第8話天狗岳
第二の封印を目指す為旅立ちの準備をしていると
「もう 行ってしまうのかい? 今夜まで残って宴会を楽しんでいってくれ」
「世話になりっぱなしで申し訳ねえ」
「旅の無事をお社様に願っとくぜ」
「ありがとう 本当にありがとうございました」
等と声をかけられつつ出発した
「こちらこそ お世話になりました」手を振りながら歩き出す
「本当に世話になった ありがとうな」頭の中で声が聞こえた
多分 御神体様かな 若い少年のような声だった
さて 第二の封印は岩山の上だ 封印の山を守っている里村に寄って情報を集める 最近は山に虚無僧と天狗が出て邪魔をするので物資を届けるのも大変らしい 話を聞いて 俺が届けますよと提案すると 女性が一緒に行くと言ってきた
どうも封印している賢人の奥さんらしく二か月程封印の場所に行けてなく 顔も見たいし 身体も心配だと言う
賢者への物資を俺の次元収納に入れて 巫女様の主食の果物も多めに入れておく
険しい山道だ 細く縫うような道を歩いていく 真下を見れば吸い込まれるような高さだ 万が一落ちてもシロが天虎になって助けるから大丈夫だけど なるべく落ちないように注意してねと 明るく巫女様に言われたが 気を抜けない
賢人の奥さんは慣れた様子でヒョイヒョイと先を行く 荷物が無い分いつもより楽だそう
気を付けながら歩いていると前の方から虚無僧の姿をした者達が歩いてきた
しかも かなりの人数だ 避ける場所も無いので どうするか迷っていると
「また あんた達なの 毎回邪魔してきて 今回は譲らないから引いて頂戴」
奥さんが大声で叫ぶ こいつらが邪魔してたから行けなかったのか
「あれは 人ではありません 異形のモノです」巫女様が俺に言う
人でないなら と俺は奥さんを飛び越え虚無僧達に切り込んでいく
大した抵抗もしないまま 虚無僧達は崖下に落ちていく
「ありがとうございます あいつ等の所為で 行けなかったんです」
奥さんは手を叩きながら喜んでいる
窪みがあったので そこで休憩を取り巫女様には果物 奥さんと俺は干し肉と握り飯を食う ユカリは疲れたのか俺を背にして魔力の譲渡を俺から受けている
丸一日かかって封印の場所に着いた 岩山の裂け目に奥さんが喜々として入っていく 俺等も入っていくと賢人と思われる人と天狗が戦っていた 魔法も使わず肉弾戦で
「あの天狗は憑かれています だけど使徒様の草薙の剣であれば天狗を傷付ける事無く 憑いているモノだけ斬れます」
「手伝います!!」賢人に言って天狗に斬りかかる 天狗はヒョイと空中に逃げ躱す 面倒くさいな 空中から勢いをつけて俺に蹴りを見舞ってくる
左足を引いて避け 横薙ぎに剣をっ振るう
手応えは無いが 身体の中心で何かを二つに斬り割った感触はあった
天狗は地に跪き苦しそうにしていると 身体から黒い靄がふたつ出てきた
それを切り刻み刀身を納める その後巫女様がっ錫杖を振り祝詞を奏上し それを浄化していく
前回の様に封印の前でっ祭壇を組み上げ舞と祝詞を捧げる これでここの封印も大丈夫だろう
「ふうー助かりました 巫女様 使徒様」
「こいつは力比べが大好きな奴で ちょくちょく手合わせをしていたのですが ここ最近 殺意がもれておりまして困ったいたのです」天狗を見ながらため息をつく
「何か 悪いモノがついてしまったのでしょうね」
「うーん」苦しそうに天狗が声を上げる
「儂は一体何をしてたんじゃ?」記憶が曖昧なようだ
「確か 新しい技を開発したんでお主で試そうと考えていた所までは 覚えているんじゃが」 戦闘民族かよ
軽く心の中でツッコミを入れながら聞いてみる
「何か 変わった事はありませんでしたか?」
「そう言えば新技の鍛錬をしてる時に黒い靄みたいのが現れて「もっと 強くなりたくないか?」と聞いてきたな そこから先は何も覚えとらん」天狗が頭を抱えて考えている
「さあ それより食事にしましょうか?」奥さんが手早く何品かの料理を作って俺達に声をかける
「久し振りの お前の手料理か? 嬉しいなあ」賢人がニコニコしながら料理を見てる
「さあ天狗さんも使徒様もご一緒にどうぞ」
「「「いただきます!! おお!! 美味い!!」」」
「やはり お前の飯は天下一品だな」賢人がニコニコ頬張りながら褒める
「儂は手合わせの後の飯も楽しみでの」ガツガツと食いながら天狗が言う
「本当に美味いですよ 奥さん」行儀悪いが口一杯に詰め込んだまま俺も言う
「久し振りに来れたのも巫女様 使徒様のおかげです 本当にありがとうございました」
「元凶を倒したから もうあの虚無僧も現れないでしょう」巫女様が微笑みながら奥さんに告げる
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