第14話毒ガエル

助けた姉弟の村は俺達の目的地の途中にあるらしい

途中野営の必要がある為 宿屋に弁当と夕食を人数分頼む

「あの 山菜の天ぷらを多めにお願いします」巫女様が小さい声で料理人に頼んでいた 「分かりました」料理人が笑顔で答える 出来た弁当と夕飯を次元収納に入れて

宿代を払おうとすると 「巫女様から お代なんて頂けません」とか言って受け取ろうとしない 「いや それは困る」俺が言うと

「いえいえ 巫女様に宿泊して頂いただけで うちとしてはそれだけで光栄です」という主に

「いや 逆に巫女様がその威光で ただ飯やただで泊まったと言う方が巫女様に失礼になると思わないか?」

「そ それはそうですが」 もう面倒になったので主の手に無理やり金を握らせ 宿を出る


大通りを歩いていると「見つけたぞ!!」叫んで十人ぐらいの男達が俺達を囲んできた 見ると今朝の奴らもいる 仲間を集めてきたみたいだな ああ 面倒だ!

「一平太 ユカリと姉さんに良いとこ見せれるぞ」耳元で煽ってみる 

「そうですか?」張り切った一平太がものの数分で片付けた すばらしい!!

「どうですか?ユカリさん?」汗を拭きながら聞いている

「よく 頑張りました」ユカリが相変わらず興味なさそうに言う もっと言い方があるだろうユカリ!!見ろ一平太がシュンとしているぞ!!


道中 木陰で弁当を使い それから 半日程歩いて開けた場所で野営をする

次の日 昼前には村に着き 早速 問題の泉に行く事にし 姉さんの案内で向かっていると [少し お待ち下さい]と言って 時たま脇道に入り 戻ってくると背中の籠にキノコやタラの芽などの山菜が入っている


さて泉に着くと 泉の中央に体高二メートルぐらいのガマガエルがいて 体の表面のイボから紫色の毒を出している

俺は水面を走り斬りかかるが でかい図体のわりに軽く飛び跳ねて避けられ 畔にいるユカリを長い舌で捕らえ食おうとする

一平太が舌を斬り ユカリを助ける 「大丈夫ですか?ユカリ殿」一平太がユカリを地面に降ろしながら聞くと 

「ありがとうございます 一平太殿」初めて見せるユカリの笑みに一平太は赤面する


舌を斬られて もがいてるガマガエルに背中から斬り込みバラバラに切り刻む

ガマガエルは霞になって宙を漂う 畔から巫女様がいつものように錫杖を振って祓っていく それから泉に向けて浄化の祝詞を捧げると紫色だった泉の水が透明になった


村に戻ろうとしてると

「ありがとう 助かったわ」と声がする

振り向いて泉を見ると先程ガマガエルがいた所に青く透明な女性が立っていた

「私はこの泉を守る者 私の力ではあいつを止められなかったの ありがとう」

「いえいえ お役に立てたのならば 幸いです」巫女様が答える

「あれは 一月程前の嵐で何処かから飛ばされてきたの」

「そうだったのですね ではあの蛙は他にもいるのでしょうか?」

「多分 他にもいると思うわ」

「分かりました また見つけたら祓っておきます」

「悪いけど 宜しくお願いするわ」


村に戻り 村人を広場に集め 纏めて穢れを祓う 村人の体調は好くなり 汚染されていた水も回復した 


「で? お前はなんだ?」 泉から付いてきた黒猫を抱え上げ目を見ながら聞いてみる 黒猫は「ニャーン」と鳴くが目が泳いでいる

お互い見つめあってると ユカリが隣に来て「まあ 可愛い」と言って 俺の手から黒猫を取り上げる

黒猫はホッとしたように ユカリに抱かれている 


巫女様の奉納も終わったところで 領主のいる街に向かう為 買い出しをしていると 

お礼だと言って 姉さんが色々な山菜を持って来てくれた それらも次元収納に入れ 出立する 夕刻までには街に着くらしい

黒猫は相変わらず付かず離れずで 後方を歩いてくる 害意は無さそうだし まあ

いいか 

街に着くと 門前で検閲を受ける為に 待たされるてる間 一平太が少し焦ったように「こんな事 以前は無かったのですが 何かあったのかも」

「何かって?」俺が不思議そうに聞くと

「この街の領主への反乱の兆候があると言う噂があるのです だから 出入りする人の審査も厳しくなってるのかもしれません まあ 我々は巫女様の一行なので疑われる事は無いと思いますが」

一平太の言う通り俺達はすんなりと通れた 街中には一平太みたいな武士の恰好を

した者達がウロウロしている 厳重に警戒態勢を敷いているみたいだな

俺達が宿を取りゆっくりしてると 領主に会いに出掛けていた一平太が暫くして戻ってきて 巫女様に「ここの領主が巫女様にお会いしたいと申しておりますが 如何でしょうか?」

「何か御用でしょうか?」巫女様が聞くと

「いえ 巫女様と一緒に この街へ来たと言ったところ お会いしたいと申しております」

「分かりました」俺とユカリも身支度しようとすると 一平太が「お供の者は不用との事でございます」と言うが「巫女様一人では危険だ」と俺は反論する

「ですが……」

「良いのです 使徒様 私にはシロがおりますので 大丈夫かと」

そう言われれば しょうがない

玄関先まで二人を見送って 俺とユカリは部屋に戻る

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