第35話
※
巴大地との出会いは小学一年生の時だった。
同じ学校で同じクラス。そして同じ霊能力者同士という偶然の
そんな二人だったが相違点が一つ。駆郎は代々霊能力者を輩出する家系に対し、大地は一般家庭出身にして
しかし、当時の二人にとっては
気付けば二人の距離は縮まり、共に過ごす時間はどんどん増えていった。
「なぁ、大地。二組に女の子の霊がいるよな」
「うんうん。僕も見た。たまに実体化もしているよね」
「それに上の階……二年生のベランダから嫌~なかんじするし」
「悪霊がいるんだよ。この前お邪魔したらね、三組のベランダで、四つ目の男の子が体育座りしてて」
「うわマジか、すっごい見た目してるな。三組だけは絶対なりたくない」
盛り上がる話といえば
土倉友子の霊を観察したり、ベランダの悪霊を怖がったり。あとは、散歩する市松人形の件だ。霊能力者同士だからこそ、「ただの噂なのに」「パンチパーマはあり得ない」と笑い合った。
「学校のどこかに秘密の隠し通路があるらしいぞ」
「何それ、面白そう。見つけてみたいなぁ」
当時流行っていた探検ごっこにも参戦だ。蛮勇コンビとして
「大地ってさぁ、気になる子はいないのか?」
「僕は……うーん、まだいないかなぁ。ほら、クラスの女子は結構怖い子多いし」
「あー、それは分かる。なんていうか、飛び越えられない溝みたいなのがあるよな」
「だから、誰が好きってのはないかな。そう言う駆郎はどうなのさ」
「俺には初恋の相手がいるからな。また会う日まで浮気するつもりはない」
「うわ~、すっごい大人ってかんじ」
余計なことを口走ったのは三年生の頃だったか。
運命の出会いと一途に恋し、同い年に興味は一切ない。と、勘違いした格好良さを
だが、それでも。
かけがえのない時間だった。
学年が上がるにつれ、二人の関係に暗雲が立ち込め始める。否、とうの昔から曇天だった。それに気付かぬほど互いに幼かっただけ。成長するほどに残酷な現実を察してしまう。大地もきっとそうだったのだ。あるいは、もっと早くに理解してしまったのか。
名のある家系と一般人上がり。
その差は酷薄にも二人の仲を引き裂いていく。
「僕と駆郎君は全然違う。永遠に相容れないんだ」
先に拒絶の意志を示したのは大地だった。
五年生の時だっただろうか。彼は霊能力者同士の仲良しこよしに
それでも駆郎は食い下がった。他に友人がいなかったのもあるだろう。だがそれ以上に、大地という支えを失いたくなかった。気の置けない親友であり、互いを理解し合える家族同然の存在を。
しかし、どんなに懇願したところで無意味。ギクシャクは加速し冷え切る一方。二人の時間の大半を苦痛が占めるようになっていった。
諸悪の根源は、周囲の大人達が向ける無自覚な視線だった。
天宮家随一の天才――その息子である駆郎に対する期待と
一般家庭出身の新参者――後ろ盾のない大地に対する
霊や妖の存在が明らかになろうとも、霊能力者業界の風土は旧態依然としたまま。血筋原理主義がまかり通り、魂を垂れ流すだけの一般人を無能と
一度引き裂かれた仲は修復不可能に。
六年生になると、大地は敵対心を剥き出しにし始める。
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