篝火

宿でまったりしてると キヨミがやって来た

「主殿 あの商会頭はとんだ曲者ですぞ 魔神崇拝結社「篝火」のメンバーみたいです 奉公人を募っては魔神崇拝の儀式の生贄に使っているようです」

「なんだ?そりゃ」俺が聞くと

「魔神を崇拝し復活を望む者達の集まりです」ユカリが教えてくれる

[面倒臭い奴らだな]

「奴らはヤヨイ様を狙ってくるようです 「あの娘を食えば我が力は莫大なものになる」と商会頭が叫んでいましたから」

「そうか」俺は独り沈思する

俺が黙っていると 痺れをきらしたのか「こちらから 先に仕掛けますか?」ユカリが 膝立ちで言ってくるが

「暫くは様子見だな キヨミは引き続き情報収集をしてくれ ユカリは警戒を強めてくれ」

「「はい 畏まりました!!」」

魔神崇拝者か ヤヨイを食えば力が増える?意味が分からない

その夜は何事も無く 朝飯を食いながら老婆に何故断ったのか聞いてみた

「あれは 人じゃねえからですよ」

「エッ!!」 ヤヨイだけが驚いている

俺もユカリも巫女様も そして老婆さえもあの商会を覆う恨みの瘴気 奉公人の生気の無さ なにより商会頭が放つ禍々しい雰囲気と血の匂いに気付いたのだ

「お婆さん ここからは私達に任せて村にお帰りなさい」俺が提案すると

目を瞑って暫く考え

[そうですね 巫女様と使徒様に任せれば悪いようにはならないでしょうから こんな婆いたところで 足手まといにしかなりますまい」

巫女様達には宿から出ないように言って 俺が老婆を抱き上げ「飛行」の魔法で村まで送る事になった

途中 聞いたところによると ヤヨイの両親は「流れ人」というか違う世界から来た人だったらしい フラリと村に現れて居就いたそうだ 最初は不思議な言葉を話し着ている服も見た事が無い物だった

時間が経つにつれ 村にも慣れて生活するようになったが二人共に病に罹り亡くなり 哀れに思い面倒を見ていたが 自分の身体が言う事を効かなくなり 自分の看病で

あの子の人生を無駄にしたくないと以前の奉公先に手紙を送り ヤヨイの先行きだけでも決めて静かに人生に幕を下ろすつもりだったらしい 


村に到着しベッドに寝かせ最上級の回復魔法をかけ 

「ヤヨイが会いたい時には 何時でも来れますよ  何かあればこの黒猫に言って下さい」キヨミの分体を指さしながら言って「転移」で宿に戻る

宿に戻ると昼食の準備中で 昼飯を食いながら 無事送り届けた事 連絡役としてキヨミの分体を残してきた事を伝えてヤヨイを安心させる


さて 今後の方針だがヤヨイを守りつつ この街に巣くう「篝火」の殲滅かな

魔神崇拝とかこれから先 邪魔にしかならないし 街の人を人質に取られでもしたら動けなくなるからな

取り合えず この街に封印されている核を見に行くか

山の中腹にある廃れた神社にあるらしい ここを守っていた賢人は既に倒されていて

新しい賢人も近づけないらしい

核から漏れ出ているのは おれの世界で言う「酒呑童子」みたいなので 神話に倣って酒を沢山買っていく

道中 商会頭に雇われたと見られる ゴロツキや商会の暗部みたいのが襲撃してきたが俺とユカリで顎を叩き割り 戦闘不能にしておいた  飯を食うのも難儀するだろうが因果応報だな

シロの下でヤヨイは震えていたが巫女様に 「これも修行です」と言われ 俺等の戦いを見ていた

そこから 少し歩いた所で 牛の頭に人の身体をした身の丈三メートル程もある化け物と遭遇した 多分 牛鬼だな 身体の大きさの割には素早く俺とユカリの間に入り込み 先ずはユカリへ丸太のような腕を振り下ろす ユカリは薙刀の柄の所で受けるが攻撃が重いのかズズット腕を受けたまま後ろに下がる

空いた方の腕で後ろにいる俺を薙ぎ払おうとするが それを躱し腕を切り飛ばす

痛みに耐えかねて ユカリに振り下ろした腕に入れていた力が一瞬弱まる それを見逃さずユカリが風魔法で牛鬼を切り刻む 風が止むと全身血だらけになりながらも牛鬼は逃げ出した

「追いますか?」

「いや 今はいいだろう それよりユカリ怪我は無いか?」

「大丈夫です ありがとうございます」


「お二人共 お強いんですね」ヤヨイがシロの下から這い出て 俺等に声をかける


「見つけたぞ 小娘!!」木の間から何かが飛び出しヤヨイを羽交い絞めにする

顔は赤黒く髪の生え際左右に親指程度の角が生えているが こいつ商会頭だ

「お前を食えば 俺は更なる力を手に入れる事が出来る」

商会頭は言いながらヤヨイの首元に食いつこうとするが それよち早く巫女様の投げた独鈷が彼の頬を貫く


「グベェ」商会頭の羽交い絞めが緩まったとこをヤヨイが上手く抜け出す


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