事情は分かったから、あんまり部屋をまじまじと見るのやめてくれ。いい気持ちはしない。」

「あぁ、ごめんなさいね。だから、その、痛々しい視線をやめてくれない?」

「あぁ、すまん。だがお前が人の日記をのぞこうとしたのが悪いんだぞ。」

「だから、それについては謝ってるでしょう?」

結局、あの本は日記だったらしい。


「そういえば、何をしていたの?」

「突然話を変えるな、まぁ野暮用だよ。」

「というか、勇者である私を殺しておいて、なんでそんなにのんびりしてるの?宣戦布告なんでしょう?」

「話を変えるの好きだね。ま、いいよ。時間はあるからね。なんせ僕の魔法で証拠はすべて消したから。」

「そうだとしても、余裕ありすぎでしょう。」

「ま、なんせ僕は最強だからね。」


いったい、どこからその自信がわいてくるのだろう。

ただ、その言葉は、あまりにも、説得力のある、重い言葉だった。

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死にたい私は死ねました!! @ippanjin_A

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