玉藻

一平太の話を聞き 領主は突貫工事で街道沿いに砦を建てた

人同士の戦に加担する気は無いが 暫く滞在する事にし 領主への滞在費代わりに砦の前に深さ3メートルぐらいの堀を作った

相手は1000人ぐらいだが こちらも領兵 町民 農民併せて同じぐらいの兵力だから 小競り合い程度になるんじゃないだろうか?


ここは放っといてもいいが 封印石を解いた者が気になる

巫女様も同じようで 隣国へ行きたいと頼んできた 俺の転移は一度行った所しか行けないので 先ずは隣国へ徒歩で向かう事になる その旨を一平太に伝え 俺達は出立する

隠蔽魔法で隣国の関所を通る時 出兵する集団とすれ違った 編成は思った通り一平太の所とほぼ同じだった 物々しい雰囲気をさせて 関所では通行する者達を念入りに調べている その横をすり抜けていき町中に入る


宿屋に入り 中居さんや他の客から情報を聞く

隣国への戦争の為に物資を集めたり 農民から徴兵をしているらしい 今回の一平太の所への戦は前哨戦だそうだ

宿でゆっくりしいるとキヨミが突然

「ご報告です 封印を解いた者が分かりました この国の宰相が法術士にやらせたようです」

「何の為に?」俺が聞くと

「この国は宰相の傀儡として若い国王が治めています 若いながらもしっかりとした国王で 彼を操るために妖狐を復活させたみたいです」

「セイ様 割れた封印石を見に行きませんか?」巫女様がキヨミの報告を聞き俺を見る

森の中の禁足地にあるその石は綺麗に真っ二つに割れていた 周りには千切れた縄が散らばっている 割れた石の裏に寂れた祠がポツンとあった 中には黒い狐が祀られている

「セイ様 封印を解かれた妖孤が来ます」キヨミの言葉に俺達は木陰に身を隠す

ザッザッと草木をかき分ける音がして黒い着物に浅黒い肌の女性が茂みから現れた

割れた石を忌々し気に見て 祠の狐像を愛し気に手に取り胸に抱く


「見つけたぞ!! 玉藻!!」横手の藪から数名の抜刀した侍が三人現れ 妖狐を取り囲む

「我等は国王の命を受け 宰相を調べていたが 全てがお前の画策だと判明した」

「宰相を誑かし国に混乱を招いた罪 償ってもらうぞ!!」

三人同時に斬りかかるが 妖狐がするりと躱すと同時に侍三人がバタバタと倒れる

「そこに隠れている者も出て来るがよい!!」木陰に身を隠している俺達に向かって玉藻が言い放つ

 俺達は木陰から出て 玉藻と対峙する

「巫女に魔導生命体に・・・ お前は何だ?」俺を指さして睨みつける


「まあ 良い」ニタリと笑うと 玉藻の手足に黒い鋼のような爪が生え 九本の尻尾が伸びてくる

鋼の爪で巫女様を襲うが ユカリの薙刀で爪を弾かれる

俺は玉藻の後ろに周り 九本生えている尻尾の一本を切り飛ばすと 残りの尻尾の先が鋭くなり 俺に向かってくる 剣で受け止め流しながら 残りの尻尾を切り離していく

切られた尻尾はその場で黒い霞になって消えていく 尻尾を切る毎に玉藻の身体が黒から灰色になり 全てを切り落とすと薄汚れた白になった

ユカリへの攻撃も散漫になり やがて攻撃自体を止めてしまった


パタリと横に倒れた玉藻は 巫女様を見ながら「どうか 私をお救い下さいませ 巫女様」と涙を浮かべ浅い息の中懇願する

「私は 昔怪我をしたところを炭焼きの男に助けられました その男と共に過ごしていましたが 私の方が寿命で死んでしまい あの人は悲しんでくれて祠を建て御神体を作って私を祀ってくれました 気まぐれに参拝する幼子の健康を見守ったり 目や足腰を患った老人を癒していたら その内私を祀っている祠にお参りすれば 御利益があると噂になり 簡単な願いを叶える度に私の神格が上がり その内 欲に塗れた願いも叶える度に私に邪悪なモノが生まれ あのような姿になってしまいました お願いです あの人のいる天に私も還らせて下さい」


「分かりました」そう言うと 巫女様が祝詞を奏上し 暫くして玉藻の身体が光の粒子になり消えていく

黒かった御神体は白くなり地面に転がっていた それを拾い上げ祠に置く

「感謝する」 高い空から言葉が降ってくる

倒れていた侍三人は死んではおらず 気を失っていただけのようだ

やはり 黒いモノに完全に乗っ取られたのでは無かったようだ

侍に玉藻を退治した事を話し 玉藻関係は終わったと説明する

玉藻を解放した法術士は 他にも何かやらかす気がしたので 拘束しておくように頼んでおく 巫女様の言葉なので直ぐに王に伝わるだろうし動いてくれるだろう


 



 






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