第12話青空の涙
一平太の殺気を感じながらの旅は続く 何を思ったか一平太は相変わらずユカリに頻繁に話しかけていた 確かにユカリはまあ美人だし 凛とした巫女服も魅力を倍増させている っていうか 巫女を口説いてもいいのか?
突然 狼が一匹現れた 一平太が張り切って倒しに行くが横から続けて二匹出てきて 走り始めたばかりの一平太に横からぶつかって来た 避ける間もなく一平太は体当たりされ 横に転がる
ユカリが走りながら一平太に体当たりした一匹を斬りつけ彼から引き剝がす
「すまぬ ありがとう ユカリ殿」起き上がりながら一平太が言う
次々と狼が現れ合計八匹となった
「使徒様は行かれなくて良いんですか?」巫女様が言うが
「あれくらいなら 二人で大丈夫ですよ」
多分 ユカリ一人でも大丈夫だろう 一平太が足を引っ張らなければ
そんな思いも杞憂に終わり 少し経って殲滅した
ユカリは涼しい顔で立っているが 一平太は息が上がってフーフー言ってる
一平太の息が整った時 街道脇の樹から一人の女の子が飛び降りてきた
「お兄ちゃん お姉ちゃん 強いね!! 私達を助けてくれない?」
一平太とユカリに頭を下げて頼んでくる 一瞬 呆然としていた一平太がハッとして女の子に「君を助けるのかい?」と聞くと
「違うの うちの集落に盗賊が住み着いて 皆が酷い目に遭ってるの」
「盗賊?」一平太が目を細めて聞き返す
「そうなの あたしは隙を見て誰かに助けを求めに行くとこだったの お願い!!」
一気に喋り気が抜けたのか 女の子は座り込んだ それを見て
「ユカリ殿 楽しい旅でございましたが ここでお別れです 儂はこの子の集落に向かいます」一平太が俺達に頭を下げ 女の子を抱き上げた
「お前の集落に案内してくれ」そう言うと歩き出した
「おい 一平太 俺達ももちろん行くぞ!!」
俺が言うと「そうですわね」「主の御心のままに」 巫女様とユカリも賛成してくれた
女の子はチヨという名前だそうだ そのチヨの集落は林業を生業とし全員で二十人いるらしい 三日前にいきなり盗賊が襲来して女は一軒の家に押し込められ 男はそのまま仕事をさせられているらしい 多分 根城にするつもりだろうと大人の人が言ってたらしい
集落の門付近で 一平太が作戦を練るが 面倒臭いので正面突破をすることにした
人質にされるかもしれないので 女性がいる家にはユカリをチヨと一緒に先に向かわせ 俺と一平太が始末することで決まった
集落に入ると門付近でたむろってた落武者みたいのを一平太が倒す 声を聞いて家々から これぞ山賊みたいのがワラワラと出て来る 「やっちまえー」とか「容赦しねねえぞ」とか中々に威勢はいい が結局は盗賊 俺等の敵では無い
苦し紛れに女の押し込められた家に向かった奴もユカリに叩き伏せられた
そんな中 頭領っぽいのが出てきた 一平太が目を細め対峙する
「やはり お前だったか!?」そう言いながら首を狙って斬り込むが返されてしまう
「まだまだ 俺の域には達してないようだな」頭領が見下しながら言う
「ふざけるな!! 貴様などに遅れは取らん」再度 一平太が上段に構え打ち込む
頭領も刀で受けようとするが ガキっと音がして刀が折れそのまま頭をかち割られる
「愛刀の手入れも出来ない貴様などに負けるわけなかろう」
倒れた頭領を見下ろし一平太が呟く
簀巻きにした盗賊達は集落の男衆に任せ俺達は集落を出た 出る時にチヨが一平太に抱き着いてお礼を言っていた
「なあ 一平太 あの頭領と顔見知りだったのか?」俺がなんとなく聞くと
「あの男は 私の兄でした 兄は小さい頃から 武芸に秀でていて そこで 何か勘違いをしたのでしょうね 領内一の乱暴者に成り下がり 挙句は遊ぶ金欲しさに商家を襲い 一家を殺してしまったのです それからは賞金首になり 他領で悪名を轟かせていたのですが 最近になって目撃されたとの噂があり その噂を確かめるのも今回の旅の目的の一つだったのです 助太刀感謝いたします」
いやいや 俺は何もやってないから しかし これで一平太の肩の荷が降りたのなら良かった
雲一つない青空が広がる中 小雨が降って来た
「空が泣いていますね」
思うところも多々あるのだろう 上を向いた一平太の目から涙があふれていた
しかし 何故こうも盗賊が多いのだろう 普通に働いていれば食うに困る訳でも無いだろうし やはり が言う巫女様通り国自体が崩れ落ちる寸前なのか?
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