第10話赤鱗②
村中を周って瘴気に侵された人々を巫女様が祓っていった
終わった後 村の中央に祭壇を組み舞と祝詞を捧げた 見てる村人の中には涙を流す者までいる ずっとこの村を守ってくれていた神様を蔑ろにした事を悔いているのか 手を合わせて祝詞に耳を傾けていた
その頃 セイによって意識を刈り取られた武士達も目を覚まし 倒れている領主を見て狼狽していたが 息がある事を確認して領主を屋敷に連れ帰る 「一体 何があったのだ?」領主が目覚め 憮然とした顔で一平太に聞く
「は 社に祈りを捧げていた小女を斬ろうとした折 男が邪魔に入りまして 皆昏倒させられた様です」
「何? その者はどこじゃ? 儂は斬られた記憶があるが 何故 生きている?」
「はっ 我々が気付いた時にはもうどこにも居ませんでした」
「ええい 忌々しい」唸る領主を見ながら 一平太は少女を斬らずに済んだ事をあの男に感謝していた
「村長さん この辺りにはどのくらいの村がありますか?」巫女様に問われ
「そうですね 東に行った所にひとつ あと西の小山を抜けた所にひとつ ですね」
村長の返事を聞き
「使徒様 先ずは西に向かいましょう」巫女様が俺とユカリを目で促す
「「分かりました」」二人して頷き腰を上げる
西の小山というか 雑木林の丘だな それでもキッチリと魔物や獣が出て来る
それらを倒しながら進んでいくといきなり開けた場所に出た 柵があるから ここが西の村なんだろう 柵の門番らしき人に「身体の不調を訴えている方はいませんか?」巫女様がシロの上から聞くと シロを見てビックリしたのか 口をパクパクさせていたが 乗っている巫女様に気付いて 地面にひれ伏し「村の中で具合の悪いのが何人かいます 俺のかかあも寝たきりになってますだ」一気に捲くし立てる村人
巫女様が村内を巡り祓っていく 門番の奥さんも祓って 元気になったところで 村長に村人を村中央に集め アキの村と同様 舞と祝詞を捧げる
巫女様の奉仕がおあわった後 村長に近くの社の場所を聞き 社に村人達と向かう
社に着き 扉を開けるとやはり赤鱗がとぐろを巻いていた 切りきざみ 巫女様に浄化してもらう
「このように 信仰心を失くせば怪異が住み着き 皆さんを蝕みます 神様への感謝の心を持って生きて下さい」
舞と祝詞を捧げ巫女様が最後に村人に諭す
それから 一度アキの村に戻って東の村に向かう事にする
アキの村に戻ると広場にアキを囲んで侍達が剣を抜いていた 一平太の姿もあるが 顔色が悪い
「止めて下さい お願いです その子は悪くないんです」アキの母親が取り囲む侍の一人に縋って叫んでいるが その侍は構う事無くアキににじり寄っていく
「やめろ!!」俺は叫んでアキの前に立ちはだかる 「貴様は!?」一平太は俺の顔を覚えていたらしく俺に剣先を向ける
「やめておけ!! 実力差はわかっているだろ!!」ニヤリと笑って見せる
「くっ!!」一平太は悔しそうな顔で俺を睨む
「一平太!! その男が儂を斬った奴か?何をしている早く斬り殺せ!!」
囲んでいる侍達の少し後ろにいる領主が叫ぶ
「これは 何事です?」巫女様が静かに領主に問いただす
「なんだ? 貴様は?」
「私は神仙の巫女です 何故 罪もない子を殺そうとするのですか?」
「なんだ いもしない神を騙る詐欺師か?」
「神はおられます 私は神に仕える巫女であり詐欺師ではありません」
「では 何故 神は儂の祈りに応えてくれなかった!! 儂の妻と息子が流行病に罹った時 儂は儂の命と引き換えに助けてくれるよう必死に祈ったが 二人共逝ってしまった 神などいないのだ そんなものに祈る価値など無い!! 答えろ巫女よ 何故儂の祈りは聞き入れてもらえなかったのだ?」
「それは 運命だったからです」少し間をおいて巫女様が答える
「ふざけるな!!」
「神は万能ですが 全能ではありません」巫女様が言い放つ
「何を 禅問答のような事を!!」
「ならば 貴様を斬って神などいない事を証明してやる」そう叫んで剣を上段に構えたまま巫女様に走り寄っていく 直後 晴れた空から一筋の雷が領主の掲げた剣先に落ちショックで領主は気絶してしまった
死んだはずの妻と息子がいた 二人共笑みを浮かべてこちらを見ている
「貴方 私は貴方と共に過ごせて とても幸せでした 私の死は避けられないものだったのです」
「父上 私は父上の子で幸せでした これからも尊敬出来る父上であり続けて下さい」
目頭を熱くしながら「お前達!!」叫んで抱き着こうとした
そこで目が覚める
「そうか そうであったな」
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