第5話五月雨の龍
街道に出て進んでいると すれ違う人達が道の脇に避けてひれ伏して拝んでくる 巫女様はニコニコと手を振りながらシロの上に座っていた
山を下りる途中 旅姿の二人が見るからに山賊っぽいのに襲われていた
俺は黙ってその集団に向けて走り出す
「何をされるのでしょうか 主様は?」ユカリは不思議そうに呟く
「助けに行ったのではないですか?」巫女様が答えると
「何故 見ず知らずの者を助けるのですか?」巫女様に聞くと
「それが使徒様 貴方の主様の心のありようなのでしょう」巫女様に言われるがユカリにはピンと来ないらしい
山賊達を蹴散らし 旅姿の二人にお礼を言われてると巫女様とユカリがやって来た
旅姿の二人と別れ 三人と一匹で進んでいると いきなりユカリに
「何故 先程の者達を助けたのですか?」と聞かれ
「困っている人がいれば助けるだろう?」答えるがユカリは理解していないようだ
半日程歩くと雨が降り始めた 俺はフード付きの外套を出して巫女様とユカリに渡す 結構雨が烈しくなってきたので 第二の封印に向かう道中にある村に立ち寄り一泊する事になった
灰色の重い雲が覆った村は活気が無く 薄暗かった
宿屋に入り 暖かい飲み物を飲みながら宿の女将さんに町にあまり活気が無いことを聞いてみる 女将さんが言うには「ここ二月ぐらい 雨が降り続いて作物も育たたないし 商人も来なくなってしまってね たぶん山の神の竜神様が怒ってるんじゃないかって話なんだよ」
俺達は目を合わせ 「何故 竜神様は怒ってるんですか?」聞くと
「さあ 分からないね やれやれだよ」諦めたように溜息をつき 厨房に戻って行った
「竜神様とはいえ 民が困ってるなら どうにかしてあげたいですね」巫女様が言うと 「そうですね 主様」ユカリも賛同する
「ん~ そうですね 一度様子を見に行きますか? 何か出来る保証はありませんが」そう言って 部屋に戻り寝る事にした
いつものように ユカリに魔力の補充をしていると
「主様の心の在り方というかお考えを少し覗いてみてもよろしいでしょうか?」
ユカリが遠慮がちに聞いてくる
「別に構わないよ」答えるが あ でも男子高校生のデリケーートな部分はみてほしくないかな まあ そこも含めて俺の事を理解してもらえると助かるかな
だからか 今日は俺の方から流れる魔力とユカリから流れてくる魔力が行き来して
変な感じだった
朝起きるとユカリが恥ずかしそうにしていた 俺のデリケーートな部分を見たのか?
宿の女将に竜神様のいる山への行き方を訊ね 今はしとしとと降る雨を見ながら山の麓まで馬車に揺られてゆく 片側にシロが大きく伸びて もう一方に巫女様 ユカリ
俺の三人が座っている 馬車が揺れて肩がユカリに触れるとユカリは顔を俯け 少し赤くなっている ホントに俺の何を見たんだ?そう思うと俺も顔が赤くなる
[お客さん ここからは歩きになります 馬車はここまでが精一杯でさ]御者が告げる
「あの山がそうなんですか?」俺が尋ねると 道の向こうを見据えて
「ええ そうです 結構強い魔物も出ますんで気を付けて下さい」御者が心配顔で言う 「まあ 何とかなるでしょう」俺は答えて二人を見ると二人共頷いている
「ありがとうございました」そう言って馬車と別れ 細い道を歩き出す
「主様!! 何か来ます!!」ユカリが言うや俺の前に出て身構える
ガサッと音がしたかと思うと巨大な熊が立ち上がって 俺達を威嚇するように見る
「ハッ!!」ユカリが気合の一閃で熊を切りつけ 大木が倒れるような音をたてて崩れ落ち熊が息絶える
何かに使えるかも知れないと思い一応収納しておく
「ありがとう ユカリ」俺が礼を言うと「大した事ではありません」照れたように返す
それからも 熊だったり 猪だったりが出てきたが魔物とは遭遇しなかった
山頂に着くとそこには大きな池があり 土砂降りで煙って遠くまで良く見えない
ボーっと見ててもしょうがないので 「おーい 竜神様~」呼びかけてみるが 返事は無い 取り合えず雨音で音が聞き取りにくいしと視界が悪いので 魔法で池の上の雨雲を吹き飛ばす 視界が良くなると池の中央に竜が浮かんでいるのが見えた
池の上を走り竜の側に行き「何で 泣いてるんですか?」聞いてみる
龍はビックリしたように俺を見ると「何故 僕と話せるの?」と聞いてくる
「一応 神様に遣わされた者だから……と思う」自分じゃ普通に日本語を話してるつもりなんだけだど
「実は竜王の元に行き宝珠を頂いた帰りに得体の知れない何かが宝珠を僕の手から奪っていったんだ この地を離れるわけにもいかず どうしたものかと悩んでいたら 悲しくなって泣いてしまったんだ」竜が寂しく笑いながら説明する
「そうなのか? 場所が分かれば俺が取り戻してくるけど 今どこにあるか分かるかい?」竜の喋り方が幼く感じられるので 何だかお兄ちゃんみたいな言葉になってしまう
「うん 分かるよ 東に行った山の中にあるよ 場所は分かるけど竜王の許可が無いと僕たちは動けないんだ それに頂いたばかりの宝珠を失くしたなんて言えないよ」
「分かった」俺はそう言うと巫女様とユカリの所へ戻り 事情を話した
俺達は東の山へ向けて出発した 宝珠を取り戻すために
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