第8夜 再会

「ここだ」






指差された先には大きな洞窟が見えた。






「ここが……お前らのアジトか?」




「そうだ」






一番隊の平組員は紗生に睨みっぱなしだが、アザムに何か言われるのが嫌で抑えめの睨みになっている。


それに紗生が気付くが何も言わない。




途中で背の低い組員が近寄ってきた。


ダンテだ。


1番隊が揃って帰ってくるのを見て何かを察したのだろう。






「ねえアザム、そいつ誰?」






親しげに1番隊組長であるアザムに話しかけてくる。


ダンテだ。






「ダンテか。……そういえば名前を知らないな……。おい、お前名前何だ?」




「……紗生」




「サキか。俺はアザム、こいつはダンテ」




「よろしく、サキ?」






くりんとした丸い目でうるうるした目で見つめてくる。


気に入ったのだろうか。


可愛い。






「……よろしく」






紗生は自分の兄弟を思い出した。


今どこでどうしているのか……。


特に丸い目なんて、同じ丸い目をしている康生を思い出した。






「ねえねえ、お姉さん新入組員?」




「……違う」




「……ダンテ、こいつは……さっき俺と戦闘して、俺に負けた女だ」




「えっ」






やってしまったという顔をするダンテと、目を伏せがちにする紗生。






「いいんだ、気にしなくていい」






という紗生。






「そ、そう?有難う。優しいんだね……」






沈黙する紗生。






「おいダンテ、あいつの話をしてやれ」






ピクッとする紗生。






「げぇ~~~、あいつかよーーーーー!!!」




「……いいから」






ひと睨みするアザム。






「ぶぅ~~~……あのねー、どっかから迷いこんだ女……の子がいるんだよ」




「なに!?そいつの容姿は!」






いきなり血相を変える紗生。


それに動じるダンテ。


ピクッとするアザムと一番隊。






「えっ!?……と、頭がでかくて」




「うん」




「オレンジの髪をしてて」




「うん」




「黄緑の目をしてる……」






それを聞くと紗生は愕然とした。






「華留美か!!!」






はぐれた家族の他に、仲間がいたのだ。


それが華留美だ。






「カルミんだ、よ……」






そういい直そうとするダンテを他所に、紗生はぐいっとアザムに詰め寄った。






「すぐ様そこに連れて行ってくれ!そいつは私の友達だ!!!」






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






「ジャン、いるか」






ぞろぞろと舎弟を引き連れてアザムは例の場所に姿を現した。


客人と共に。






「おお、いるぞいるぞ!コレ見てみろよコレすげえから!!!」






でへらでへらとジャンはカルミんを前に出した。


豪勢なドレス姿である。






「……え?」






何か異変に気付く華留美。






「お前……何でそんな奴らとそんな……ことを……」






紗生は言葉を失った。






「紗生……姉?紗生姉なの?」






その姿を見て、華留美は驚きと、遊び呆けた自分への怒りと悲しみでどうにかなってしまいそうだった。


その刹那、紗生は笑顔のような複雑な顔をした。


そして華留美を抱き締めた。






「--------見つけた!」






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






華留美は当惑した。






「さ、紗生姉、苦しいよ……」






この華留美という少女は、紗生のご近所さんである。


金持ちの家に住む為同級生に疎まれ、遊び相手は紗生達だけだった。


だから現状が崩れるのはどうしても避けたいところだった。






「ああ、すまん」






そう言われ紗生はパッと手を離した。


パラリと綺麗なドレスに落ちる土クズ。


華留美は申し訳ない気持ちでいっぱいになった。






「あ、あたし何やってんだろ……こんな……ことしてる場合じゃない……のに……」






と、そっぽを向く華留美。


それに同情するジャン。


紗生は……。






「その服、何だ?そいつらの私物か?それにしては……随分と……」




「言わないで!!!言わないで……私が悪いの……。それにこの人達そんなに悪い事してない!」




「……追いはぎが悪くないことか?私はこいつに命を狙われたが……」






と、紗生はアザムを親指で指差した。


アザムは微動だにしない。






「か、感動の再会は済んだか な?」






えへ、えへ、とダンテは中央に割って入る。






「ア、アザム……何で……紗生姉の追剥なんか?女の子なのに……」




「……コイツがテリトリーに入ったからだ」




「その前はジョーの奴らに追われてたらしいぜ」






一番隊のハルキが口を出した。






「何!?」






ジャンらがざわめく。






「奴が現われたのか!それで、どこに行ってたんだアイツは!?」






と、フェイン。






「そこまでは知らん。


 この女がジョーのアマに追われたらしいってことしか知らねぇ」




「らしいって……」






アザムの言にジャンは落胆する。


そこに紗生が割って入る。






「……なぁ、ジョーという奴は何故私を狙ってきた?テリトリーに入ってきたからか?」






それにジャンが答える。






「ジョーは元々すげぇ格下だったんだけどな。テリトリー……なわけはない筈だが……何でかは分からねえ。でもこれだけは言える」




「何だ?」






一呼吸おいてジャンが呟く。






「奴は危険だ!」






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---------ここは妖精村、アガナの死の森






「サキさん!サキさんはどうなったんですか!?ベルデさん!!」




「そうですよ、どうなったんですか!?






とベルデにつっかかるのは、落とし穴に入った清教の2人。






「……うむ……。喋りかけているが反応せん。何かしらに集中しているんじゃろ」




「……そうですか……」




「死んでたり……しませんよね?」






ラムソスの言に一瞬2人はギョッとしたが、すぐにベルデが






「そ、そんなことないわい!死んだら直感で分かるんじゃ!」




「直感……ですか……」






2人は信じられないという顔をした。


それにいい顔をしないベルデ。当然だ。






「……何じゃ2人して。これでもわしはかのレオナ1世に仕えた身じゃぞ。そのワシを認めぬとでも?」






その言に2人は驚いた。






「レオナ1世!?本当ですか!!!!」






と2人は詰め寄る。






「本当じゃ」






とベルデは得意げに応える。






レオナ1世とは、古代の神話時代のウィルニア王国で初めての女性国王となった人物であり、


現代では清教の武神に祭り上げられている女帝だ。


王であるにも関わらず剣を取り敵と戦ったという。


そんなレオナ1世に仕えていたという。






「仕えていたって……今一体おいくつなんですか?失礼ながら……」






とザムザ。それにベルデが答える。






「80のババァじゃが?」




「80って!ウィルニアのレオナ1世はもう千年も前の人ですよ!?」




「そうですよそうですよ!」






2人はベルデを問い詰めた。






「転生……という言葉は知ってるかの?」




「え、あ……はい、一応は」




「ワシは現代に蘇ったんじゃよ。


 証拠を見せてやりたい……が、先ずはファヤウじゃ」




「!そうですね……」

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