黒猫

閉門ギリギリで関所?に着き 隠蔽で姿を消したまま 門番の横を通り抜ける 門番が手に持っているのは巫女様と一平太の手配書だろうか 行き来する者達の顔を明かりで照らし手配書と見比べていた

 街道に出た俺達は まだ顔色のすぐれない一平太を俺の背に乗せ走る

「今夜はここで一泊しましょう」黒装束が街道から少し入った場所で提案した 巫女様と一平太を無理させる事もないのでテントを出し用意する]」

巫女様と一平太を先に休ませ ユカリと焚火の前でお茶を飲んでいると 黒装束が現れ 俺達に報告を始めた

「どうやら 隣領にチョッカイをかけているのは隣国みたいです 関税を上げたり 細かいいざこざを仕掛けて 戦争をこちらからしかけさせようとしているみたいです」

どういう事だ?戦争をしかけさせる?何故? と考えてる中 巫女様がテントから出てきた うるさかったかな?

「先代の使徒様により 国家間での戦争は禁じられております 侵略行為ではなく 防衛の為の戦いだけは その限りではありません ですので戦争を仕掛けてくれれば 相手としては 防御の為との大義名分ができます そして賠償として相手国の領地なりなんなりが手に入る訳です」 巫女様が悲しげに説明してくれた

中々込み入った事情がありそうだな

「結局 お互いが 相手がシビレを切らせるのを待っている状態か」俺が呟くと

「そうですね お互いが切っ掛けを待っている感じです」巫女様が答える




「分体からの連絡が入りました 隣国の封印の石が割れたそうです」

黒装束が言う 分体? じゃあ本体は? 俺はユカリの膝でゴロゴロと喉を鳴らす黒猫を見る 

「封印の石が割れたのですか? それは困りましたね」巫女様の呟きに視線を黒猫から巫女様に戻す

「何か 良くない事なんですか?」俺が不思議に思って聞くと

「妖狐と呼ばれてる邪悪な狐で 時の権力者を操り  国を疲弊させ 遂には国を亡ぼすといわれているモノです 先代の使徒ゲン様が封印していかれたのですが 封印を破られるとは 」

巫女様の言葉に黒装束が 「それが 意図的に解かれたようです」

「意図的に?誰かがあの封印を解いたというのですか?」

「はい 解いたのは誰かは今調査中です」

黒装束が答える


「で? お前が本体なのか?」ユカリの膝から黒猫の首を掴み 眼を合わせる

「ニャ~」俺から目を逸らして鳴くが 少し魔力を通すと尻尾を立てて 全身の毛を逆立てる

「わ 分かりましたから お止めください」

黒猫が流暢に話し出す

「私の名はキヨミと申します 泉の守り神の眷属でございます 貴方たちを蔭から見守るように命を受けてました 毒蛙によって力を失っておりましたが 皆様のお陰で 力が戻りました ありがとうございます」

「まあ そうなのね」巫女様が俺からキヨミを取り上げ嬉しそうにモフモフしている

分体は いつの間にか消えていた 本体に戻ったのかな?

「それでキヨミ 他に何か情報は無いのか?」

「七日程でこちらの領に戦を仕掛けるようでございます」

「ならば 明日朝一で一平太の主の所へ転移で行くか」

「使徒様は転移を使えるのですか?」巫女様が驚いている


「ええ 使えますよ それと今更なんですが 使徒様とか主様じゃ照れ臭いのでセイと呼んでいただけませんか?」

「分かりました セイ様」巫女様は了承してくれたが

「いえ 主様は私の主様なので 名前呼びなど出来ません」ユカリは譲らない

「了解しました セイ様」キヨミは適応力があるな

次の日 俺達は揃って 一平太の主の屋敷前に転移した 事情は話していたが それでも一平太はビックリしている

屋敷に近づいて行くと 守衛が俺達を警戒するが後ろにいる一平太を見て 驚きながら声を掛けてくる それを遮って

「直ぐに 主に面会の許可を取ってくれ」と一平太に言われ 屋敷内に走って行く

10分程待たされて 俺達は領主の部屋へ通される

「おお 一平太 どうだった?話は付いたか?」

一平太は立ち上がり 上半身裸になり 背中を領主に見せる

「これが 返答でございました」

背中についた 深い斬り跡を見て領主が唸る「惨いな 大丈夫なのか?」

「はっ こちらの巫女様とセイ殿に助けて頂きました」

「一平太を助けて頂き 誠にありがとうございます」領主が頭を下げる

「いえ 当たり前の事をしただけですから どうか 頭を上げて下さい」

巫女様が言うと 頭を上げた領主に一平太が「奴らがこの領地を狙って来ます」

一平太の言葉に 領主は「どういう事だ?」と言った後 考え込む












  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る