第5話 治療

 翌日、サウンドブロックはザルダーズオーナーとともに、修復師の元を訪れていた。


 ほぼ原型を保ったままの木片を確保できていたので、修復作業自体は簡単だと言われたが、ほかにも小さな傷があると診断された。


 さらに、大きな仕事が複数あり、日数が欲しいと修復師はザルダーズオーナーに願いでる。


 もちろん、ザルダーズオーナーはその条件に異を唱えることはしなかった。

 ただ「来月のオークションに間に合えばよい」とだけ言うと、サウンドブロックを修復師に預けたのである……。


 このときのサウンドブロックはまだ気づいていない。


 必要なのは、身体が欠けた己自身のメンテナンスだけではなく、相棒をなんの説明もなく連れ出され、二十七日と十八時間二十六分もの間、収納箱の中でひたすら待ち続け、ささくれてしまったガベルの心のケアも必要だった……ということを。



(終わり)

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