大鯰
玉藻に企てたられた一平太の国との戦争も回避され 前の様に交流が再開され この国と一平太の国の関係も良好になった
さて この国では 魔神の核と共に大鯰も封印されているらしい
「大鯰は 頭と尻尾が二つの要石により抑えられています
大鯰が暴れれば大地に激震が起こり 国に多大な被害が出ます」キヨミの報告によると 最近要石も封印も緩んでいるらしい 黒い影が邪魔をして抑えている賢人も苦労しているとの事だ
大鯰と魔神の核を封印している所は 草原の真中に建つ寺院みたいな場所だった
建物は壁と天井だけで 床は剝き出しの地面でそこに封印されている核と要石がある
建物の周りと中には既に黒い靄が渦巻き 禍々しい雰囲気を醸し出している
それらを切り裂きながら 黒い靄と闘ってている賢人に近づくと二本出ている要石を気にしていた
昔 ある商人が抑えられている大鯰を見ようと人を数百人雇い 要石の周りを掘らせたが一年経っても底に届かず諦めたらしい 要石は円錐形をしているらしく掘れば掘るほど大きくなっていたそうだ
地面から出ている要石の高さは 元は子供ぐらいの高さだったらしいが 今は俺の背丈を超えている 抑えが効かなくなりつつあるのだろう
要石に纏わり付いている黒い霞を俺とユカリで斬り払っていき 俺が要石に抱き着いて下に押し込む 腰ぐらいまで押し込んだ所で何かにぶつかった手応えがあった
もう一個も同じように押し込むと似た手応えがあった これで大丈夫かな
苦戦している賢人の側に行き 黒い影を切り刻む
その後 巫女様の祝詞により結界を強固にしていくが途中で地響きが鳴り 大きく大地が揺れる 見ると要石がさっきの倍ぐらい地表から出てきている
「巫女様 もう退治した方がいいんじゃないですか?」
俺が聞くと
「そうですね 要石も弱っていますし 出来ますか?」
要石の片方を握って 「電撃!!」唱えると石を伝って雷級の電気が下に向かって流れていく 一瞬の大地の揺れの後 静かになった 念の為 もう片方にも電撃を放っておく 今回は揺れも起こらず静かなままだった
要石も役目を終えたのか サラサラと崩れ落ちていく
「ありがとうございます 封印と要石の両方を監視していましたが ここ最近は黒い影の数も増え 要石の高さも上がり 難儀しておりました」賢人が俺と巫女様に疲れた顔で礼を言う
外に出ると先程の地震に驚いた町の人達がこちらに向かってきている
集まった人達に 大鯰を退治した事を巫女様が話し 問題も無くなったと説明すると 人々は納得して帰って行った
次の封印目指して旅立ったところ 街道の真中に大きな岩があり 旅人達が通れずに岩の前でたむろしている 大鯰の地震で上から落ちてきたようだ
次元収納に岩を入れ 街道を通れるようにし俺達も先を進む
暫く行くと 道端で蹲っている老婆と彼女を介抱する少女がいた
「どうしたんですか? 大丈夫ですか?」巫女様が声をかけるが老婆の反応は無い
「お婆ちゃんが いきなり倒れてしまって!!」少女が涙声で訴える
熱中症かな? 俺は考え 竹筒に入っていた水を飲ませる 荒かった息も次第に落ち着き 薄っすらと目を開ける
老婆を抱き上げ街道沿いの木陰に移し回復魔法をかけて横に寝かせ
「もう少ししたら 良くなると思うよ」少女に言うと
「ありがとうございます!!」目に涙を溜めながらお礼を言ってくる
そんな少女を巫女様がジッと見ている
「どうして こんな所に居たの? 隣国への旅の途中なの?」
「そうです 私が小さい頃に両親は病で亡くなり お婆さんに育ててもらい 読み書きや計算 礼儀作法も教えてもらって 隣国の商家に働き口を探しに行く途中だったんです」
少女は老婆を見ながら話す
「何 小うるさく泣きじゃくるから 面倒だから飯を食わせてやっただけだよ もう一人でも生きていけるようになったから どこぞの商家に売り払おうと思っただけさ」
老婆が言うが少女は優しい顔で老婆を見ている
自分がもう長くないのを悟って 少女の先行きを考えての事だろうな
ユカリにも老婆の状態が分かったのか
「何故 あのような嘘を言うのでしょう?」俺の耳に口を寄せて聞いてくる
相変わらず少女をジッと見ていた巫女様が 老婆に語り掛ける
「この娘には 巫女としての資質があります お婆さんさえ良ければこの娘を私に預けてくれませんか?」
突然の申し出に老婆はポカンと口を開けて巫女様を見つめた
「この子に巫女の適正があると言うのですか?」
老婆は少女を見て 巫女様に問いかける
「ええ その子には巫女としての資質があります 修行をすれば
立派な巫女になれるでしょう もちろん最初は私の側使えとして働いてもらいますが
無事 巫女になれば 住む場所にも食べ物にも困る事はないでしょう あなたはどうしたいですか?」再度 老婆を見て次に少女を見て巫女様が言う
「願ってもない事です こんな娘で良ければ巫女様の側使えとして 使って下さい」
老婆が言い 少女も頷ている
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