牛鬼と茨木童子

ヤヨイに突き飛ばされ 後ろにたたらを踏んだ商会頭が腕を伸ばし 何とかヤヨイを掴もうとするが 伸ばした腕は ユカリによって切り落とされた

「お前達 出てこい!!」後ろの森に叫ぶと ザザザッと鬼化した数人が出てきた

「あの娘を食えば 俺等は更に強くなれて 来るべき魔神様の世界で生き延びられる さあ 捕まえろ!!」商会頭が叫ぶ


「させねえよ」俺は向かってきた鬼達の首を切り裂いていく

最後に商会頭の首を落として 大きな穴を掘り鬼達を纏めて投げ入れ「業火の炎」で灰になるまで焼き尽くす

残った灰は巫女様により浄化された


廃れた神社に着くと 鬼共が酒を飲み 人間の手や足を食い千切りながらの宴会をしていた 彼らの前に出て

「私らは隣国への商いに行く為に この山を越えようと思いましたが 道に不慣れな上 陽も落ちてしまいました 軒先だけでも貸して頂ければ お礼にこの酒を贈らせていただきます」酒を三樽 俺の前に置き 様子を見る

「我等 鬼の住処に泊まりたいだと? ワッハハハ こりゃ面白い」

「私達の身代わりの為の酒樽でございます」

「うむ まあ  良かろう 酒に免じてお前らは食わんと約束しよう」

多分 こいつが親分の酒吞童子だろう 隣に座っているのが弟分の茨木童子かな

二人共 見目麗しい美男で多くの女性からの手紙を燃やした呪いで鬼になったと言われていた

一口で鬼でさえ酩酊させる酒を彼らは飲み始めた 二時間程したところで酔って皆眠り始めた

俺は草薙の剣で酒吞童子に斬りかかる 奴は目を覚まし フラフラと俺と対峙し

「勝負事なら正々堂々とかかってこい」 意外な事を言いながら 剣を俺に叩きつけてくるのを躱しながら 懐に潜り込み 左肩から袈裟斬りにする

「ブハァ!!」呻きながら片膝を付いたところを首を切り落とす

騒ぎに気付いた鬼達が起き始めた それらを俺とユカリで倒していくが 茨木童子だけが逃げてしまった

先程と同じように穴を掘り 鬼達を焼き尽くす

隠れていた巫女様を呼んで核の封じ込めの為の祝詞を奏上してもらい 結界を張ってもらう 麓の街に転移して 賢者候補を連れてきて ヤヨイと共に封印の遣り方を巫女様が指導していく

一か月ぐらい滞在して指導して 辺りに散らばった靄も浄化していくそうだ

ヤヨイは朝は巫女様に教えを請い 祝詞や邪気祓いを習い 午後はユカリに戦い方を教えてもらっていた

俺とユカリは鬼が居ないか探索し ついでに食料になる果物やキノコを採取していた 賢人候補が一人前になる頃 俺達は神社を後にして次の封印を目指した 


次の国に行く街道で 旅人を襲う牛鬼と茨木童子を見つけた

牛鬼の怪我はほとんど治っており ユカリが今回も風魔法で牛鬼を切り刻み」 弱ったところをユカリが斬り付けるが 突然横から現れた茨木童子がユカリに斬りかかる

反対に飛んで茨木童子の剣を躱すが 読んでいたかのように牛鬼がユカリを殴りつける ユカリは吹き飛ばされ 木に叩きつけられた

「ユカリ!!」ユカリの横に飛んで行き 追い打ちを掛けようとした牛鬼の手首を掴んで 力技で捻り転がす

「大丈夫か?」抱き起しながら聞くと 「大丈夫です 油断しました」

転がっている牛鬼に薙刀を突き刺しながら 微笑んで言う 

「そうか」呆れて俺はその様子を見ていた

「死ねやー!!」後ろから いきなり茨木童子が斬りつけてきたので 背中に廻した剣で受け止め 前に転がり態勢を整える

茨木童子と向かい合い 連撃を繰り出してくるのを捌きながら間合いを詰めていく

右手で剣を受けながら左拳を鳩尾に叩き込む

「グベェ」体を九の字に曲げて 木々を薙ぎ倒しながら吹き飛ぶ茨木童子

立ち上がり また逃げようとしたので前に回り込み 横薙ぎに胴体を切り裂く

「クプッ」短い断末魔を上げて倒れ 黒い靄となって散っていく

ユカリの方を見ると あちらも黒い靄が空に飛んで行く所だった


巫女様とヤヨイが祝詞を上げ 黒い靄を光の粒子に変えて消してしまう

「ヤヨイ 良くできました」ヤヨイの頭を撫でながら巫女様が褒めると

「ありがとうございます」ヤヨイは照れながらも嬉しそうに笑う


襲われていた旅人が 少し怪我をしているみたいなのでヤヨイが治癒魔法で治すと

地に這いつくばって涙を流しながら お礼を述べる

[私はベットを申します こちらは妻のシアです 危ない所をお助けいただき 真にありがとうございます]

ヤヨイは困惑しながら「気にしないで下さい 頭を上げて下さい」と言いながらユカリの後ろに隠れ 巫女様はニコニコしながらその光景を見ていた

二人の旅人は夫婦でシアさんの弟の店の手伝いに隣国へ行く道中だそうだ 邪魔で無ければ帯同させて欲しいとの申し出を巫女様が快諾し共に向かう事になり 道中 隣国の話をいろいろと聞いたが 今まで周ったのが一の国 二の国 三の国 ここが四の国で文化的には日本の江戸時代っぽい これから行くのはファイ王国と言って 基本的に石やレンガの街並みだそうだ いわゆるナーロッパみたいなものかな


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