初めての買い物

「そろそろ慣れてきただろうし、買い物に行くわよ」


 朝ごはんを食べているとメアリーが今日の予定について話し出す。


「いい頃合いですね」


 続いてニーナがそれを肯定するように頷く。


「んで何を買うの?」


「まあ初めてだし、服を少し買いに行くわ」


 それは助かる、今俺が着ている服はみんなが

使っていた女物のお下がりだ。さらに一番困っているものはパンツだ。


 一応新品らしいがピチピチでフィットした感じに慣れずずっと違和感を感じていた。


「それじゃあ行くわよ」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 出かけるためにウィッグ、サングラスにマスクを装備し、完全不審者にしか見えないような姿に変装し車の中で揺られる。


 ちなみにミラノはお仕事があるそうで朝早くに出かけていった。


 いざ目的の下着コーナーの前に来た。


「女物じゃん」


 目の前に広がるパンツは全て女物、俺はこれから脱するために下着を買いに来たはずなのに。


「買ってあげたいのは山々なのですが、男物の下着はかなり高価なものばかりで...」


 ニーナが申し訳なさそうに言う姿にこっちが逆に申し訳なくなってくる。


「あ、いや高いんだ、なんかごめん」


 できる限り無地っぽいものを選ぶがピンクばかりだ。


「これとこれと、これかなー」


 女性用下着に囲まれたこの空間にいると段々と居心地が悪くなってくる。パッパとカゴに入れていき下着コーナーを離れようとする。


 今日買ったものをまとめた袋を腕に抱きかかえ車に向かう最中。


 本当に女の人ばかりだなーと思いながら周りを見渡していると


「あてっ」


 目の前にいた人に気づかずぶつかってしまった。


「あっごめんなさい、大丈夫ですか?」


 パサッ


 俺の足元にウィッグが落ちると同時に尻餅をついていた目の前にいた女性の手が俺の顔に伸びていた。


「男...?」


 サングラスを取られ顔を見られる。


「やばっ」


 メアリーがそう言うと同時に俺の手を引っぱり駆け抜け出す。周りがざわつきだしギャラリーが集まる前に車まで逃げる。


 なんとかアジトまで逃げ帰ったものの、SNSでは黒髪の男がいたという話題が溢れかえっていた。


 

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貞操逆転世界で黒髪黒目の男は狙われるそうです すりたち @siu_desu3

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