精霊
気候も大分暖かくなり 街道を歩いていると汗ばむほどだ 手ぬぐいで汗を拭きながら俺達一行は進む
程なく街道沿いに大きな樹を見つけ 一息つく
次元収納から桃を取り出し皮をむき種を取りボウルに入れて風魔法で小さく刻み 次に氷魔法で凍らせる
それを崩して小さい椀に入れてスプーンと共に 巫女様 ユカリ ヤヨイ 一緒に旅する夫婦に渡す
「あの これは?」妻の方が聞いてくる 巫女様たちも不思議そうな顔で椀を見ている
「それは シャーベットといって 果物を凍らせたものです 暑い時期には体が冷えていいですよ」
巫女様が最初に食べて 顔をパアっと輝かせて「美味しい」と一言
それを聞いて他の者達も食べ始める 暫くはシャクシャクという音と虫の鳴き声だけが街道に響いていた
「「ありがとうございます おかげで生き返りました」」
「セイ様 本当に美味しかったです」夫婦とヤヨイからお礼を言われる
「魔法はあのような使い方もあるのですね」ユカリからは感心したように言われた
涼しくなって日も暮れ始めたので 野営地を探すのに街道沿いの小道に入る
少し広めの空き地を見つけて ここで野営の準備を始める
いつものように 巫女様と俺達のテントを出し 夫婦のテントも俺とユカリのテントの隣に設営させる
ヤヨイは巫女様のテントに一緒に入り 皆 準備が終わった所で夕食を作り始める
旅の途中で採った山菜と 鳥を一羽仕留めていたので それらを調理する
親父の地獄の特訓がこんな所でいきるとは 当時思いもしなかった
山菜は串焼きと炊き込みご飯に 鳥は一口大に切り焼き鳥風にして食べる
「遠慮せずに 食べて下さい」ジッと見ているだけの夫婦に勧める
「これは美味い!!」「本当に!!」夫婦揃って絶賛してくれる
ヤヨイは弟子入りした巫女様が肉類を食べないので 少し羨ましそうに俺達が焼き鳥を食うのを見ながら 巫女様とキノコの串焼きと山菜ごはんを食べていた
「ヤヨイ 私が肉類を食べないのは 私が大巫女と言って大神主より上の立場なので
より一層の修行をしているだけだから 身体もまだ小さいお前は肉類を食べて大きく丈夫になりなさい」
そう言われてヤヨイは戸惑った後 肉串に齧り付いた 食べ盛り 育ち盛りだからな
沢山食べなさい
結界を張ってあるので みんな 朝までぐっすりと眠り 昨日の山菜ご飯で作っておいた握り飯で軽く朝飯を食べて出立する
今日も暖かい日になりそうだ
昼休憩の為 街道から逸れた所に空き地を見ついけ それぞれに体を休める
薪を探しに行ったヤヨイが背中に薪を背負い 掌に薄い青色をした何かを乗せていた
「まあ 風の精霊ですね」巫女様がヤヨイの掌を覗きながら俺等に教えてくれる
魔力持ちにしか見えないらしく 夫婦はキョトンとしてヤヨイを見ている
「大きな木の下に倒れていたんです 心配で連れて来てしまいました」ヤヨイが言うと 「魔力切れですかね?」巫女様も精霊が倒れた原因は分からないようだ
身体にけがは無さそうだが 辛そうな表情をしている
「少しづつ 魔力を流してみましょう」ガラス細工で出来たような精霊をヤヨイから受け取り ほんの少量づつ 魔力を彼女に流してみる 少し苦悶の表情が和らぎ顔色?も良くなっていく もう少し多めに流していると目を覚ました
「ここは? あなたたちは誰?」体を起こし ゆっくりと飛んで行こうとするが一メートルも飛ばずフラフラを落ちてきた
それをヤヨイが受け止めた事に精霊はビックリしている
「あなた 私が見えるの?」ヤヨイの掌から顔を上げジッと見つめている
「あなたが 木の下で倒れていたから みんなに助けを求めたの」
「じゃあ あなた達は魔法使いなの?」
俺達をグルリと見回し巫女様の所で目を止める
「助けて頂いて ありがとうございます 巫女様」精霊が礼を言うが
「いいえ あなたを助けたのはそこにいるヤヨイとこちらのセイ様ですよ」
巫女様が答えると
「えええ 普通の人間が精霊を助けてくれたんですか?」
言いながら俺をマジマジと見る
「とにかく ありがとうございます」そう言って また飛ぼうとするが 直ぐに落ちてしまう
「目が覚めたなら 丁度良い これから君に魔力を渡すから キリのいいところで合図をくれないか? 寝ている君に勝手に魔力を渡して魔力暴走しても困るからね」
精霊は俺の掌に乗りながら「分かったわ」力無く答える
魔力を流すと「何これ!! 美味しい!!」目を輝かせながら叫ぶ
魔力に美味い 不味いがあるのか?そんな事を考えていると
「ストップ ストップ 美味しいからって食べ過ぎちゃ駄目ね 太って飛べなくなるわ」 そうなのかチラッとユカリを見ると小さく頷いている
「ありがとう 本当にこれで元気になったわ」 精霊は辺りをブンブン飛んで元気になったみたいだな
精霊が突然 俺の目の前に来て
「元気にしてもらった ついでとは言い難いけど 一つお願いがあるの」
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