声響 〜自身の事を天才だと信じてやまなかった僕が、未経験のギターで世界を目指すお話〜
紅杉林檎
分岐音
「お前らーーー! 今日は来てくれてありがとうーーー! 今日のライブが実現出来たのは今日まで応援してくれたお前らのおかげだーー!!」
『わぁぁぁあぁあああぁぁあああ!!!!!』
メインボーカルのファン達への感謝にドッと会場が沸いた。もちろんその中に僕も入っている。
「いくぜラスト!! 『
タイトルコールに更に沸く会場。『明後日のヨゾラ』。この曲はタイトルだけ聞くとエモい曲だと思うがその正体はその真逆のバチバチロック調の曲だ。僕はこの曲が好きだ。
「Hey! 僕らは〜 Hey!♪」
『きゃあああああ!!!!!』
『待ってたぞぉぉぉおおぉぉ!!!!!』
僕達の声がついに最大音量に到達した。普段なら張り上げない声、言わない言葉、得られない感動。その全てが揃う会場に居て、声を出す事を躊躇う者など、誰一人として居ない。
「そうさ僕らは願うのさぁ〜♪」
「明後日の〜♪」
「ヨ〜ゾラにぃぃ♪」
曲が、演奏が、終わってしまった。
実はこのライブが【純正ダイヤモンド】の最後のライブだったんだ。このライブを機に【純正ダイヤモンド】は解散。各々が別の道を歩んでゆく。別に解散した後でもメンバーの演奏や歌は聴ける。それでも、【純正ダイヤモンド】としての活動が終わるのは、昔から推していたファンの僕からすると、残念で仕方がない。
「ありがとうございました〜!!!」
ライブが終わり、会場を後にした。中に居た時は観客達の応援による熱気で暑かったが、外に出ると雪が降っていてとても寒かった。
ライブに熱中しすぎて空腹などの本能的欲求を忘れてしまっていた。そのせいか今になって少々小腹が空いた。ちょうど近くにコンビニのある事だし、そこで食べ物を買おう。
「いらっしゃいませー!」
自動ドアをくぐると店員の明るい声と人工的な暖かさが僕を出迎えてくれた。
僕はカゴを手に取り、そそくさと直感で食べたい物を片っ端からカゴに放り込んだ。
おにぎり、メロンパン、飲むヨーグルトなどなど欲のままに手に取った。そんな時、ふと僕の目に映り込んだ、一冊の雑誌。
【純正ダイヤモンドの先見の明。純正ダイヤモンドのメンバーの各々が選ぶこれから波が来るバンドグループ集!!!】と、でかでかと書かれたキャッチコピー。その売り文句は純正ダイヤモンドファンに効果的面で、大の純正ダイヤモンドファンの僕は雑誌を他人の目線そっちのけで立ち読みした。
「ズルいなぁーこのキャッチコピー。ファンだったら誰でもこうなるに決まってる」
「【ドラマー界のじゃじゃ馬】藤井が推薦するこれから波が来るバンドグループは【混沌アルファベータ】! 理由は____」
一枚、また一枚と読み進めてくと僕が待ち望んでいたページが来た。
そのページは僕の一生の憧れの人であり推しである【ギタリスト界の凶星】こと「
期待に胸を膨らませ、いざ参る!
「【ギタリスト界の凶星】蜜國が推薦するこれから波が来るバンドグループは【蒼空スカイハート】! 蜜國が言うにはメインボーカルの『
「ps.【蒼空スカイハート】は絶賛エレキギターを弾けるメンバーを募集中らしいぞ! エレキギターを弾ける奴、最高のビックウェーブに乗っかるなら今がチャンスだぞ!」
おいおい予想以上に推しが褒めてるぞ!? 言い方悪いけど蜜國っていつもは____。
『愛してる? は、俺は愛してねぇけどな。あははは!』とかとにかく他人に対して冷たいんだ。さっきの解散ライブでも最後だからこそ出てきた言葉だろうし.......読んでて何度も目を疑ったよ。
でも.......
「そんな蜜國がこんなに推しているグループなら、ちょうどいいかもな」
そう、実は僕は高校受験を終え、高校の入学式まで暇人となった十五歳で高校デビューとともに今まで見るだけでやってこなかったギターに挑戦しようと思ってるんだ。
高校入学までやらないつもりだったが、雑誌を見て、話が変わった。
「よし決めた!」
この、【蒼空スカイハート】ってバンドのメンバー募集に応募しよう!
エレキギターは弾いた事はないけど、今まで沢山のバンドマンの生演奏を見てきた。MVも見てきた。やり方は分かっている。それに僕は昔から初めてやる事でも最初から人並み以上に出来るんだ。大丈夫だろう。
僕の名前は「
夢は、【世界一のバンドマン】だ。
声響 〜自身の事を天才だと信じてやまなかった僕が、未経験のギターで世界を目指すお話〜 紅杉林檎 @aksugiringo
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