俺以外全員転生 Part2
奈月沙耶
ささくれ
ゴールデンウィークを前にして、前世最強クラス(命名、俺)の面々は相変わらず和気あいあいと前世トークに花を咲かせていた。
ツートップは何といっても織田信長=相田くんと、坂本龍馬=伊藤くんで、今期大注目の紫式部=宇佐美さんが続くというところ。
前世の地位や世界的なネームバリューで立ち位置はもっと上であろうアクバル大帝=江浦くんやシャルル・ドゴール=尾崎くんがいるのに、現代日本における人気の度合いがヒエラルキーに影響しているのはいわんや、前世とはなんぞや……と前世ダンゴムシ(仮)の俺は考えざるを得ない。
前世がなんだ、大事なのは今生だろう、と華やかな前世トークに参加できない前世ダンゴムシ(仮)の俺は窓際の机でむしゃくしゃした気分で頬杖をつく。
やがて担任教師がやって来てホームルームが始まる。
「まずはみんなに転校生を紹介する」
転校生!? こんな前世最強クラス(命名、俺)に入ってくるとは気の毒な……いや待て、これは、俺に仲間(前世は虫以下)ができるチャンスでは。
俺にようやく友だちが……期待を込めて見守る中、
「神谷です……」
黒板の前で控えめに頭を下げたのは、線の細い大人しそうな男子だった。
オーラがない。前世が偉人というふうには見えない。これはきっと仲間だ……!
担任教師が出て行くと、織田信長=相田くんがさっそく神谷くんに話しかけた。
「ねえねえ、神谷くんの前世って誰?」
「ぜ、前世!? え、言って良いのかな……」
「いいよ、いいよ。あ、オレは織田信長。こっちは坂本龍馬」
「へえぇー。あ、僕はね、イエス・キリストなんだー」
神の子きた。
呆然と、目の前が真っ暗になって、その後のことはよく覚えていない。
放課後。おな中の藤間(前世は山野さんちの飼い犬)と一緒に帰りながら愚痴っぽく話すと。
「神の子かぁ」
通学路沿いの山野さんちの庭にある、朽ちかけた犬小屋に穏やかな視線を向けながら藤間は優しく微笑んだ。
「人類はみんな神の子だともいうよ」
「前世はみんなダンゴムシだって言われた方が慰めになる」
「選ばれしダンゴムシが人間に転生できるってこと?」
「…………」
選ばれしダンゴムシ。嬉しくない。
俺の心のささくれは癒えそうもなかった。
俺以外全員転生 Part2 奈月沙耶 @chibi915
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