第9話赤鱗

天狗の里から次の封印の場所までちょっと距離がある

歩き続けて 日暮れ頃に小さな村に着いた 村は閑散としていて子供の声も聞こえない 井戸端で野菜を洗ってる女性に泊まれる場所はないか尋ねてみる

「宿なんてもんは無いけど 村長の家が広いから泊めてくれるんじゃないか?」

と言われ 村長の家の場所を聞き尋ねてみる


「おお これは巫女様 よくぞおいで下さいました 狭い所ですが ごゆるりとして下さい」

「ありがとうございます」」

部屋に通された後 「この地は神の息吹が感じられません おかしいですね」巫女様が独り言を口にする

と言うか俺には生命力がこの村から感じ取れない

不思議な感覚のまま朝には村を出る 「何かお困り事はございませんか?」巫女様の問いに村長は首を横に振る 山を越えるため進んでいると「キャー 助けてー」女の子の叫び声が聞こえた 巫女様とユカリを見て 声の方に走った 壊れかけの社の前で武士?が女の子に刀を振り上げ斬ろうとしていた ただ 武士に殺気が無い

「止めろ!!」俺が叫ぶと一瞬ビクリとして俺を見て 何故かホッとした顔をした

「ええい 邪魔をするな!!」

「そんな子供を斬ろうとするとは何事だ!!」俺が叫ぶと武士は一瞬顔を歪めた

「一平太 ガキは始末したのか?」右手の笹薮から武士?の集団が出てきた

「主 今 成敗致します」一平太は顔を曇らせ主と呼んだ武士に言う

「させるか!!」俺は一平太と女の子の間に割り込み剣を抜く


「使徒様!! その主と呼ばれて者を草薙の剣で斬って下さい」巫女様が俺に叫ぶ

一平太の横を通り抜けざま首元を軽く叩いて 失神させておく 多分こいつ悪い奴じゃない

スーっと主と呼ばれた男の前に立ち 袈裟懸けに剣を振るう 天狗の時と同様の手応えがあった 残った者達も念のため意識を刈り取る

主からでた黒い靄は社の中に吸い込まれていく

社の扉を開けると赤い蛇がとぐろを巻いていた


「やはり 赤鱗でしたか!! 倒していただけますか使徒様?」巫女様が社の中を見ながら俺に言う

「分かりました!!」蛇の頭を切り落とし胴体をバラバラに切り刻む

黒い靄になった所で巫女様が錫杖で光の粒子に変えていく


 女の子の世話はユカリがしていた 怪我らしいものは無く 未だ怖かったのか泣いている

理由を聞きたいがこの状況じゃ無理かな? 昨晩世話になった村の子らしいので 送っていく事にした 途中聞いた所 ある日領主がやってきて神への信仰を禁じたらしい 村人達は動揺しながらも言い付けを守っていたが 女の子の母親が病気になり こっそり神様へお祈りをしていたのをさっきの領主に見つかったらしく 斬り殺されそうになっていた だが一平太が嫌がりあの状況だったのか

「神様を崇めるより 領主である自分を崇めろ 供物を供えるくらいなら自分に捧げろ 神に祈っても何も変わらん」などと言われたらしい

子供の名はアキといった アキの家に行き床に伏している母親に巫女様が錫杖を振り癒しの術を行う 母親の顔色はどんどん良くなっていき一時間もせずに目を覚ました

アキは母親に抱き着き ワンワンと泣いている 状況が分からない母親はキョトンとしている 


 「先程の蛇は赤鱗といいまして 人々の信仰心を失くさせ己が社の主になるように人を操る怪異です 多分あの領主は摂り付かれていたのでしょう 土地を守る神が消えてしまえば  その土地は崩れ落ちます 村長に話さないといけません」

巫女様が少し焦り気味に俺達に説明し 泣き止んだアキに村長を呼ぶように言う

走って来た村長に巫女様が

「今すぐに神様への信仰を復活させなさい でなければ この村は滅びるでしょう

これは神仙の巫女としての言葉です」と諭す

「へ へい しかし領主様のご命令で」村長が返すが

「そこは 私が何とかします この村が無くなっても良いのですか?」

「わ 分かりました 直ぐに村中に知らせます」村長は来た時と同様に走って出て行った


アキの母親は何が何だか分からずにオロオロしている 

「この地の神への信仰が無くなり 神の加護がほぼ消えた状態だったので 軽い瘴気に当たっただけで 体調を壊す程になっていたのです アキちゃんは お母さんを治す為に神様への祈りを捧げていたところを領主に見つかって危ない所を私達が助けて お母様の瘴気も祓って お母様の具合も良くなったという事です」

簡単に説明して 母親を納得させる

「アキちゃん 他にも具合の悪い人が村にいませんか?」






 








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